稲刈り後の田んぼで感謝祭 大田原市
小野智美
2021年11月10日10時30分
無事に収穫を終えられたのも、支えられてこそ。そんな思いをこめて、栃木県大田原市花園の米農家の西岡智子さん(46)が今秋、稲刈り後の田んぼで「momo farm 感謝祭」を開いた。近隣から集った約50人の参加者は、そよ風と土の香りに包まれて食事をし、音楽を聴き、全身で満喫した。
会場は、広々とした田園地帯にある約30アールの田んぼ。西岡さんが、県産ブランド米「とちぎの星」を育ててきた。刈り取り後のやわらかな土を、靴底に心地よく感じる。
感謝祭は初めての試みで、まずは友人と知人だけを招き、農家仲間が盛り上げた。那珂川町で有機農業に取り組む小鮒(こぶな)千文さんは、西岡さんの新米で、おかゆを用意。昆布、シイタケ、サバ、カツオで出汁(だし)をとって、くず粉のあんを作り、おかゆにかけた。加えて、素揚げした玄米をまぶしたところ、ポップコーンのような香ばしさが好評だった。
同町のイチゴ農家の小林千歩さん(34)は、四角豆(シカクマメ)のナムルと食用菊の酢の物を持参し、3人の子も連れて来た。小学3年生の長女・穂花さんは「おいしかった」と喜んでいた。
田んぼの真ん中を黄金色の稲穂で囲んでステージにして、音楽会も開催。西岡さんの田植えも稲刈りも手伝ってきた先輩農家の大島強さん(77)は、ハーモニカ演奏を披露した。
さらに、小鮒さんを通じて親しくなったという大田原市出身で茨城県在住のシンガー・ソングライター、うたうたいりりぃさんを招き、キーボードやギターで弾き語りをしてもらった。拍手に応えたアンコール曲は、新型コロナウイルス禍の日々の中で作詞・作曲したという「めざめの唄」。「めざめよう。本当の私に」と語りかける歌声に、みんなが聴き入った。
音楽や食事の合間に、手作業の脱穀や、もみすりの体験もあった。子ども向けの自然体験教室を開いている宇都宮市の西谷麻紀子さん(53)が、道具を持参して指導した。
那須烏山市から母親と来た中学3年生の岸祐行さんは「楽しいっすねー」と満面の笑み。もみをすりばちに入れて、すりこぎの代わりに野球のボールですり、最後にすりばちを少し傾けて、ふーっと息をかけ、もみ殻を吹き飛ばした。自宅では、バケツで稲を育てているという。
「ありがとう」などと言葉を交わしながら、感謝祭は終わった。西岡さんは「来年は一般公開して開催したいです」と話した。(小野智美)