性的少数者のカップルに対し、第三者が提供した精子を人工授精するなどの生殖補助医療が、少なくとも全国の4施設で実施されていたことが、岡山大の研究チームの調査でわかった。性的少数者のカップルの生殖補助医療は関係学会で想定されておらず、研究チームは「安全性が不十分な精子バンクの利用など、水面下で不適切な生殖医療が広がっている恐れがある」と指摘する。

 レズビアンやゲイらの性的少数者のカップルが出産によって子をもうけるには、第三者の精子で人工授精させたり、卵巣や精巣を摘出する性別適合手術の前に卵子や精子を凍結したりする生殖補助医療が必要になる。

 だが、日本産科婦人科学会(日産婦)の見解は、提供精子による人工授精の対象は「法的に婚姻している夫婦」としている。日本生殖医学会の指針も、がん治療で生殖機能に影響が出る恐れがある場合などとしているが、いずれもレズビアンのカップルなどは想定していなかった。

 そこで、研究チームは、全国的な実態を調べることにした。日産婦に登録された病院やクリニックなど全国の1131施設を調査し、492施設から文書で回答を得た。

 その結果、レズビアンカップルのどちらかの女性への人工授精が2施設、性別適合手術を受けた人の精子の凍結保存が3施設であった。双方を実施したのが1施設だった。実際に妊娠、出産したかは確認していない。

 調査した岡山大の中塚幹也教授(産婦人科)は「今回明らかになったのは、学会に登録した施設だけで、氷山の一角」と話す。もともと性的少数者のカップルを想定していない学会登録施設では生殖医療が受けにくく、安全性が懸念される精子バンクなどを利用している恐れがあると指摘。「欧米の学会は、性的少数者カップルへの生殖医療提供を制限すべきではないとの声明を出しており、日本でも議論を進めるべきだ」といっている。(小川裕介)