平成から令和に元号が変わる直前の昨年4月上旬、高知県いの町の本川手箱(てばこ)きじ生産企業組合で全身が白い雌のキジ(雉)が生まれた。白いキジは過去、吉兆の証しとして改元の契機にもなったとされる珍鳥。名前は今年9月に公募で「手箱姫」に決まった。

 組合は食用に回さず、マスコットとして大事に育てるという。

 標高約600メートルの山間部にある組合のキジ舎。茶色の普通種が集団で放し飼いにされているなか、手箱姫は専用のキジ舎で隔離されるように生活していた。生後約1年半で体重約1キロと生育は順調。本川地区がキジの養殖を始めて約40年経つが、白いキジは初めて。

 世話をする理事の川村英一さん(49)によると、普通のキジのひなは茶色っぽいしま模様があるが、手箱姫は鶏のひよこのような全身真っ白だった。「見た感じ、え?何でと」。普通のキジは4月に生まれると約7カ月飼育されて年末には食肉にされる。手箱姫は希少さから難を逃れた。

 白いキジは良い兆しとされる。「広辞苑」などによると、初の元号の「大化」(645~650)から、次の「白雉(はくち)」(650~654)に改められたのは、長門(今の山口県)の国司から白いキジが朝廷に献上された吉兆がきっかけだったとされる。

 組合は8月に名前を公募し、全国から約370件の応募があった。最終的に決まった手箱姫という名前には「手箱山で育ったお姫様を大切に育ててほしい」との思いが込められているという。組合によると、本川地区から近い手箱山(標高1806メートル)は江戸時代、土佐藩から狩りや樹木伐採を厳しく禁じられた特別な山だったという。

 組合によると、キジ肉は高タンパクで低カロリーが特徴。味をまろやかにするため配合飼料の他に県産の野菜や果物なども与えて飼育している。寒さとともにキジ鍋のシーズンに入るが、組合は手箱姫だけは愛称「ひめちゃん」と呼んで育てる方針だ。

 新型コロナウイルスの影響で販路が減り、組合の今年の飼育数は例年の半分以下の約1500羽にとどまる。山本周児理事長は「県内でもキジ肉を知らない人がまだ多い。ひめちゃんの希少さに興味を引かれ、キジ肉のおいしさを知ってほしい」と話す。(清野貴幸)