新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからないインドネシアで9日、政府が外国人に対する出国制限を緩和した。主に中国製のワクチン接種が国際線の搭乗に義務付けられ、在留邦人の中で不安が広がっていた。日本人の感染者数は増え続け、いまも60人以上が入院を待つ。ワクチン接種などを目的に帰国を急ぐ動きも活発になっている。

 インドネシア政府は6日から、出国のため国際線に搭乗する外国人にワクチン接種を義務づけた。6月以降、新型コロナの感染が急拡大。インドで見つかった感染力の強い変異株(デルタ株)の広がりなどで、1日の新規感染者数は約5千人から、7月には約3万人台に増えており、新型コロナ対策の一環だった。

 だが、これに困ったのが外国人だ。インドネシアでは接種の中心が中国製のシノバックやシノファーム。日本など承認していない国も多く、1回接種して帰国しても2回目を受けられない。日本では2回目に別のワクチンを打つことも難しく、敬遠する人が多い。

 ジャワ島中部のジョクジャカルタのガジャマダ大学院生の藤本迅さん(35)は日本で就職先が決まり、7月下旬の帰国を予定していた。「帰国の道を断たれることがこんなに怖いことだと思わなかった」と振り返る。「副反応のことも考えると、ワクチン接種は命に関わること。接種の強制は、冗談じゃないという気持ちが強かった」と憤る。

 これを受け、日本や米国、豪州、シンガポールなどが共同で規制緩和を働きかけた。現在は、外国人が接種なしでも国内の大半の交通手段で移動し、国際線に搭乗することが可能だ。

 インドネシアの感染者数は7月9日には約3万8千人と過去最高を更新。日本大使館が把握する10日時点の日本人の感染者数も約310人、死者数は12人と、1週間前に比べて、それぞれ約40人、4人増えた。医療機関の紹介などをする「ウェルビーホールディングス」によると、入院待ちも64人と増加傾向が続く。日系団体ジャカルタ・ジャパン・クラブの小倉政則事務局長は「政府の規制によって、駐在員の帰国を進める日系企業にも混乱が生じていた。緩和によって、国外退避の道がきちんと確保されたことは大きい」。

 東ジャワ州に暮らす30代の日本人駐在員の男性は「中国製ワクチンは効力に不安があり、打つことに抵抗がある。外国人にも接種を強制する政府の姿勢が怖かった」と話す。規制緩和を受け、8月1日に日本政府が始める、在外邦人を対象とした新型コロナワクチンの無料接種を受けたいという。

 藤本さんも「日本で認証されたワクチンを接種できるという選択肢を得られたことは、本当にありがたい。日本政府の働きかけに感謝している」と話す。(半田尚子)