猫と暮らすニューヨーク
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ブルックリンのオス猫、ある日家までついてきた

子どもの頃から猫を飼っていたというケイさん。イーライはNYで暮らすようになって初めての飼い猫です

子どもの頃から猫を飼っていたというケイさん。イーライはNYで暮らすようになって初めての飼い猫です

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Eli(イーライ) 3歳 オス 雑種
飼い主・ロンドン出身、現在はブルックリンのベッドスタイに暮らす、イラストレーター・デザイナーのKaye Blegvad(ケイ・ブレグヴァド)さん。

    ◇

 世の中には、猫にやたらとモテる人がいる。どんな場所でも決まって猫に遭遇するし、なぜか不思議と猫のほうから歩み寄られてしまう。ブルックリンに暮らすケイさんも、そんな一人だ。
「イーライと出会ったのは、近所の路上でした。とっても人懐っこい猫で、見つけては撫(な)でたりしていたのですが、ある日私のあとを追って、家までついて来てしまったんです」(ケイさん)。

 どこかの家で飼われていた猫に違いないと思ったケイさんは、猫を自宅で保護しつつ、迷い猫のポスターを作って近所に貼り、飼い主を探した。「でも名乗りを上げる人は誰もいなくて……」。そうして数週間が経ったのち、すっかり情もうつってしまったその猫を、ケイさんは自宅で飼うことにした。それがオスのイーライだ。

 キジトラ柄で、おなかまわりがぽっちゃりしているイーライ。たいていの時間は、ケイさんのベッドの上で過ごす。取材チームがずかずかと部屋に足を踏み入れたその時も、ベッドの上にどっしりと体を横たえたまま。臆せず、憮然(ぶぜん)とした表情をちらりとこちらに向けるのみ。その落ちつき払ったたたずまいは、まるで老猫のよう。

「こんにちは!」元気いっぱいにケイさんの自宅を訪れた取材チームに対し、イーライは微動だにせず、ご覧の表情。目が据わってます……

「こんにちは!」元気いっぱいにケイさんの自宅を訪れた取材チームに対し、イーライは微動だにせず、ご覧の表情。目が据わってます……

 「見た目が12歳の猫みたいでしょう? でもまだ3歳なんです。名前のせいかもしれないですね」とケイさんは笑う。聞けばイーライとは、かつて流行した男性名で、NYに暮らすおじいちゃんたちをイメージさせる名前なのだとか。

 3歳なのに、風貌(ふうぼう)は時々12歳。そんなイーライだけれど、ひとたびケイさんが好物のヒモを取り出せば、あっという間に若い猫特有の、はつらつとした姿に元通り。
 無我夢中でヒモを追いかけて走り回り、机の上に飛び乗ったら、勢い余ってデスクランプに頭を強打したほど。「こんなふうに興奮して、ドジをしてしまうことがよくあるんです」とケイさんは苦笑する。
 例えばバスルームでケイさんがシャワーを浴びているとき、バスタブの端っこに座り、シャワーカーテン越しに水滴が落ちるのを熱心に眺めるのがイーライの日課。そのうちに水滴を捕まえようと必死になって、バスタブの中へごろりと落っこちてしまうのだとか。愛(いと)しき、愚か者よ……。

大好きなヒモが登場するやいなや、キラリ!目の色が変わったイーライ。ご機嫌な様子で、ヒモ遊びに興じます

大好きなヒモが登場するやいなや、キラリ!目の色が変わったイーライ。ご機嫌な様子で、ヒモ遊びに興じます

 「ちょっとまぬけでユニーク。そんな仲間を持てること。それが、猫のいる暮らしの素晴らしいところ」とケイさん。「猫は、基本的に単独で行動する動物ですよね。それなのに、人間のそばに寄って来るし、隣にくっついて座ったりする。イーライは夜、私のベッドで一緒に寝たりもします。つまりそれは、“あなたのことが好き”という意思表示。そう考えると、なんて特別な体験なんだろうって、うれしくなるんです」。
 パソコン画面に向かってケイさんが仕事をしていれば、素知らぬ顔で目の前にどっかり座り、画面を(というよりもケイさんの関心を)堂々と独り占めする。時にはキーボードの上にずかずか踏み込んで、勝手に電源をオフにしてしまうことも。

 昼寝用にとケイさんが猫用ベッドを買い与えれば、まったく見向きもせず、処分しようとしていた靴の空き箱に、なぜか喜々として窮屈そうに体をねじこむ……。

 たとえ不可解で迷惑でも(いや、むしろだからこそ)、飼い主たちは愛おしさを感じ、ますます猫愛は加速していくのである……。

苦しくないんでしょうかね? なぜか角の尖った場所に、あごを乗せるのが好きなイーライです

苦しくないんでしょうかね? なぜか角の尖った場所に、あごを乗せるのが好きなイーライです

 ところでケイさんは、Cat Encounters(猫との遭遇)というインスタグラムアカウントを持ち、近所の路上や旅先などで出会った猫の写真を撮影しては、投稿している。

 暗い格子窓の向こう側から、ひっそりとこちらをうかがう猫や、常人には判別しがたい、花壇の奥の黒い物体(実は黒猫)まで、どうやったらこんなに猫を見つけられるのか、というぐらい、猫との遭遇にたけているのである。
 きっと猫を引き寄せる、特別な何かを持っているに違いない。猫にモテたくてしかたがない一介の猫好きとしては、そんなケイさんに軽い嫉妬を覚えずにはいられないのでした。

(写真・前田直子)

>>写真のつづきはこちら

    ◇

連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

    ◇

ケイさんのインスタグラム
http://www.instagram.com/kayeblegvad

Cat Encounters(猫との遭遇)のインスタグラム
http://www.instagram.com/cat.en.count.ers

ケイさんのウェブサイト
www.kayeblegvad.com

PROFILE

前田直子

写真家 24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
www.naokomaeda.net

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