日本や米国など自国通貨建てで国債を発行できる国は財政破綻(はたん)しないので、もっと財政を拡張し、所得や雇用を増やすべきだ。インフレもコントロールできる――そんな主張の経済理論「MMT」(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論、現代金融理論)。経済学の主流派からは異端視される理論だが、中央銀行の金融緩和でも景気回復の実感がなく格差が広がる中、各国で関心が集まる。最近は退任した欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁が「MMTに注目すべきだ」と発言した。なぜ今MMTなのか。このほど来日した、MMTの「名付け親」とされる豪ニューカッスル大のビル・ミッチェル教授に聞いた。

■なぜ医療や教育にお金を使えないのか

 ――なぜ今、MMTが注目されていると考えていますか。

 「主流派経済学者が唱える経済政策が行き詰まり、課題への答えを提示できていないからでしょう。多くの国で実質賃金が下がり、賃金の上昇率も横ばいです。非正規雇用が増え、若い人たちは将来不安を抱えています。現代の社会システムが気候変動にも危害を及ぼしていることにも、みなが気づき始めています」