菅義偉首相の著書「政治家の覚悟」(文芸春秋)が20日に発売される。野党議員時代の2012年に刊行した単行本を改訂した新書で、全244ページ。官房長官時代のインタビューが追加収録される一方、「公文書の管理の重要性」を訴える記述があった章は削除された。

 12年の単行本「政治家の覚悟 官僚を動かせ」は首相の就任後、ネット上で高額で取引されていた。

 今回の改訂版で削除されたのは、旧民主党の政権運営などを批判した章。この中で、東日本大震災後の民主党政権の議事録の保存状態を問題視し、「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」と公文書管理の重要性を訴えていた。

 首相は官房長官だった17年の記者会見で、加計学園問題に関する議事録公開に関連し、記者がこの部分を読み上げて「これを本に記した政治家は誰かわかるか」と尋ねたのに対し、「知らない」と答えていた。

 文芸春秋の関係者は改訂について「民主党批判よりも直近のインタビューの方が読者ニーズにかなう」と話している。(井上昇)

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 文春新書編集部は朝日新聞の取材に対し、「当該箇所のみが意図的に削除されたかのような報道も散見されるが、そうした意図は全くない」などと回答した。コメントの概要は以下の通り。

 本書は、2012年3月に刊行された単行本「政治家の覚悟 官僚を動かせ」をもとに、菅氏の官房長官時代のインタビューなどを加えて新たに編集したものであり、特定の文言の削除を意図したものではありません。

 新たに新書版を編集する過程で、菅氏が官房長官に就任して以降の発言を加えたいと考え、月刊「文芸春秋」で行ったインタビュー記事4本を再録することにいたしました。その部分が、新書版の「第二部 官房長官時代のインタビュー」(計56ページ分)にあたります。一方で、単行本「政治家の覚悟 官僚を動かせ」の「第三章 政治主導をはき違えた民主党政権」と「第四章 東日本大震災で露呈した政府の機能不全」(計34ページ分)については、本の総ページ数など全体のバランスを考えた上で、編集部の判断で割愛することにしました。

 当該箇所のみが意図的に削除されたかのような報道も散見されますが、そうした意図は全くなく、編集上の理由によるものです。