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花のない花屋
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病気とつきあいながら育ててくれた母に

  

〈依頼人プロフィール〉
大島紀子さん(仮名) 26歳 女性
神奈川県在住
生活支援員(障害者施設勤務)

    ◇

私は子どもの頃、“普通のお母さん”に憧れていました。自分の母は、ちょっと“普通”と違い、時々パニックになって大声で叫んだり、泣き出したり、モノに当たったりしていたのです。

母は3人の子どもを育てながら公務員としてフルタイムで働いていましたが、私が小学校1年生になった頃には、「境界性人格障害」と診断され、私が中学生のときには精神障害者福祉手帳2級を取得しました。

症状を安定させるために服薬しているせいか、母はうつろな目をしていて、授業参観日には“変なお母さん”として友達にからかわれましたが、本当の理由は言えませんでした。入院するとしばらく顔を合わせなくてよいので、学校から帰ってきて母がいないと、後ろめたさを感じつつも、正直少しほっとしていました。

そんな私ですが、大学生になってボランティアを始めたことがきっかけで、今は障害者支援に関わる仕事をしています。日々障害を持つ方と接する中で感じるのは、周囲の人に当たったりパニックを起こしたりしてしまう人は、本人も辛い思いをしているということです。今になって、母は病気で大変な中でも、私たちに精一杯の愛情を注いでくれていたことに気がつきました。

最近では、現場の職員と利用者という立場から、母と私で障害者福祉について話すこともあります。実家を離れて10年。3年前に母と私たちを支えてきた父が亡くなったときは、母の体調を心配しましたが、子どもの前では心配させまいとしているようです。父の代わりとまではいきませんが、今度は私が母を支えていきたいと思っています。

病気と付き合いながらも懸命に子どもたちを育ててくれた母にありがとう、お疲れさまの気持ちを込めて花束を贈りたいです。母と、亡くなった父が好きな色は赤なので、赤を中心とした暖色系でまとめてもらえないでしょうか。

  

花束を作った東信さんのコメント

赤を中心とした暖色系でというご希望だったので、最初は赤以外の色も混ぜようかと思いました。でも、もらい手が複雑なものを抱えているのであれば、まとまりのあるアレンジのほうがいいのではと思い直し、赤一色にしました。

赤い花は、実はそんなにたくさん種類がないのですが、大きなダリアから小さなカルミアまでいろいろな花を集めました。カルミアはアポロチョコみたいなかわいらしい形の花です。他にはジンジャー、カーネーション、ナデシコ、ジニア、バラ、ブバルディアなどを差しました。トップに載せたのはつる性のベルテッセン。動きが加わりアクセントになっています。

一体感を大切にしたかったので、リーフワークは入れていません。花と葉を分けたくなかったのです。その代わり、カルミアやナデシコについている葉を効果的に使いました。
赤は質感や種類、組み合わせによって、色っぽくもかっこよくもなる色。今回はやわらかい赤を感じていただけたら。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

     ◇

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

病気とつきあいながら育ててくれた母に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

facebook

instagram

http://azumamakoto.com/

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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