親愛なるマルコ・ポーロさま。

 あなたは13世紀、イタリアから海図なき航海に出て、欧州とアジアを結びつけました。そのチャレンジは、コロンブスなどが活躍する大航海時代の羅針盤となったのは言うまでもありません。

 あなたの証言をもとにつむがれた旅行記「東方見聞録」で、黄金の国ジパングとして紹介された国があります。覚えていらっしゃるでしょう、日本です。

 その日本には大阪いう場所があり、兄さんの名をつこうた会社があるんや。

 「マルコ・ポーロ合同会社」

 この会社の代表は、あなたを尊敬しています。そして、「自分はベンチャーの羅針盤になる」と決意しています。

 その人の名は、黒坂卓司さん、ただいま47歳。あの空の上で、彼の物語を聞いてください。

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 黒坂は、東京生まれだが、好きなチームは阪神タイガース。あこがれたのは、小林繁さん。「空白の一日」で巨人から阪神にトレードされ、巨人に立ち向かったサイドスローの大投手だ。

 黒坂少年は野球にのめりこみ、野球が強い横浜の中高一貫の私立中学に入った。レベルが高すぎて野球を断念。中学では、それなりにまじめに過ごしていたが、高校生になって目的を見失った。

 〈ボクは何者なんだ?〉

 何かにチャレンジするわけでもなく、ある私大の経済学部に入った。自分の情けなさに、黒坂は決意した。

 〈力がないので勉強しよう。チャレンジするんだ〉