「人をモノ扱いするのは許せない」。いすゞ自動車で約23年間、トラックのエンジン設計の業務に携わった派遣労働者の男性(50)=神奈川県大和市在住=は憤る。納得のいかない理由で派遣切りに遭い、技術者としての誇りを傷つけられた。男性は労働組合に入り、職場復帰を求めている。5月1日は「メーデー」。

 男性は就職氷河期の1995年、工業系大学の機械工学科を卒業し、機械メーカーに就職した。だが、やりたかった設計の仕事ができず、2年で辞め、派遣会社の社員となった。すぐにいすゞ自動車への派遣が決まった。以後22年9カ月のほとんどを藤沢工場(同県藤沢市)で過ごし、エンジンの設計業務に当たった。

 半年や1年更新だった派遣契約は、リーマン・ショック後の2009年から3カ月更新となった。景気次第でいつ解約されるかわからない。正社員として引き抜かれたかったが、波風を立てないよう黙っていた。

 年を重ねるごとに月収も増え、手取りで30万円を超えた。妻と小学生の娘1人を養い、35歳のときに新築で買った一戸建て住宅のローンを月11万円払ってもやり繰りできていた。

■同僚に別れのあいさつもできず

 ところが、契約更新のひと月前の19年11月末、派遣元との面談で突然、解約を告げられた。

 いすゞの意向だという。男性の業務量が不十分で、周りとの意思伝達もとれていないことを理由に挙げられた。

 納得いかなかったが、思い当たる節はあった。18年4月に代わったいすゞのグループリーダーと折り合いが悪かった。男性は派遣元に不当だと訴えたが、聞き入れてもらえず、12月初めから待機扱いとなった。工場の入構証を回収され、職場の仲間やお世話になった人に別れのあいさつができなかった。工場内のロッカーや机の私物は、派遣元が自宅に届けてきた。

 「まるで懲戒免職されたかのよう。従業員の人格を尊重せず、きちんと話も聞かず、モノのように切り捨てるなんて」

 男性は、個人で加入できる労働組合「神奈川シティユニオン」に入り、いすゞや派遣元と交渉している。昨年6月には神奈川県労働委員会に不当労働行為救済の申し立てをし、いすゞなどに団体交渉に誠実に応じるように求めた。今も審査が続く。

 自宅待機も続いている。派遣元からは現在、月10万円支給されているが、貯金を取り崩さざるをえない。住宅ローンはあと10年以上残る。守る家族がいる。焦りを覚える。

 いすゞには技術者として育ててもらった恩がある。こじれたとは言え、愛着がある。男性は「戻れるものならば同じ職場に戻り、能力を発揮させてほしい」と話す。これに対し、いすゞは取材に「県労働委員会で係争中なので、コメントは差し控える」と答えた。