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花のない花屋
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帰省したその日に亡くなった祖母へ

  

〈依頼人プロフィール〉
小松弘実さん 41歳 女性
デンマーク在住
会社員

    ◇

7月に最愛の祖母が96歳で亡くなりました。祖母は、私にとって常にインスピレーションを与えてくれる、お洒落でユーモア溢れる人でした。

私は10年以上前からデンマークに住んでいるので、頻繁には会えませんでしたが、2年前に祖母が脳溢血で倒れ、半身不随となってからは、半年ごとに帰国してお見舞いに行っていました。途中で回復はあったものの、今年に入ってからは容体が思わしくなく、去年の冬に帰省したときは、「次会うときまでもつかどうか」と言われました。そしてこの夏……。帰省したその日に祖母は亡くなりました。

海外に住んでいると、家族や知人の死に目に会えないとよく言われます。でも、祖母は私を待っていてくれたんだ、と思わずにはいられませんでした。私が病院に駆けつけたときは、すでに集中治療室で横たわり、目を閉じたままでした。それが、私が病室に入った瞬間、ぱっと目が見開いたのです。駆け寄って話しかけると、言葉は発せられないものの、祖母の目から涙があふれ出しました。亡くなったのはその日の夕方でした。

大好きだったおばあちゃん。悲しみと喪失感に襲われましたが、お葬式の席では、この先会うこともなかったであろう遠い親戚や祖母の知人を知ることができ、祖母が引き合わせてくれたご縁に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

「今までどうもありがとう。これからは天国でおじいちゃんと一緒に家族をお守り下さい」。そんな気持ちを込めて、祖母にお花を贈りたいです。

祖母は着物の帯の刺繍をするお針子や、栄養士のようなことをしていました。病に倒れるまでは、毎月美容院に行ってパーマをかけてくるようなお洒落な人で、友達の多い社交的な人でした。祖父が盆栽をしていたこともあり、祖母を思い出すときは、庭にずらりと並んだ盆栽も頭に浮かんできます。

おしゃれで華やかな祖母と、盆栽という組み合わせは難しいかもしれませんが、祖母らしい花束を作ってもらえないでしょうか。

  

花束を作った東信さんのコメント

エピソードを読んでいると、おばあさまはきっとシャキッとしていて、かっこいい女性だったんじゃないかな……という気がしてきて、シックな和のテイストでまとめることにしました。

全体の色合いはパープルからブルーのグラデーションです。パープルはピンクの強い、あたたかみのある色を選んでいます。主な花材はクルクマソウ、バラ、ダリア、カラー、ケイトウ。リーフワークの代わりに差したのが、ブルーとパープル、その両方の複色のリンドウです。複色が入ると、パープルとうまく馴染みますよね。

仕上げにモントブレチアの実を差しました。どこか渋くてモダンなアレンジになりましたが、いかがでしょうか。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

     ◇

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

帰省したその日に亡くなった祖母へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

facebook

instagram

http://azumamakoto.com/

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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