山梨県の甲府地区消防本部南消防署管内の消防署員5人が新型コロナウイルスに感染し、クラスター(感染者集団)が発生してから3週間近くが過ぎた。新たな感染者は確認されていないが、感染経路は分からないままだ。社会生活の維持に必要な仕事に就く「エッセンシャルワーカー」へのPCR検査を求める声も上がっている。

 南消防署では7月22日、20代の署員の感染が判明。発症前後に勤務しており、濃厚接触者の同僚3人と知人1人の感染も明らかになった。24日には濃厚接触者ではないものの30代の同僚の感染も分かった。

 感染は、署員の間でなぜ広がったのか。

 署員5人は消防や救急の仕事にあたっていた。救急搬送では防護具を着用するため、搬送患者から感染する可能性は低く、食事や仮眠を共にしていたこととの関連が指摘されている。

 南消防署によれば、署員らは昼食を自分の机で食べていたが、対面や隣席に人がいる場合、アクリル製の仕切りを設けていた。仮眠室は、小さな場所でも12~13畳で、1人3~4畳分を利用。ベッドの間隔も空けていた。

 ただ、換気扇を回していたかは未確認で、今後はドアの開放や扇風機などの利用も検討する。

 芦沢岳副署長は「換気が不十分だったかもしれないが、通常はマスクを着用して勤務しており、飛沫(ひまつ)対策などはしっかりやってきた。ここまでやって防げないのは恐ろしい」と話す。

 署員の感染が判明した直後、市保健所では全署員117人の聞き取り調査をした。濃厚接触者とは別に、体調不良を訴えた署員のPCR検査もした。

 しかし、無症状の署員は検査をせず、そのまま勤務を続けた。この対応については、関係者から疑問の声もあがる。

 県内の消防署で働く救急隊員は「無症状でも感染している場合があり、不安な署員もいたはず。クラスターが発生したなら、安心して働くためにも全員のPCR検査をしてほしかった」と訴える。

 実際、救急隊員の感染が7月に判明した兵庫県姫路市では、隊員が勤める消防署の70人全員のPCR検査をした。広報課は「市民に安心して119番をしてもらうため、市長が判断した」と話す。

 甲府市保健所の担当者は「病院や高齢者施設なら自分で症状を訴えられない人もいるので検査するが、今回はそこまで感染が広がらないだろうと判断した。やれないことはないが、100人を検査するのは大変」と説明する。

 一方、日本医師会COVID―19有識者会議でPCR検査の利用推進の提言をまとめた宮地勇人・東海大学医学部教授(臨床検査学)は「症状のない人に行政検査は必要ないというのが国の強い方針。しかし、これでは感染拡大は止められない」と指摘する。

 「消防や警察など公共性の高い仕事に就くエッセンシャルワーカーについては、全員に定期的に検査をしていくべきだ」との考えを示している。(永沼仁)