私の一枚
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音を鳴らすことの楽しさがわかり始めた『H ZETT M』の音大付属高時代

 

高校の頃の写真ですね。鼻が青くないので『H ZETT M』かどうかというのは疑問ではあるんですけど(笑)。
何年生の時ですかねえ。1年生か2年生かな。音大の付属高校だったんですけど男子が極端に少なくて、僕の学年が2人、1つ上が7人、その上が8人。その17人の中でクラシック以外も好きな男子が集まってバンドを組もうとなって。

サックス、フルート、トロンボーンに僕がピアノで入って、ギターとベースとドラムは別の学校の生徒でした。レパートリーはオリジナルと、ザ・ビートルズのカバーもやっていましたね。「バック・イン・ザ・U.S.S.R.」とか。

でも、この写真はそのバンドの時のものではなく、バンドのリーダーだったサックスの人のジャズバンドで演奏した時のものです。他にも何組か出演するようなライブで、確かクリスマスの時期で、ジャズをやろうということになって。
僕のオリジナルもやりましたし、ジャズのスタンダードも…「チェロキー」かな、演奏したのは覚えていますね。コードだけ書いた譜面でアドリブもやったような気がします。

うちは特に音楽一家ではなく、でもなぜか家には足踏みオルガンがあって、それを3~4歳の頃から弾いてました。弾くというより、鍵盤を押すと音が鳴るのが単純に楽しかったんでしょうね。それで音楽教室に入ってピアノを習い始めて、同時に作曲もやりたくなり、最初はお絵描きと同じようなスタンスで五線紙に音符を書いてました。

当然それでは曲になっていないんですけど、だんだん五線紙の幅で音符が書けるようになって、その音を押さえてみると、なんだか曲になった。その喜びがすごく大きくて、たくさん作るようになりました。タイトルも「うみのうた」とか適当につけて。

だから、最初は五線紙上の絵面(えづら)で曲を作っていたんですね。ピアノも電子オルガンも習いましたけど、弾くことはあくまで作った曲を鳴らすため、という意識が強かったです。人に聴かせようという気持ちもほとんどなくて、ただ黙々と作り、黙々と弾いてました。

そんなふうにしてたくさんの曲を作っていくと、だんだんクラシック以外の響きも気になりだして、中学生になるとジャズとかロックとかフュージョンとか、いろんなジャンルの曲を作りました。
でも、高校受験にあたって作曲の先生のレッスンを受けに行くと、先生が「君は和音のことがまだぜんぜんわかっていない」って言うんです。意気揚々と持っていったオリジナルをすべて却下されました。和音も単純でしたし、黙々と作っていたぶん、独りよがりだったんでしょうね。今はそのことがよくわかります。

そんな経験を経て、バンドを組んで、人に向けて演奏するという意識がだんだん芽生えてきた。ぜんぜん知らない人に曲を聴かせるということはどういうことかを考え始めたのが、この写真の頃です。
「こうやったら喜んでもらえるな」という経験が少しずつ蓄積され、空間に音を鳴らすということの楽しさがわかってきて、それが今のステージの派手なアクションにまでつながっているんじゃないかと思います。

感覚的に「ここでジャンプしたい」と思った時にジャンプする。ジャンプするとお客さんが盛り上がる。それを感じるたびにステージがどんどん楽しくなったし、それは今でも変わらないですね。
この写真の時期は、今の自分のスタイルが作られる上での大きなターニングポイントだったと思います。

 

えいち・ぜっと・えむ ピアニスト/エンターテイナー/音楽家。PE’Zの「ヒイズミマサユ機」、椎名林檎が率いた東京事変第一期の「H是都M」と同一人物という臆測が飛び交うも、本人はぼんやりと否定。超絶技巧に加え、“無重力奏法”と形容される超人的パフォーマンスで注目される。ソロと並行して2013年からはピアノジャズトリオ“H ZETTRIO”としての活動を始め、2014年に世界3大ジャズ・フェスティバル「モントルー・ジャズ・フェスティバル」に出演。2016年にはリオ五輪閉会式での東京五輪PRムービーに楽曲提供。2017年にはNECのノートパソコン「LAVIE Note NEXT」のTVCM曲に「What’s Next」が起用され自ら出演するなど、活動の幅を広げている。

◆3月7日に発売される『Mysterious Superheroes』は、「What’s Next」など全13曲を収録した4枚目のオリジナル・アルバム。5月には毎年恒例のこどもの日スペシャルライブを練馬文化センターにて開催。また6月からはこのアルバムを引っ提げて20カ所をめぐる全国ツアーも予定している。

 

アルバムは、ひとことで言って楽しい感じ。ライブもそうですね。今年も北から南までいろんなところに行きます。忙しいですが、今は忙しい以上に楽しいですし、時間は早食いして作ってます(笑)。生みの苦しみも一瞬あるかもしれないですけど、ないに等しい。曲もこれからさらにたくさん作っていきたいと思っています。

(聞き手・髙橋晃浩)

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