〈14〉乙女のための山服。「and wanderのトップス」
「山ガール」の登場とともに、一気にカラフル化した女性向けの登山ウェア。でも、あまりにポップすぎるカラーリングやデザインに腰が引けてしまう人もいるのではないでしょうか? 派手すぎないけれど、女性らしい。そんな絶妙な案配の登山ウェアは、大人の女性にはうれしい存在です。

同じポリエステル100%で長袖と半袖をラインナップ。ネイビーや黒、白、カーキといった、シックでスタンダードなカラー展開がすてき
いわゆる「山ガール」が登場してはや数年。それまでおじさんたちの聖域だった山に、カラフルなウェアに身を包んだうら若き女子たちがどんどんやってきて、山はとっても華やかになりました。
それに伴い、登山用の服や道具も一気に女性向けのものが増え、「山スカート」なるすごいアイテムまで生まれるほどです。地味地味だった登山ウェアがファッショナブルになるのは大賛成ですが、ひとつ疑問なのは、女性向け登山用品がなぜにこうも派手なのか? ということです(まあゴルフウェアもテニスウェアも同じなのかもしれませんが……)。

裾部分にあるドローコード。これを引っ張ると、好みの案配に裾をくしゅっとできる仕組み
某アウトドアブランドの友人に聞いたところによると、全世代の女子に最もウケるのは「ピンク」だそう。確かに山で見かける女子たちのほとんどは、どこかに必ずピンクをとり入れていたような……。まあとにかくピンクは日本女性のDNAに刻まれているのかと真剣に思ってしまうほどのピンクの洪水が押し寄せているわけです、昨今の山は!
というわけですから、30歳を過ぎた女性登山者(非ピンク礼賛主義者)にとって、シックな登山ウェアを探すことは非常に困難な世の中になってしまいました。身長がある野川さんなどは男性用のSサイズを買ったりしてしのいでいるようですが、私のような身長155cm以下の女子にとっては本当に大問題。わざわざ海外のブランドサイトで通販をしたり、あの手この手で大人っぽいウェアを探しています。

クルーネックのTシャツは首が詰まって幼く見えることが多いけれど、これくらいゆったりしていれば大人っぽく着こなせる
そんななか、モーゼのごとくピンクの洪水のど真ん中に道を切り開いた人がいました。and wanderという気鋭のアウトドアブランドを立ち上げた森美穂子さん。世界的なコレクションブランドのデザイナーとして経験を積んだ彼女の作る登山ウェアは、山で心地よく着られる機能性はもちろん、洗練されたデザインのなかにほんのり女性らしさが香る、絶妙な案配がすばらしい!
とくに、and wanderの定番商品「ドライジャージー」シリーズに出会ってからは、これ以外のトップスは着られなくなってしまったほど。特筆すべきはそのシルエットで、ゆったりした首回りは鎖骨がきれいに見えてとっても女性らしい。裾部分はたっぷりと生地が取られていて、付属のドローコードをきゅっと絞ると、くしゅくしゅとギャザーが寄って、裾がふんわりと立体的なシルエットになる仕掛け。ショートパンツに合わせるときは少しルーズに。ロングパンツに合わせるときは裾を絞ってすっきりと、といった具合に、コーディネートに合わせてスタイリングできるのもとても楽しいのです。
素材は速乾性に優れたポリエステル100%。バックパックのショルダーベルトに干渉しないよう、肩部分の縫い目をなくしてあったりと、登山中のストレスを軽減する工夫もしっかりされています。

ロゴは背中側の肩部分にさりげなく。こういう考え方、すごくいいと思います!
毎シーズン新色が出るので、そのたびに買い足して、オールシーズン着倒しているユニホームのようなウェア。でも思えば、日常の洋服だって、ほとんど毎シーズン好きなブランドの定番商品を買っているような……。街着であろうと、山着であろうと、好きなものは好き。山だからといって、急に派手な色を着ようというほうが、不自然なのです。
自分の好きな服、似合う服はどんなものか。それをしっかり知っていて、冷静に賢く買い物できるのが、大人の女性というもの。and wanderの服は、そんな大切なことを教えてくれた、特別な山の服なのです。