「広島・長崎への原爆投下は戦争犯罪にあたる可能性がある」。戦後間もない1945年10月、当時のローマ教皇ピウス12世(在位1939~58年)が、後に米国大統領になるアイゼンハワー欧州戦線最高司令官にそう伝えていたと、バチカンが最近公開した文書でわかった。核兵器禁止条約(核禁条約)を推進するバチカンの姿勢の源流ともいえそうだ。

 松本佐保・日本大教授(国際政治史)が、ピウス12世ファイルと呼ばれるこれまで非公開だった文書で確認し、長崎市で10日に開かれたシンポジウム「バチカンに眠る日本の記憶」で発表した。

 原爆投下についてピウス12世は、人類の最大の悲劇という内容の発言をしており、バチカンはそれ以来、核問題に関して国際社会に対して深く関与してきたことは知られている。だが、教皇が「戦争犯罪」という強い言葉を使って米側に苦言を呈していたことが今回、明らかになった。

■日本での信徒拡大狙う?

 松本教授が確認した文書によれば、ピウス12世は謁見(えっけん)したアイゼンハワー氏らに対して、米軍を主軸とした連合国軍による日本占領政策について、かつての敵であった日本に対する慈悲を説き、米国と日本のより良い関係を築くことによって平和を構築すること、特に日本の市民への配慮を求めたという。

 松本教授は「日本国民がキリスト教国へのうらみを募らせることのないよう、米国の日本占領政策に配慮を求めるとともに、日本での信徒拡大への思惑もあったのではないか」とみる。