山形県長井市のランドマークになっている多目的施設「TAS(タス)ビル」の再整備事業が本格的に始まった。まずは1~3階を改修して、レンタルオフィスや「eスポーツ」のスタジオなどを新たに設け、幅広い年代層にアピールする。

 タスビルは最上川沿いにある9階建てで、財団法人置賜地域地場産業振興センターや長井商工会議所などが1987年に建設。同会議所が入っているほか、都市型ホテル「タスパークホテル」として、市内を一望できる展望レストランやコンベンションホール、温水プールなどを備える。

 今月4日に安全祈願祭があり、発注者の置賜地域地場産業振興センター理事長でもある内谷重治・長井市長は「山形県を代表する産業振興、観光交流の拠点となるようにしたい」と話した。

 新たにつくるレンタルオフィスはテレワーク機能を備える。ホテルに宿泊しながら、市内の観光もできる「ワーケーション」に対応する。来訪者と市民が交流できるBOOKラウンジも設けるほか、eスポーツスタジオの設置による新たな産業の創出を期待している。工事は今年度中に終える予定という。

 当初からタスパークホテルを運営していた団体が経営難で撤退し、2001年度からは同会議所が運営を事実上担っている。ただ、07年に約4億8千万円あった売り上げは近年3億1千万円程度に落ち込む。特に昨年度からコロナ禍の影響もあり、累積赤字が膨らんでいるという。

 そこで、市と同会議所などは19年に「タスビル再生委員会」を設置。新たな産業の創出、地場産業との協業を進めるため機能向上を図ることにした。1~3階の改修のほか、6~8階の客室改装なども計画している。

 事業費約9億7千万円で国の地方創生拠点整備交付金を申請し、うち1~3階の改修費約4億8千万円が認められ、半額の約2億4千万円が交付される見込みだ。客室の改修事業などについては改めて申請する。

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 タスパークホテルの立て直し役を任されたのは、ホテル日航成田(千葉県成田市)で総支配人を務めた辻田耕一さん(65)だ。ホテルの事実上の総支配人として、培った知識や経験を生かしてもらう。

 辻田さんは今年1月にホテル日航成田を退職。ホテルでの勤務経験は40年を超す。タスビルの再整備事業に協力する三菱総合研究所から紹介され、長井市が地域おこし協力隊員として雇用し、「地域活性化マネージャー」を委嘱した。

 辻田さんはホテルに住み込みながら、8月から業務を開始。現在、50%程度にとどまる客室の稼働率を85%程度にまで上げるのが目標だ。来年度以降には客室の改装も予定されており、「伸びしろはある」と言う。

 「これまで地元の従業員が培ってきたものと、自分の持っているノウハウを融合させ、活性化させたい」と話す。(石井力)