上間常正 @モード
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引退を発表した安室奈美恵の凛とした生き方

1997年結婚発表をした安室奈美恵さんとSAMさん=10月23日、東京都港区青山で

1997年、結婚発表をした安室奈美恵さんとSAMさん

2000年九州・沖縄サミットのイメージソングの完成を森喜朗首相に報告する小室哲哉さん(左)と安室奈美恵さん(右)=11日午後2時すぎ、首相官邸で

2000年、九州・沖縄サミットのイメージソングの完成を森喜朗首相(当時)に報告する小室哲哉さん(左)と安室奈美恵さん(右)

沖縄サミットのイメージソング「NEVER END」を歌う安室奈美恵さん=2000年7月、那覇市

沖縄サミットのイメージソング「NEVER END」を歌う安室奈美恵さん

2017年9月のライブで歌う安室奈美恵=エイベックス提供

2017年9月のライブで歌う安室奈美恵さん

人気歌手・安室奈美恵の突然の引退発表が、世代を超えた広い反響を呼んでいるようだ。いなくなってしまうことを惜しむ〝アムロス〟という言葉も生まれ、引退の理由についての臆測も飛び交っている。キャンディーズやピンクレディーが引退した時も大きな騒ぎとなったが、一人の女性としての生き方としてこれほど反響が広がることはなかった。安室奈美恵とはどんな女性なのか?

デビューから25年の来年9月16日に引退することが、彼女の40歳の誕生日に、サプライズみたいに文書で発表された。「今日は、私が長年心に思い、この25周年という節目の年に決意したことを書きたいと思います。……」とのこと。ごく一部のスタッフだけが承知していて、ほとんどの関係者が知らされていなかったという。

後で知ったのだが、この記念日の16日と17日、沖縄の宜野湾海浜公園・野外特設会場で、安室奈美恵凱旋(がいせん)ライブ公演が行われていた。その様子をネットなどの映像で見ると、彼女は相変わらずびっくりするほど若々しく、豊かな歌唱力ときれのいいダンスで休む間もなく次々と歌い続けていた。観客は2日間で約5万人にのぼったそうだ。

この変わらなさは、やはり並大抵のことではない。声を出す器官やそれを支えまた踊るための筋力、そして引き締まった体のラインを保つこと。そのための努力を絶え間なく続けられる強い心が必要だ。それはもって生まれた才能だけではなくて、彼女が生まれ育った境遇や体験してきた出来事などが強く影響しているのだと思う。

沖縄の那覇市首里の生まれで、3人兄姉の末っ子。両親が離婚したため母親の手で育った。小学5年生の時、友達の付き添いで沖縄アクターズスクールに見学に行って、校長にスカウトされた。母子家庭で授業料が払えなかったが、特待生として入学した。通学のバス代を浮かすために、家から学校まで片道1時間半かけて歩いて通ったという。

中学2年生の時にこのスクール内で結成された5人組グループ「SUPER MONKEY’S(スーパーモンキーズ)」のメインボーカルとして県内で活動していたのが東京のテレビスタッフの目に留まり、1992年にメジャーデビューした。始めのうちは鳴かず飛ばずだったが、95年に音楽プロデューサー小室哲哉が関わった曲で初のミリオンセラーを出し、一躍、全国的なスター歌手となり、その後もミリオンセラーを連発した。茶髪にミニスカート、厚底ブーツのスタイルをまねた〝アムラー〟が96年の流行語大賞の一つに選ばれた。

このスタイルは若い女性らしさを強調してはいたが、男性受けを狙ったセクシーさは希薄で、高学歴、高収入、高身長の〝3高男性〟を結婚相手に選ぼうとするバブル景気全盛期の80年代末のトレンドとは一線を画していた。そうした男性を誘惑するような赤い口紅を決してしなかったこともその表れだったのだろう。

97年に男性ダンサーと結婚し、出産後は仕事を1年間中断して子育てに専念した。5年後に別れたが、子供の養育権も親権も得て母と同じように女手ひとつで育て上げた。その母親が99年、再婚相手の男性の弟に殺害され、安室は仕事ができなくなるほどの大きな痛手を負った。

だが短期間でなんとか立ち直ったのは、自分もまた子供を守り育てなければいけないという親から受け継いだシングルマザーとしての強い責任感だったのに違いない。2014年、彼女が所属プロダクションに宛てた手紙には「私は歌手である前に、一人の母親なのです」との言葉があった。それはとても重くて強い。男性は父親であることについてこんな風に語れるだろうか?

彼女は女性の権利、または義務について、フェミニストや男性優位論者のように声高なメッセージをうたいはしていない。一人の女性としての自分の体験を基にして、自分がやろうと決めた仕事を通して感覚的に表現し続けてきたのだと思う。自然体だが力強くて優しい、人としての立派な生き方の一つであることは間違いない。

SUPER MONKEY’Sのデビュー曲「ミスターU.S.A.」は、沖縄の駐留米兵との淡い恋を、小さな虹に託して歌っている。フェンスの中のまぶしいアメリカ、結局別れることになるアメリカ。彼女にとっては大きな意味をもっていた沖縄の米軍基地に占拠された現実の姿が、この曲を通して伝わってくるような気もする。

こんな歌手はやはり数少ないのだ。引退までの1年間にどんな歌と活動を見せるのか、そしてその後はどんな風に生きていくのか。そのことにこれからも注目していきたい。

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