霞が関の主な中央省庁の2022年度の残業代予算が、初めて400億円を超えた。前年度と比べて約18%と異例の大幅増で、昨夏に各省庁が出した概算要求額385億円を上回る「増額査定」となった。

 22日に衆院を通過した22年度一般会計当初予算案に計上された「超過勤務手当」(残業代)を朝日新聞が集計した。全11省と内閣府、内閣官房が、外局や出先機関などを除く本省分として計上した予算の総額は約403億円で、前年度(補正予算を含む)より17.5%増えた。補正を除いた当初予算ベースでの伸び率は23.8%で、1~3%程度の伸びが続いた過去5年と比べても異例の幅だ。

 予算編成では、財務省が厳しく査定して要求額を減らすことが一般的だが、この残業代は集計した13の役所のうち八つで要求額を上回る予算が認められていた。「財務省からは残業代を100%支払える金額にしろと言われた」(ある省庁の担当者)という。

■民間との待遇差、若者の「官僚離れ」に

 前年度と比べてもっとも増えたのは、新型コロナへの対応で長時間労働に拍車がかかった厚生労働省で、38.9%増の55.3億円。国土交通省の32.7%増の51.3億円が続き、内閣府と内閣官房は3割弱、環境と文部科学の両省も2割台の増額となった。

 菅前政権が昨年3月に決めた「人事管理運営方針」では、各省庁に職員の勤務時間の把握を求め、21年度の枠で足りない残業代は22年度に含めて要求するよう指示。これが大幅な予算増につながった。

 残業時間規制を厳しくする法改正もあり、民間企業では働き方改革が大きく進んでいる。国家公務員には労働基準法が適用されず、これまでは官僚側にも残業代は一定以上は出ないという暗黙の了解があったとはいえ、民間との待遇差が若い層を中心に「官僚離れ」につながっているという危機意識が背景にある。

 霞が関では、国会の会期中や予算の編成時期などを中心に、深夜まで職員が残って業務をこなすことが珍しくない。特に、国会議員からの質問通告などに備えた長時間の待機や深夜の大臣答弁の作成、閣議決定が必要な質問主意書への対応など政治が絡む業務の負担が大きい。こうした働き方に疑問を持つ若手官僚の離職も増えている。

 財務省のある官僚は「国のために働くという『誇り』だけでは若い人たちをつなぎとめられない。今の労働条件を改善し、官僚の満足度を上げる取り組みが必要だ」と話す。(榊原謙)

■主な中央省庁の22年度残業代予算額

内閣官房   14.8億円(29.3)

内閣府    12.4億円(29.6)

総務省    24.3億円(16.1)

法務省     8.5億円(16.2)

外務省    30.8億円(8.7)

財務省    25.1億円(1.8)

文部科学省  17.0億円(22.1)

厚生労働省  55.3億円(38.9)

農林水産省  35.0億円(▼0.8)

経済産業省  28.0億円(17.4)

国土交通省  51.3億円(32.7)

環境省    10.6億円(24.4)

防衛省    89.7億円(11.6)

合計    402.8億円(17.5)

*金額は本省分。かっこ内は21年度予算(補正含む)からの伸び率(%)。▼はマイナス