政府は8日の経済財政諮問会議(議長=安倍晋三首相)で、今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案を公表した。新型コロナウイルスの感染拡大で遅れが浮き彫りになったデジタル化を進めるための集中投資を掲げた。一方、コロナ対策で大きく悪化した国の財政状況をどう立て直すかという議論はなく、財政再建目標は明記されなかった。

 原案では、新型コロナ対策を踏まえた新しい生活様式のために行政や社会のデジタル化を進める中長期的な施策と、感染対策を中心にした短期的な施策の2段階で方針をまとめた。今月中旬にも閣議決定する。

 デジタル化では、行政分野が特に遅れているとして今後1年を集中改革期間に設定。行政手続きの「書面・押印・対面」の慣行の見直しや、各省庁ごとのオンライン利用率の目標引き上げを掲げた。マイナンバー制度を電子政府の基盤と位置づけ、預貯金口座とのひもづけの検討を進め、今年中に結論を得るとした。また、コロナ対応で特例的に初診から受診できるオンライン診療についても、「診察から薬剤受け取りまで完結する仕組みの構築」へ向けて検証を進めるとした。

 ただ、デジタル化は過去の骨太方針でも取り上げられたが、なかなか進まなかった。新型コロナ対策の給付金事業でもオンライン申請では混乱が相次ぎ、政府と民間の電子契約もほとんど活用されていない。オンライン診療の恒久化も厚生労働省や日本医師会は慎重な姿勢を示している。政府の本気度が問われる。

 足元の短期的な対策では、PCR検査センターの増設や唾液(だえき)を用いた検査の推進をあげる。国際的な往来の再開をにらんで検疫の検査体制を大幅に増強するほか、ワクチンの国内での生産体制を早期に整備するとした。

 一方、雇用対策として新卒採用について、様々な通信手段を活用した面接や通年採用などの柔軟な対応を経済界に求めるとともに、「自衛隊員の新規採用を積極的に行う」とした。内閣府の担当者は「現時点で積極的な採用に意欲を示したのが防衛省だった。これから他の組織でも話があるかもしれない」と説明した。(永田大、姫野直行)

■財政立て直しの議論は先送り

 コロナ対策のための2度の巨額補正予算で国の財政状況は急激に悪化し、従来の財政再建目標の実現が危ぶまれる状況になっているが、財政の立て直しに向けた議論は先送りされた。