マッキー牧元 うまいはエロい
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<45>“とろり”と“はらり”恋に落ちる、上海蟹味噌がけ炒飯/麻布長江 香福筵

 

上海蟹(がに)は高い。
年々値上がりして、あの小さな蟹が一杯安くとも4千円はする。
それでも人は、この季節になると、上海蟹を食べようと奔走する。
上海蟹の魅力は、肉よりミソや卵にある。

少ししかない身は、かすかな甘みを持つだけだが、ミソや卵には人を熱狂させるだけの味わいがある。
10月から12月末までの二カ月間、好きな人は(お金持ちは)数十杯の蟹を食べるという。
普段は冷静沈着で、上品な方も、チュパチュパ音を立てて蟹をかみ潰す。
さて、そんな上海蟹を手軽に食べようと思うと、僕はここに行く。

メニューを開くと、姿蒸しの上海蟹、上海蟹味噌(みそ)で煮込んだフカヒレ、上海蟹味噌小籠包、上海蟹の紹興酒漬けなどが誘惑するが、まっしぐらに頼むのが「上海蟹味噌がけ炒飯(チャーハン)」である。
やがて湯気を立てて現れたそれは、茶色の器の中で、黄色いミソのソースが誇らしげに輝いて、炒飯にかけられている。
そして所々にオレンジ色の卵が点在している。

ソースの下にうっすらと見える、炒飯がいじらしい。
たまらず口に運べば、とろりと蟹味噌アンが舌に流れる。
炒飯がはらりと崩れる。
この“とろり”と“はらり”という、対比的食感の相互作用がいい。

濃厚な蟹味噌の味が広がり、そこに炒飯の卵の甘みが加わる。
そして丸いミソの旨味は、口の中でさらに膨らむ。
「ううむ」とうなる。
圧倒的なうまみなのだが、優しい。

口腔(こうくう)内をなめ回すようにして消えてゆく蟹味噌に、うっとりとなる。
これは恋かもしれない。
蟹味噌にディープキスをされて、恋に落ちたのかもしれない。
そう思うほど、濃密な時間を与えてくれる炒飯なのである。

できれば昼下がり、時間を気にしないでゆっくり食べたい。
そうしてこそ、恋は成就する。

麻布長江 香福筵

 

 

人気四川料理店。四川料理の名菜だけでなく、春巻きなど点心類も素晴らしい。「上海蟹味噌がけ炒飯」は2600円。12月まで。そのほか「ふんわり卵乗せ上海蟹味噌がけご飯」も逸品。

【店舗情報】
東京都港区西麻布1-13-14
03-3796-7835
http://www.azabuchoko.jp/

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