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プレイよりも見るのが楽しい?バトルロイヤルゲーム「PUBG」の大ヒットの理由

熱狂的なファンが増えているバトルロイヤルゲーム「PUBG」。[© 2017 8 Dudes in a Garage AB ALL RIGHTS RESERVED]


熱狂的なファンが増えているバトルロイヤルゲーム「PUBG」。[© 2017 8 Dudes in a Garage AB ALL RIGHTS RESERVED]


 いまゲーマーたちの間で熱い視線を集めているオンラインゲームがある。韓国のオンラインゲーム開発スタジオBluehole社が開発する「Player Unknown’s Battlegrounds」略して「PUBG」だ。
 PUBGには世界観を支える物語もなければ、複雑な設定もない。世界中から同時接続する最大100人のプレイヤーはゲームの舞台となっている島にパラシュートで降下する。その後は、武器や弾薬といった物資を集めつつ、最後の一人になるまで殺し合いをするという血なまぐさいバトルロイヤルゲームだ。
 プレイヤーは時間とともに次第に狭くなってゆくプレイエリアによってあぶりだされながら、時には火力で押し切り、時には心理戦を制しつつ、「ドン勝」と呼ばれる最後の一人の生き残りを目指す。
 いつ撃たれるかわからない緊張感が人気を呼び、PUBGはまだ正式リリース前の早期アクセス版であるにもかかわらず、8月初旬には同時接続数で50万人を超えるヒットになりつつある。
 しかしPUBGにはもう一つ、大きな魅力がある。それは実際にゲームをプレイしていない人でも、プレイしている人の動画を楽しむことができる「実況向きのゲーム」だという特徴だ。

「実況向きのゲーム」という新しい進化

ゲームをプレイしない「見ることが専門」の新しいファン層が広がっている。[gettyimages]


ゲームをプレイしない「見ることが専門」の新しいファン層が広がっている。[gettyimages]


 ゲーム実況といえば、スマートフォンゲームの攻略動画はもちろん、アクションゲームのプレイ動画や、ブロックを設置して環境をつくるマインクラフトのようなゲームの実況などがすでに有名だ。その人気は若年層を中心にすでに定着している。
 先日発売された『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』でも、プレイ動画の配信についてガイドラインが発表され、すでにゲームと動画配信は切り離せないものとなっていることを印象づけた。
 YouTubeやゲーム実況サービスTwitchでこれらのゲームタイトルを検索すれば、何十万という視聴者をもった動画配信者たちが互いに人気を競っており、プロのつくるバラエティ番組にも劣らないハイクオリティの動画も珍しくない。
 そんななか、実況向きのPUBGは、ゲームをプレイしない「見ることが専門」の新しいファン層を獲得しているのが注目したいポイントだ。
 PUBGがとくに実況向きであるのにはいくつかの理由がある。一つは、時間とともにプレイヤーたちが戦うフィールドが狭まっていき、互いに遭遇することを強制されるために長くても30分程度で1プレイが終了するという点だ。
 いつ終わるともわからないゲームプレイを延々と見るのではなく、アニメ番組を見るのと同じくらいの時間で、プレイ動画を楽しめる。
 もう一つは、実況をしているプレイヤーがおかれている状況が、画面を通して視聴者に伝わりやすいという点だ。壁の向こうに敵がいて息をひそめているといったような場面で、プレイヤーの緊張感は画面を通して実況の視聴者にも直接伝わる。
 視聴者は、配信主と同じように手に汗を握りながら、時には運悪く敵の弾によって倒れ、あるときは奇跡的に切り抜けて「ドン勝」する一喜一憂を追体験できるのだ。ある解説記事はPUBGについてこのように描写している。「これが2017年の最高のゲームになるかはもはや問題ではない。これは私が『視聴したゲーム』のなかで過去最高のゲームだ」

ゲーム実況が、新しいテレビ番組になる

競技としてのゲームプレイ「eSports」を扱った番組も、広く受け入れられつつある。[gettyimages]


競技としてのゲームプレイ「eSports」を扱った番組も、広く受け入れられつつある。[gettyimages]


 こうした、ゲームの「見る楽しみ」の高まりを受けてAmazonが買収したTwitchなどの配信プラットフォームは急速に成長している。これに対抗して、YouTubeでもゲーム配信の専用部門のYouTube Gamingを立ち上げ、競争は激化している。
 さらに、ゲーム実況の配信だけにとどまらず、ゲームプレイ自体を競技として成立させ、テレビ番組などの枠に組み込む動きも活発化している。
 例えばアメリカの大手放送局ターナー・ブロードキャスティング・システム社には、ELEAGUEというゲームの競技会と番組制作をおこなう部門が存在し、5月には格闘ゲーム「ストリートファイター5」の招待制大会において世界中の32人のプレイヤーが賞金25万ドル(約2760万円)を争奪するというイベントも行われ、注目を集めた。
 この大会はテレビでも放映され、競技としてのゲームプレイ「eSports」を扱った番組が、広く受け入れられつつあることを示している。
 また、近年ではゲームそのものについても、競技や番組として成立することを強く意識した制作が行われている。
 「eSports」を番組として成立させるには、どんなゲームでもよいというわけではない。視聴者がプレイ画面をみる際に、ひと目で何が起こっているのかを理解できる視認性や、画面の複雑さの排除がなによりも重要だ。
 それに加えて、番組としてスケジュールを組み立てやすくするために1プレイが予測可能な時間内で終わること、画面を通してゲームプレイの「すごさ」が視聴者にストレートに伝わる演出、といったような要素が求められる。
 PUBGの人気の理由は、こうした娯楽としての要素が、ゲームシステムとしてしっかりデザインされているところにもあるのだろう。

競技であり、バラエティとしてのPUBG

操縦者の視点でも追うことドローンレーシングも人気だ。[gettyimages]


操縦者の視点でも追うことドローンレーシングも人気だ。[gettyimages]


 ゲーム実況と同じように、視聴者に競技者の視点を与えて番組化に成功しているのがドローンレーシングだ。
 視聴者は数々の障壁を高速でくぐり抜けるレースの様子をF1レースのような俯瞰の視点でみるだけではなく、ヘッドマウントディスプレイを装着している操縦者の視点でも追うことができる。そしてドローン・レーシング・リーグなどが提供しているトーナメントは、すでに米ESPN社などで番組化されて一定の成功をおさめている。
 現時点では、PUBGに限らず多くのゲーム実況動画の魅力は実況主のゲームの腕前というよりも、面白い解説をするナレーションの巧みさからうまれている。スポーツ番組というよりはバラエティ番組や、旅番組のような楽しみ方といってよい。
 それをストイックな競技的な側面で番組化してゆくのか、それともプレイとナレーションを軸にした番組にしてゆくのかは、今後のコンテンツ作りの挑戦といってもいいだろう。いずれ、テレビのクイズ番組やバラエティ番組と同じような自然さで、ゲーム競技番組を楽しむ日もやってくるかもしれない。
 PUBGの正式版のリリースは2018年の春とされており、パソコン版に加え、Xbox One版の制作が発表されている。今後プレイヤーが増えるに従って、実際にプレイするのではない「視聴専門のファン」もさらに増えてゆくだろう。それはここまで着実に進んできた、ゲームのスポーツ化とテレビ番組化を、大きく推し進める可能性があるのだ。
 来年は、ゲームの新しい楽しみ方が普及する「見るゲーム元年」となるのかもしれない。

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