英国を代表する写真家が記録する“ビーチの奇妙な日常”

 英国を代表する写真家マーティン・パーが写真を撮り始めたのは10代の前半。アマチュアの写真愛好家だった祖父の影響もあり、14歳の時には写真家になるという目標を胸に抱いていたという。国立マンチェスター・メトロポリタン大学(当時の校名はマンチェスター・ポリテクニック)で写真を本格的に学んだあと、独特の技法で、人々のリアルな生活をとらえた数々の作品を発表するようになる。

 2013年に出版された「Life’s a Beach」は、パーにとってライフワークともいえる、ビーチで撮影した作品をまとめた写真集。英国のほか、中国、アルゼンチン、タイ、スペイン、ロシア、ベルギー、そして日本の宮崎県のシーガイアで撮影されたものも収録されている。

 ビーチの写真を本格的に撮り始めたのは、30代の頃だ。結婚後、妻の仕事をきっかけにリバプールに引っ越すことになった彼は、郊外にあるニュー・ブライトンのビーチを1983年から85年にかけて撮影し、写真集「The Last Resort」として発表。労働者階級の週末を、ヴィヴィッドなカラー写真で表現した同作は「人々の日常を、好奇の目にさらしている」と、国際的な論争を巻き起こすと共に、のちに代表作となった。

 「Life’s a Beach」は、昼間にフラッシュ光を焚(た)く日中シンクロという技法と、報道写真などで主に使用される望遠レンズを用い、のぞき見したような風景が展開される。浜辺で無防備に日焼けをする男女や、強い日差しから身を守りながら読書にふけるマダム、そして巨大なソフトクリームの置きものなど、どこか滑稽な人間の営みがそのまま描かれている。

 パーの作品に一貫しているのはシニカルでユーモアにあふれる視線と、生々しい色彩だ。“人間の日常に潜むおかしさ”を明るい太陽のもとにさらしてしまう作風は、皮肉を楽しむ英国人にとって、毒気のあるドキュメンタリーにほかならない。

(文・山田敦士)

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