駅に空港に街角に……。公共空間にさりげなく置かれ、通りすがりの人が自由に弾けるピアノ。テレビに取り上げられるなどして、今やありふれた光景となったが、富山駅など富山市内の3カ所に置かれたそれらは、そのインパクトの強さから、行き交う人々の視線を釘付けにしてやまない。

 富山駅構内を貫く南北自由通路内。路面電車の駅のすぐそばに置かれたグランドピアノは、ボディーの全面を使い、色彩豊かに鮮やかな抽象画が描かれている。路面電車の車内からも眺められ、そのインパクトある見た目と相まってSNSの映えスポットになっている。

 装飾を施したのは、富山大学芸術文化学部卒業生で同市在住の画家・池田愛花里さん(24)。テーマは「ひまわりの種の夢」で、初めてピアノに描いたという。「駅はみんなの出発点になる場所。ひまわりの種が、やがて成長する自身の未来の姿を夢見ている様子を描いた」

 ピアノは、富山市が「ストリートピアノ プロジェクト」と称し設置。コロナ禍にあっても、少しでも音楽を身近に感じられるようにとの狙いだ。ほかにオーバード・ホール(同市牛島町)と、ウエストプラザ(同市総曲輪3丁目)にも配置。3台とも、閉館した児童館や休園している幼稚園にあったもので、その全てに池田さんが色鮮やかにペイントした。行き交う人の耳だけでなく、目でも楽しめる。

 「コンサートが行われるオーバード・ホールは、文化の成長を『水中から枝を伸ばす木々』で表現した。9月中旬から描いたウエストプラザは映画館があり、お買い物も楽しむ場所なので、藤の花をモチーフに種がはじける様子から新しいものが世界に広がるイメージに仕上げた」

 公共空間に設置されたピアノの存在は、NHKが番組「駅ピアノ・空港ピアノ・街角ピアノ」で取り上げるなどして、広く知られるようになった。市の担当者によると、富山のピアノについても、民放から定点カメラを設置したいと提案があったという。

 肝心の演奏だが、実は、8月11日に設置された3台は、そのわずか6日後に、新型コロナの感染拡大で演奏中止になった。ただ、全国的に感染状況が落ち着き、富山県独自の警戒レベルもステージ3からステージ2に移行した先月27日以降、再び解禁された。(朝倉義統)