ロシアのプーチン大統領が戦略核の運用部隊に対し、「特別態勢」に入るよう指示した。ウクライナが核の脅威にさらされるなか、注目を集めるのが中国の対応だ。背景には、習近平(シー・チンピン)国家主席がウクライナと約8年前に交わした、核の脅威に関する「約束」がある。

 ウクライナと核については、少し複雑な歴史がある。

 ウクライナは1990年代前半、米ロに次ぐ世界3位の核保有国だった時期があった。1991年にソビエト連邦が崩壊し、独立したウクライナ国内には当時、1240発の核弾頭と176発の大陸間弾道ミサイル(ICBM)があったとされる。

 残された核をどう扱うか。問題解決へまず動いたのは米国だった。

 1992年、ソ連時代の核を保有していたロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンとリスボンで協議。ロシア以外の3カ国が核弾頭を国外に移し、非核保有国となる議定書に署名した。その後、ウクライナでは安全保障の不安などから非核化を進めることへの異論も一部から出たが、米国は1994年、見返りとなる財政支援を打ち出すことで非核化を受け入れさせた。

 この流れに沿って、中国も動いた。中国は1994年12月、「ウクライナへの安全保証の提供に関する声明」を発表。その内容は、中国は核不拡散条約(NPT)が認める核保有国として、無条件に核兵器の使用や核の脅威を与える動きをしないことや、他の核保有国にも同様の保証をウクライナに与えるよう呼びかけることだった。つまり、「中国はウクライナをあらゆる核の脅威から守る」という宣言だ。

 2012年に中国共産党総書記に就任し、国を率いる立場になった習氏も、この声明を引き継いでいる。