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スリランカ 光の島へ
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〈1〉30代なかば、人生の舵をきる

&wの連載「book cafe」やインタビューの撮影でもおなじみの写真家、石野明子さんが2017年、30代半ばにして、スリランカに移住しました。会社員だったパートナーと娘、3人家族全員での移住を決意するまで、そして移住してからの日々を文章と写真でつづる連載「スリランカ 光の島へ」が始まります。第1回は、石野さんとスリランカの出会いのお話から――。

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34歳で初めて受けた体外受精は子宮外妊娠という結果だった。

子どもよりもフリーランスのフォトグラファーとして活躍したい、そう思って20代は子どもを持つなんて一切考えてこなかった。でも産めるリミットを意識し始めた矢先、私たち夫婦は自然妊娠が難しいという診断を受けた。治療のしんどさに比例して成功への期待はかなり大きかった。

移植後のホルモン検査では妊娠していないという数値*で、その後つわりのようなものが出てきたがその時はただの体調不良だと思ったし、病院に行ってまた妊娠していないという結果を突きつけられたら耐えられないとそのまま過ごしていた (ホルモン検査の結果を聞いたときは涙が止まらず診察室を出ることができなかった)。

子宮外妊娠*は子宮に着床すべき受精卵が細い卵管などに着床してしまい、そのまま発育してしまうというもの。

移植を受けてから3週間ほどたった日のある夜、突然激しい痛みに襲われた。呼吸もうまくできず、寒さで体がガタガタ震える。そして下腹部はありえない程どんどん膨らんでいく。夜間救急に倒れこむように駆け込み、診察台で子宮外妊娠を告げられた。下腹部の膨らみは出血によるものだった。眠くなって意識が遠のいたその瞬間、医師の心臓マッサージで起こされた。夫は命を失う可能性があることを覚悟してほしいと言われたそうだ。

スリランカ1-2

これを書いているので私はもちろん助かった。そして病院のベッドの上で私と同じ年齢で、私と同時期に体外受精を受け私と同じように子宮外妊娠に気づかず、卵管が破裂してしまい命を落とした女性の記事を新聞で知った。

「海外でいつかフォトグラファーとして挑戦してみたい」という気持ちはずっとあったけれどすでに30代半ば、何かを挑戦するには遅すぎるのではないか、と自分に歯止めをかけていた。でも。

「人生はあっさりと終わってしまうこともあるのだ」

自分がもう1人の彼女の方だったかもしれないと思うと今までとは確実に人生の捉え方が変わっていった。周りの目を気にしないで、リスクを考えないで、本当に自分がしたいことは? 自分が望んでいることは?

早朝出社して帰宅が深夜0時をすぎること、土日出勤が当たり前だった会社勤めの夫と自分たちがこれからどうやって生きていきたいか何度も話し合った。私たちの出した結論は2人が同じ方向を向いて同志としてまた夫婦として人生を共有していくこと、もう一度だけ不妊治療に挑戦すること、そして恐れずに新しいことにチャレンジしていくこと。

スリランカ1-3

夫の日本での勤務形態ではお互い仕事は思いっきりできるけれど、一緒に過ごす時間はほぼない。もし子どもを持てたとしてもその成長を一緒に共有することは難しく、育児の負担はほぼ私にかかる。ならば新しい仕事のスタイルを自分たちで作り出して、かつそれをいつか住みたいと話していたスリランカで挑戦しようと。

『スリランカに自分たちで写真スタジオを立ち上げる』

無謀にもみえるこの計画、不安も限りなくあるけれどワクワクする気持ちもあったのである。

大きく舵をきった私たち。果たして。

※注:ホルモン検査の結果が妊娠反応を示していなくとも、症状がいつもと違う場合にはすぐに受診してください。また体外受精が子宮外妊娠の確率をあげるという科学的根拠は何もありません。

フォトギャラリーへ(写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)

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