内戦下での大地震、人々にどう影響? シリア専門家が危惧すること
聞き手・植松佳香
2023年2月7日22時00分
トルコとシリアを襲った大規模な地震は深刻な被害をもたらし、両国の犠牲者は5千人を超えました。特にシリアは10年以上続く内戦下にあり、生活基盤は脆弱(ぜいじゃく)です。その中で起きた大地震は人々にどんな影響を与え、シリア内戦にはどんなインパクトをもたらすのでしょうか。現代シリア政治が専門の東京外国語大学・青山弘之教授に聞きました。
――今回、被害が大きいのはトルコの南部とシリア北部です。現在、シリアには複数の支配勢力が混在していますが、被害があった地域はどのような場所なのでしょうか?
北部で最も広いのは、シリア政府(アサド政権)による支配地域です。人口が密集する大都市を支配していて高層ビルも多く、今回の地震ではビルの倒壊などで大きな被害が出ています。アレッポやラタキア、ジャブラといった地域で、死者は約700人と発表されています。
アレッポ市にはクルド民族主義勢力が支配する地域も2地区あり、そこでも建物の倒壊で死者が6人、出ています。
反体制派が支配し、トルコが支援する地域は北西部に位置するイドリブです。イドリブには、シリア政府の支配地域から逃れてきた約200万人の国内避難民も暮らしています。同地では、トルコが実効支配するアレッポ県北部と合わせて、約700人が死亡したとの情報がありますが、詳細は不明で、情報を集めているところです。
また、トルコとの国境地帯には、シリア政府の支配地域から逃れてきた数十万もの人々が暮らす避難民キャンプがあります。ただここは農村地帯で、高いビルはなく、テントやトルコが建てた新しい2階建て住居が主なので、大きな被害は出ていないようです。
今回の地震では、古い建物が倒壊した都市部で被害が広がっていると見られます。人的被害のほか、十字軍時代の遺跡など歴史的な遺産にも被害が出ているようです。
■内戦下ゆえの「弊害」とは
――紛争下での震災ということで、特徴的な影響はどのようなものが考えられますか?
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