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昼間のスタバでスイッチオフに 佐藤オオキ(前編)

写真 篠塚ようこ

いまや、300ものプロジェクトを抱えるデザインオフィス「nendo」。トレンドをリードする欧州の家具ブランドから、国内の中小メーカーや地場産業までひっきりなしにデザインの依頼が殺到する。なぜ、これほどまで注目されているのか。多くの人を惹(ひ)きつけ、驚かせるデザインはどうやって生まれるのか。nendo代表の佐藤オオキさん(37)へのインタビューを2回にわたってお送りします。(文・杉江あこ 写真・篠塚ようこ)

    ◇

――普段の仕事のスタイルを教えていただけますか?

平日は朝の10時頃から夜中の3時頃まで仕事してますね。私は仕事をするか、寝るか、そのどちらかしかないんですよ。もっと言えばデザインをするか、休むか。そのオンオフのスイッチしかない。下手すれば、トイレに入っている間も頭の中はずっとデザインのことを考えているので、オンのスイッチが入ったままです。

平日で一番リラックスできるのは、スターバックスコーヒーにいる時。オフィスの近くにある店舗に1日に3~4回は行って、コーヒーを飲むんです。

常連であるだけでなく、じつは、この店のリニューアルも手掛けているんです。小さな店舗なので、サービスカウンターを低めにして、陳列棚を移動させて、空間をより広く見せるようにしています。また来客のほとんどが1人か2人組なので、居心地良く座れるよう個々のテーブルとスツールを新たに開発もしました。

写真 篠塚ようこ

――いまや、300ものプロジェクトを同時に進めているそうですが、創設の経緯を教えてください。

じつは学生時代に会社を二つ、経営したことがあります。私は帰国子女で英語を話せたので、大学1年のときに小さな商社でアルバイトしたのですが、そこが突然、倒産してしまって。中国の外務省を相手に日本の製品を輸出する会社の業務を引き継ぐ形で会社を設立しました。当時、19歳。ベンチャー企業ブームもあって、年間数千万円を売り上げるようになりました。ただ、まもなく会社を畳みました。やはり、建築を学ぶために大学に入ったので、大学を卒業して大学院に進みました。

ところが大学院が始まる直前の春休みに、新規事業を立ち上げたばかりの通信会社から「アルバイトを紹介してほしい」と頼まれ、友人を10人ほど紹介したんです。その評判が良くて、もっと紹介してほしいと言われ、気がつくと400人もの学生アルバイトを登録する人材派遣をするようになっていました。毎日、アルバイトの面接やシフト管理などをしていて、ここでも毎月1千万円を売り上げるまでになりました。結局、大学院へは7日間しか行けないまま修了して。

写真 篠塚ようこ

――元々、経営の才能があったというわけですね。

事業は順調だったのですが、「いやいや、自分がやりたいことは違うだろう」と思い直し、その会社も畳みました。そして2002年春、幹部のみんなでミラノへ卒業旅行に行ったんです。そうしたら、ちょうど家具見本市の「ミラノ・サローネ」が開催中で、名だたる建築家が家具やプロダクトをたくさん発表していました。

日本人デザイナーも華々しく活躍している姿を見て、「デザインってなんて面白いんだろう」と。そこで決意したんです。みんなでデザインオフィスを始めよう、と。いつかサローネに出展できるようにって。そこにいた幹部6人が「nendo」の創設メンバーになりました。

写真 篠塚ようこ

――「nendo」という名前はそのまま“粘土”が由来ですか?

そうです。日本語で、外国人も発音しやすくて、「柔軟な発想で自由にデザインしよう」という意味も込めてつけました。

――創設メンバーは全員がデザイナーというわけではなかったんですよね?

6人のうち4人はデザイナーですが、そのうち2人はまだ大学生。残りの2人はデザイン以外の業務を行う経理と広報を担当しました。みんなでそれぞれの能力を出し合って、ジャンルを問わず、できることをやっていこうというスタンスでしたね。

写真 篠塚ようこ

――学生時代に会社を経営した経験は生きましたか?

ビジネスを本気でやれば、売り上げを上げられる。それが分かったことで、むしろお金に執着しなくなったというのが大きいですね。デザインは楽しいものであって、お金を儲けるものではない、という考えに至りました。デザイナーとしてやっていけるんだろうかという不安もなく、どこか吹っ切れたところがありました。

当初は私の実家の車庫を利用してオフィスにし、手元に残った二つの会社の売上金を資本金に充てました。海外出張費やスタッフへの給料、サンプル制作費などにどんどん注ぎ込んだので、1年で使い切りました。“行き当たりばったり力”というか、どんなことでも徹底してやりたいし、それを面白がってしまう性分なんだと思います。

プレゼンよりオリエンを大切に 佐藤オオキ(後編)

    ◇

佐藤オオキ(さとう・おおき)
1977年、カナダ生まれ。2002年、早稲田大学大学院(理工学研究科建築学専攻)修了。nendoの東京オフィス設立。05年、ミラノオフィス設立。Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」などに選出される。ドイツのiFアワード審査員などを務める。早稲田大学非常勤講師。
http://www.nendo.jp/

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