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リオ五輪がさらに面白くなる3冊『東京オリンピック』ほか

リオ五輪がさらに面白くなる3冊『東京オリンピック』ほか
撮影/馬場磨貴

いよいよリオデジャネイロ五輪開幕。まさかの女子サッカー不出場、現地の安全問題などありますが、今大会は私たち日本人に特別な思いで観戦されるはず。そう、4年後の2020年、2度目の東京開催が控えているのです! この夏、宮本武蔵の『五輪書』ならぬ「五輪の読書」はいかがでしょうか。

もはや三島由紀夫劇場?!

まず紹介するのは『東京オリンピック 文学者の見た世紀の祭典』。2020年の東京が「震災からの復興」という願いの込められた大会であるように、1964年は太平洋戦争の戦後復興のシンボルとしての大会であり「アジア初の五輪開催国」に選ばれた誇りがありました。これを国中で味わいたい、そのためには報道によい書き手が必要だ。

というわけで、本書は当時の人気作家総動員で書かれたオリンピックの記事集。瀬戸内晴美(現在の寂聴先生)、大江健三郎、石原慎太郎など、今では大御所の作家たちが若かりし頃の原稿がずらり。「え、あの人が?!」という名前もたくさんあり、堀口大學が「燃えろ東京精神」という詩を寄せ、井上靖が開会式を、松本清張が閉会式の様子をリポートしています。

リオ五輪がさらに面白くなる3冊『東京オリンピック』ほか
『東京オリンピック 文学者の見た世紀の祭典』講談社 編 講談社学芸文庫 1,600円+税

三島由紀夫が何本も書きまくっており、まずボクシングを語る熱量がすごい。褐色の肌の選手にシビれ、彼らについて、「概してボクシングのために生れたような、柔軟きわまる体と、強靭(きょうじん)な腰と、すばらしいフットワークを持っていた。野獣の優雅がボクシングの身上であって、ただ野獣であっても、ただ優雅であっても、いい選手にはなれないが、白い肌の選手たちはこのスポーツにおいて何か欠けるものがあるように思われた。何かしらこのスポーツには、密林的なものが必要だ。豹(ひょう)の一撃が必要だ」と、美しく激しい文章で大絶賛。

また普通、スポーツは、走るにしろ投げるにしろ飛ぶにしろ打つにしろ「速さ」が勝負ですが、重量あげについて「何という静かな、おそろしいサスペンス劇だろう」と書き出し、「スピードを取り去られた戦いの世界の異様な圧縮された空気!」とこの競技の核心を突いています。「東洋の魔女」と言われた女子バレーの優勝を見ては「これは生まれてはじめて、私がスポーツを見て流した涙」と告白。もはや三島由紀夫劇場?!

読み取るべきは、競技を、選手を通じて当時の名うての書き手たちが流した心の汗。その他どんな作家がどの競技を書いているかお楽しみに。そしてさあ、4年後はどんな作家たちが招集され、2度目の「TOKYO」を描くでしょうか?! こちらも楽しみですね。

映画『オリンピア』のただならぬ出来栄え

2冊目は沢木耕太郎さんの『オリンピア』。五輪が政治のプロパガンダに使われることは近年ままあります。1936年のベルリン大会はナチス・ドイツを「平和の祭典である五輪を開催する平和国家である」とアピールするためとことん利用された、というのが現在通説ですが、その記録映画『オリンピア』を手掛けたのが当時30代半ばであった女性監督レニ・リーフェンシュタールでした。沢木さんが、時がたち、90歳を超えた彼女に会いにミュンヘンの南に向かうシーンから、本書は始まっています。

リオ五輪がさらに面白くなる3冊『東京オリンピック』ほか
『オリンピア―ナチスの森で』沢木耕太郎 著 集英社文庫 648円+税

レニ・リーフェンシュタールとはなにものか? 女優でありダンサーであり、人気映画監督だった彼女はヒトラーに眼をかけられ、ナチスの協力者となったのか? しかし現在レニに批判的な批評家さえ、絶賛してしまう映画『オリンピア』のただならぬ出来栄えとは? あっと言わせる事実が出てくるスリリングな快作です。

第1回のアテネ大会、驚きのエピソード

夏休み、自由研究でオリンピックを取り上げるお子様も多いでしょう。3冊目の『オリンピックまるわかり事典 大記録から2020年東京開催まで』は小学生向け図鑑で、大人が読んでもへえっと思うエピソードがたくさん。

たとえば、第1回のアテネ大会では「1位の選手には銀メダルとオリーブの小枝で編んだ冠が、2位の選手には銅メダルと月桂樹で編んだ冠がおくられた」………金メダルがない!

リオ五輪がさらに面白くなる3冊『東京オリンピック』ほか
『オリンピックまるわかり事典 大記録から2020年東京開催まで(楽しい調べ学習シリーズ)』PHP研究所 3,000円+税

今は何でもネットで調べられるけれど、本がいいのは、1ページあたりの面積が決まっていて情報が限られていること。「それってネットに比べて駄目ってことじゃないの?」とおっしゃるでしょうが、ネットは子供たちが疑問や興味を感じる間を与えず、のべつまくなしに情報が垂れ流される。

本は、すべてが出てこないからこそ、「じゃあアテネ大会で、3位の選手は何をもらったのかな?」「金メダルはいつできたの?」など、子供たちに「この先、こういうことを知りたい、調べたい」という意欲をもたらすと思うのです。

ワールドカップやオリンピックの時期って、会社や家庭で自然と会話が増えるものです。スポーツ観戦にはコミュニケーションツールとしての役割も大いにある。自分で読むだけでなく、リオの熱戦中、「こんな本知ってる?」とこの3冊を家族や友人に紹介してみては? そう、本も誰かと誰かをつなぐ、コミュニケーションツールなのですから。

リオ五輪がさらに面白くなる3冊『東京オリンピック』ほか
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PROFILE
間室道子

まむろ・みちこ
代官山 蔦屋書店 文学コンシェルジュ
テレビやラジオ、雑誌でおススメ本を多数紹介し、年間700冊以上読むという「本読みのプロ」。お店では、手書きPOPが並ぶ「間室コーナー」が人気を呼ぶ。

*本文中の引用部分の表記は、原文のままにしています

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