SNSを使って相手を誹謗(ひぼう)中傷する匿名の投稿をめぐり、被害を訴えて声を上げる動きが、日本で強まっている。米ツイッター社が1月下旬に発表した透明性に関する最新の報告書によると、政府機関などから寄せられた削除要求のほか、民間からの情報開示請求でも日本が圧倒的に世界最多だった。日本では近年、被害回復を求めて発信者情報の開示を求めるケースが相次いでおり、そうした動きを反映したと言えそうだ。

 報告書によると、2021年上半期(1~6月)に政府機関などから寄せられた削除要求は世界で4万3387件で、うち日本が1万8518件と4割強を占めて世界最多となった。さらに、政府機関以外から寄せられたアカウントの情報開示請求は世界で460件で、うち日本が241件と5割強を占めている。「政府機関以外からの情報開示請求」が何を指すかは国や地域によって異なるが、日本の場合、匿名の誹謗中傷を書き込まれたと感じた一般の「被害者」が、損害賠償を求めるために発信者情報の開示を求めるケースなどが含まれる。

 ツイッター発祥の地でもあり、利用者数でも世界首位の米国は、政府機関以外からの情報開示請求の件数では72件と、世界的には16%にとどまった。順位では、ブラジルに次ぐ3位。ツイッターの利用者数で世界2位ながら最多だった日本との違いが際立つ格好となった。

 実は、20年通年でみても日本は2年連続で世界最多。世界全体の民間からの開示請求は20年で世界14カ国880件と、前年比で約1.9倍に増えており、うち日本が41%の364件を占めた。日本の増加ぶりも大きく、前年比で約2倍となっている。

 18年までは、ツイッター利用者数で世界首位の米国が最多だった。これを、日本が19年に抜いた。

 背景は一概には言えないが、とりわけ民間からの請求急増の一因として関係者が指摘するのが、20年に日本社会に大きな衝撃を与えた事件だ。ツイッターで誹謗中傷を受けたプロレスラーの木村花さんが亡くなり、被害をうやむやにしてはならないという問題意識がネット利用者の間で高まった。同時に、SNS運営企業への情報開示をより求めやすくすべきだとしてプロバイダ責任制限法の改正も進み、それに基づく法的手続きに取り組む一般の人たちも増えた。

 プロ責法改正の方向性をまとめた総務省の有識者会議「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の座長を務めた京都大学法科大学院の曽我部真裕教授(憲法・情報法)は「コロナ禍で世の中が荒れている中、日本でもネットを使う時間が増えたと言われる。著名な人も発信者情報開示請求をする例が増える中、制度が周知されたというのもあるかもしれない。今後は開示請求だけでなく、他の救済手段ももっと充実させていくことが求められる。削除の促進や誹謗中傷の書き込みや拡散を減らすための取り組みなどがもっと必要だ。民間とはいえ巨大化して誰もが使うサービスになると、それなりの社会的責任は出てくる。ツイッター社など、誹謗中傷問題が起きている主要なプラットフォーム企業ツイッター社には、しかるべき社会的責任がある」と指摘する。(藤えりか