キネマの誘惑
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忽那汐里「ちゃんとしていない男性には、正直魅力を感じない」

「自分をさらけ出して自由になれたら、人は何をするのか」。孤独やストレス、将来への不安を抱えながら生きる私たちに、深く響くメッセージを投げかける映画『オー・ルーシー!』が4月28日(土)から公開される。

今作で、主人公・節子を解き放つきっかけになる、姪(めい)の美花役を演じるのが忽那汐里さん。「他にない雰囲気を醸し出す作品にとても惹(ひ)かれた」と、オーディションから撮影時のエピソードを語ってくれた。大きな瞳にきゅっと結んだ唇。クール・ビューティーな印象から一変、ほほえむと屈託のない笑顔があふれ出す。多彩な表情から目が離せない。

【動画】忽那汐里さんインタビュー(高橋敦、佐藤正人撮影)

初対面では決まらず、オーディションで射止めた美花役。「本当にやりたい役でした」

「(今作を作る前に)平栁監督が撮ったショートフィルムを見て、他の作品にない雰囲気を醸し出す監督だなと思いました。監督と一度顔合わせをしましたが、美花が若くて後先を考えない活発な女の子で、『ちょっと印象が違う』ということで、オーディションで探すことに。美花役を演じたい、この作品に本当に出たいと思っていたので、もちろんオーディションを受けました。オーディションは2シーンでしたが、どれも重要なシーンで集中力が必要でした。セリフも多くて、覚えるのも精いっぱい。汗だくになりながらでしたが、とても楽しかったです」

 そして射止めた美花役は、主人公である寺島しのぶさん演じる40代の独身OL節子の姪。メイド喫茶でバイトをして、英会話講師ジョンと恋をしてアメリカに駆け落ちしてしまう自由で活発な女の子だ。忽那さんが着るメイド服もイメージになく新鮮、オリジナルの“萌え萌え”ポーズを披露している。

『オー・ルーシー!』
節子(左・寺島しのぶ)と美花(忽那汐里) 映画『オー・ルーシー!』より (C)Oh Lucy,LLC

「美花は私とは全く別のタイプ。私がやりそうな行動とはかけ離れていますね。平栁監督とは、美花についてたくさん話をしました。南果歩さん演じる美花の母とはほとんど同じシーンがないので、母親との関係性、バックストーリーについて話し合いました。

メイド服は、実は人生2度目。最初は10代の頃だったので久しぶりでしたが、監督が『かわいい~!かわいい~!』と言ってくれるものの、どう反応していいか分からず(笑)。でも、メイド喫茶に行ったことはないんですよ。映像で見た記憶と、監督が『それに“チュー(ハート)”を足して』『“ニャンニャン”って、かわいい感じでやって』と現場で言われるものを付け足して完成しました」

忽那汐里さん
インタビューに答える忽那汐里さん

監督は、潔くてきっぱり。「求めているものを探し出す作業が面白かった」

平栁敦子監督は、17歳で俳優を目指し単身渡米。その後、監督へシフトチェンジし、大学院の課題で製作した短編『Oh Lucy!』を長編化したのが今作となる。日本人でありながら拠点はサンフランシスコにあり、映画製作も欧米スタイル。「欲しいものが明確に見えている監督」と忽那さんは話す。

平栁敦子監督(右)とジョシュ・ハートネット
平栁敦子監督(右)とジョシュ・ハートネット (C)Oh Lucy,LLC

「長編初挑戦なのに、あそこまで強く押し通せる監督はいないんじゃないかと思います。欲しいものがはっきりしているので、違う時ははっきり『違う』と言う。日本的な“やんわり”や“ちょっと”というのがなくて潔い。監督が求めているものを探し、見つけ出す作業が、私としてはすごく面白かったです。

撮影は、リハーサルなしでいきなり本番というスタイルでした。一度自分が感じたものを自由にやらせてもらい、そこから監督の要望を加えながら変えていく。このスタイルも個人的には嫌いじゃないです。現場では、そんな(監督がバシバシ言う)やりとりがよくあって、『敦子さん、またやってるね(笑)』という感じでした。

『オー・ルーシー!』
撮影の様子 (C)Oh Lucy,LLC

撮影は、日本とロサンゼルスの2カ所で行いました。監督は日本人とはいえ拠点がアメリカで助監督もアメリカの方なので、基本はアメリカスタイルの撮影でした。マスター(※)を撮った後、他のカットも撮る。頭から最後までを何度も繰り返し撮るのが面白いけど、慣れていないと大変。同じ芝居でも、異なる取り組み方・進め方をするのが大きな違いかなと思います」

※ひとつのシーンで、基本となる位置で頭から終わりまでを通して撮影されたショットのこと。

『オー・ルーシー!』
映画『オー・ルーシー!』より (C)Oh Lucy,LLC

日米豪華キャストとの共演。「ロスはたった2日間の撮影で名残惜しかった」

主人公・節子を演じる寺島しのぶさん、母親役に南果歩さん、そして恋人役の英会話講師ジョンにジュシュ・ハートネットと、日本とハリウッドを代表する豪華キャストが勢ぞろい。忽那さんは各人とも初共演、短い撮影で名残惜しさもあったと語る。

『オー・ルーシー!』
映画『オー・ルーシー!』より (C)Oh Lucy,LLC

「寺島さんは、外国作品やバタバタした現場にも慣れていて、とても潔い。言われたことをすぐ理解して実現できる役者さんという印象でした。南さんは、私があいさつする前に『こんにちは~、ヤッホー!』って声をかけてくれ、手作りのおにぎりやみそ汁を振る舞ってくれて。明るくて、心がとっても華やかな人だなと思いました。

ジョシュ・ハートネットもすてきな役者さんでした。言葉では言い表しにくいのですが、お芝居している様子を見て、真面目さが伝わってくる。だけど、気さくで優しくて。撮影の合間に、これまでの役者人生や何でもないことをみんなに話してくれました。ロサンゼルスの撮影が2日だけだったので、短くて本当に残念でした」

『オー・ルーシー!』
映画『オー・ルーシー!』より (C)Oh Lucy,LLC

「最悪だった(笑)」と振り返る海のシーン。冷たい海で海藻と格闘する場面も

「一番大変だったシーンは?」という質問には、後半の海のシーンをあげてくれた。ストーリーでも重要なシーンのため、詳細は作品を見てチェックして欲しいが、「冬の海の寒さがこたえた(笑)」と撮影時を振り返る。

忽那汐里さん
笑顔で撮影のエピソードを語る

「本当に最悪でした……というのはうそですが、『もう、どれだけ長くロスの海に入っていれば気が済むの~!』みたいな(笑)。海の中では、下にウェットスーツを着ていましたが、とにかく寒くて。ドローンを飛ばして海にいる私を上から撮るんですが、ドローンの充電があまり持たなくて、1シーン撮るごとに3、4分の充電を海の中で待たなくてはならない。当初1回のはずが、それが何回もあって。しかも波が結構激しくて、体が動いてしまう。どうしたらいいだろう?と悩んだ末、海藻がたくさん生えていたので、長い海藻を親指と人さし指で見えないように挟んで、動かないようにしました。寒さに加え波もあったので、なかなかハードルが高かったです」

作品で描かれている英会話講師ジョンについて。日本ではイケてる英会話講師だが、アメリカに帰れば既婚者で子持ち、恋愛にだらしないダメ男という大きなギャップがある。忽那さん自身がオーストラリアで生まれ育ったという経歴もあり、そこにはとても共感している。

「ジョンのような白人男性に、日本人はフィルターというか憧れというか、理想のイメージを持ってしまう。実際は、そうじゃない人もいる。その矛盾というかイメージを払拭(ふっしょく)したかったという監督の思いは、すごく共感できます。ジョンみたいにふたを開けてみるとちゃんとしていない男性は、正直魅力を感じないですよね。人によっては、母性をくすぐられる人もいるかもしれないけど、その後が大変かも(笑)」

役者という立場から「海外での日本人の間違った描かれ方を変えていけたら」

現在25歳、海外作品にも意欲的に出演し、日本映画界を担う若手俳優の一人として、役者としての役割をどう感じているのか。

「私自身が日本人で、日本でお芝居を始めたこともあり、海外作品で描かれている日本人の役は、日本人がやって欲しいと思います。日本人が、実際とは違う、誤解されるような描かれ方をされていることって意外とよくある。きちんと話し合えばちゃんと表現できると思うので、私が役者としての立ち位置から何かをできたらいいですよね。海外の大変な環境で頑張っている先輩の俳優さんを見ると、同じように頑張っていかなくちゃとも思います」

忽那汐里さん
「自分をさらけ出せるとしたら何をしたい?」という質問に、「何も気にせず、素で踊りを楽しみたい」

映画『オー・ルーシー!』で、がむしゃらに生きる主人公・節子の姿を通じて、誰もが胸に秘めている“願望”や“欲望”に気づかされるはず。一生懸命に生きる姿は、すてきで、そしてちょっと笑えるのが皮肉だ。

「『オー・ルーシー!』は、すごく共感できるところが多い作品だと思います。みんなどこかで、特に東京のようなストレスの多い環境で暮らしていると『羽を伸ばしたい』『新しいことをはじめてみたい』と思う時がある。そんな時に、節子という主人公を通じて、その一歩を踏み出すきっかけになってくれたらいいなと思います。日本にはないタイプのコメディー映画でもあるので、その雰囲気や空気感も楽しんでもらえたらいいですね」

(文・武田由紀子/写真・花田龍之介)

映画『オー・ルーシー!』作品情報

監督・脚本:平栁敦子
出演:寺島しのぶ、南果歩、忽那汐里、役所広司、ジョシュ・ハートネット
エグゼクティブ・プロデューサー:ウィル・フェレル、アダム・マッケイ
プロデューサー:ハン・ウェスト、木藤幸江、ジェシカ・エルバーム、平栁敦子
共同脚本:ボリス・フルーミン
配給:ファントム・フィルム
日本・アメリカ合作/カラー/ビスタ/95分
(C)Oh Lucy,LLC
4月28日(土)ユーロスペース、テアトル新宿他にて公開!
ウェブサイト:http://oh-lucy.com/

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