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酒、麻、コーヒー 清流ゆかりの体験3選 滋賀・愛荘町

琵琶湖の東部、滋賀県愛知郡(えちぐん)愛荘町(あいしょうちょう)。地名に“愛”の文字がふたつも入るこの町は、かつて中山道の宿場町「愛知川宿」として栄えた地域です。鈴鹿山系の山々がはぐくむ豊かな水が、おいしい日本酒やコーヒー、麻織物などの伝統工芸品を生み出してきました。そんな愛荘町で体験できる“大人の社会科見学”スポット3ヶ所をご紹介します。

「旭日」の酒蔵見学、もちろん利き酒も

NHK連続テレビ小説「甘辛しゃん」や、NHK BSドラマ「リキッド~鬼の酒 奇跡の蔵~」のロケに使われたという酒蔵

NHK連続テレビ小説「甘辛しゃん」や、NHK BSドラマ「リキッド~鬼の酒 奇跡の蔵~」のロケに使われたという酒蔵

藤居本家の酒蔵見学は、国指定登録有形文化財に指定されている酒蔵「東蔵」からスタート。造り酒屋を舞台にしたドラマのロケなどで使われたというだけあって、その重厚で趣ある雰囲気に思わず「うわぁ~! カッコいい!」という言葉が。ずらりと並ぶ木の酒樽を見ながら、この日のガイド役、藤居鐵也社長のあとに続きます。

酒蔵の中に作られた井戸から湧き出るのは愛知川の伏流水。藤居本家ではこれを酒造りの仕込み水として利用しています

酒蔵の中に作られた井戸から湧き出るのは愛知川の伏流水。藤居本家ではこれを酒造りの仕込み水として利用しています

「おいしい日本酒はおいしい水がないと作れません。まずは仕込み水の試飲からどうぞ」と藤居社長。こちらで実際に酒造りに使用している水は、酒蔵の中にある井戸から湧き出る愛知川の伏流水。口に含んでみるとまったく癖がなく、ちょっと甘みすら感じられるまろやかな水でした。

「山に降った雨は川を流れて琵琶湖に入りますが、その多くは地中に染み込み、地層に磨かれながらゆっくり地下水として流れ込んでいるんです。みなさんが飲んだ水は、今から100年くらい前に降った雨が、長い年月を経てこの酒蔵の井戸から湧き出てきたものなんですよ」

日本酒が静かに眠る貯蔵庫。中央に見えるのは、4本ある大きなケヤキの大黒柱の1本

日本酒が静かに眠る貯蔵庫。中央に見えるのは、4本ある大きなケヤキの大黒柱の1本

酒米20俵を一気に蒸すことができるという大きな釜を見ながら進んだ先は、日本酒が静かに眠る貯蔵庫になっています。50数年前に建てられたというこの建物、どんなに暑い夏でも24、5度以上にはならない独特の屋根構造になっているのだとか。巨大タンクがずらりと並ぶ様子は圧巻のスケールでした。

酒蔵見学のあとは直売所で試飲。こちらは純米生原酒の「深酒冬―MIST―」というお酒

酒蔵見学のあとは直売所で試飲。こちらは純米生原酒の「深酒冬―MIST―」というお酒

“日本酒のことをもっともっと知って好きになって欲しい”という藤居社長の熱量たっぷりのお話を聞きながら店舗事務所に戻ったら、お楽しみの利き酒タイムです。さまざまな味わいのお酒を少しずつ味見できるのは酒蔵見学ならでは。1世紀前に降った雨で作られた日本酒、これはまぎれもなく自然からの贈り物ですよね。

藤居本家の夏の冷酒ずらり。お好みを見つけてお土産に

藤居本家の夏の冷酒ずらり。お好みを見つけてお土産に

麻に親しむ! ワークショップでストラップ作り

どの色を使おうかな? 先染めのリネン糸でストラップ作り体験をしました

どの色を使おうかな? 先染めのリネン糸でストラップ作り体験をしました

続いては藤居本家から2キロほどのところにある近江上布伝統産業会館へ。ここは室町時代から続く伝統産業「麻織物」について、知って、学んで、体験できる施設です。かつて近江と呼ばれていたこの土地には、麻織物の“仕上げ”を行う工場が数多くあるといいます。なぜなら織り上がった反物の仕上げ加工には大量のきれいな良水が必要だから。鈴鹿山系から湧き出る水が豊富にあるこのエリアは、“洗い”などの仕上げ作業をするのに最適な場所なのです。

苧麻(ちょま)の表皮から繊維を取り出す「苧引き(おひき)」という作業

苧麻(ちょま)の表皮から繊維を取り出す「苧引き(おひき)」という作業

麻の一種である苧麻(ちょま)を畑で栽培している近江上布伝統産業会館では、苧麻が成長する期間限定で、手作業で繊維を取り出して糸を作り、機織りをする一連の作業を体験することができます。そのほかにも地機(じばた)や高機(たかばた)の織りや、糸づくり体験も。

「ここに来られる方は根っからの“麻好きさん”です。産地を訪ねて、産地でしか見られないものを見、産地でしか買えないものを買いたいという方々が全国からお見えになります。今日はフランスから近江上布を学びたいと女性のお客様もいらっしゃっているんですよ」。滋賀県麻織物工業協同組合の組合理事も務める田中由美子さんはそう話します。

江戸時代から伝わる地機で機織りの実演

江戸時代から伝わる地機で機織りの実演

純国産の麻糸を自分の手で作る体験ができるというのはとっても貴重な場所。ちなみに手作業で1日にできる糸の量はわずか5グラム。昔の人達は気の遠くなる作業を続けてきたのだなぁと思いますよね。

「虹色コースター」の手織り体験は所要時間約30~45分で参加費は1000円(要予約)

「虹色コースター」の手織り体験は所要時間約30~45分で参加費は1000円(要予約)

近江上布伝統産業会館では現在、リネンの糸を使った「虹色リネンストラップ」と「虹色コースター」作りのワークショップを開催中です。リネンは麻の中で最もなじみのあるポピュラーなものですが、もともとはヨーロッパの麻で、日本には明治期から入ってきました。一方で日本古来の麻は、前述した苧麻(ラミー)と大麻(ヘンプ)。その歴史や背景を教えていただいて、奥深い麻の世界をもう少しのぞいてみたくなってしまいました。併設する麻ショップ「麻々の店」には洋服やキッチングッズ、寝具など麻小物がずらりと並んでいて、こちらも必見です。

さわやかな黄緑色をチョイスしてストラップ作りを体験しました。2色混合も可能です(参加費500円、要予約)

さわやかな黄緑色をチョイスしてストラップ作りを体験しました。2色混合も可能です(参加費500円、要予約)

おいしいコーヒーにはやっぱりおいしい水! UCC滋賀工場のファクトリーツアー

1969年に世界初の缶コーヒーを生み出したUCCの創業者は上島忠雄氏。上島珈琲カンパニーを略して“UCC”です

1969年に世界初の缶コーヒーを生み出したUCCの創業者は上島忠雄氏。上島珈琲カンパニーを略して“UCC”です

3カ所目はUCC上島珈琲滋賀工場での工場見学です。最初に2本のスペシャルムービーで、滋賀工場の概要と、ハワイとジャマイカにある直営農園で1本の苗木を育てるところから始まるUCCのコーヒーづくりについて学びます。この滋賀工場では厳選されたコーヒー豆だけを粉砕。その後抽出に使用する水は、コーヒー本来のおいしさを引き立たせるために鈴鹿山系の天然水を使用しているのだそう。ここでも愛荘町のおいしい水が役立っていました。

UCC滋賀工場内にはコーヒーの木も。赤くなった実の皮や果肉を取って乾燥したものがコーヒー生豆。それを炒るとコーヒー炒り豆(レギュラーコーヒー)となります

UCC滋賀工場内にはコーヒーの木も。赤くなった実の皮や果肉を取って乾燥したものがコーヒー生豆。それを炒るとコーヒー炒り豆(レギュラーコーヒー)となります

「カップから農園まで」――。1杯のコーヒーのために苗木を育てるところからスタートしているUCCのこだわりを頭に入れたところで、いよいよ工場内に潜入です。滋賀工場にはキャップの開け締めのできるリキャップ缶タイプとPETボトルコーヒーの2つの製造ラインがあるとのこと。

まるで地球防衛軍の基地みたいな扉! ファクトリーツアーは合言葉でこの扉を開けるところからスタート

まるで地球防衛軍の基地みたいな扉! ファクトリーツアーは合言葉でこの扉を開けるところからスタート

コンシェルジュさんの後について進み、ガラス越しに工場内を見学します。まずはコーヒー液を作る抽出・調合工程。UCCではコーヒー豆を粉砕後、24時間以内にていねいにドリップしています。続いてリキャップ缶の充填(じゅうてん)室、そしてPETボトル充填ラインと続きます。今回私はプリフォームと呼ばれる透明な筒が、工場内でボトル形成されてPETボトルになるのだと初めて知って“目からウロコ”状態! たしかに口の部分は同じ形ですよね。

コンシェルジュさんが右手に持っている容器はPETボトルの元となるプリフォーム。小さいため輸送に有利、その結果CO2の削減にも貢献しているのだそう

コンシェルジュさんが右手に持っている容器はPETボトルの元となるプリフォーム。小さいため輸送に有利、その結果CO2の削減にも貢献しているのだそう

見学のあとはコーヒーの飲み比べも。ひとつは「コーヒー濃縮エキスに水を加えたもの」、もうひとつはUCCで採用している「レギュラーコーヒー100%で作ったもの」。わからなかったらどうしよう?と内心ドキドキしましたが、実際飲んでみると口の中に広がる香りがまったく違っていて、レギュラーコーヒーのほうが断然おいしい! 鈴鹿山系の天然水100%で抽出された、UCCこだわりコーヒーのおいしさが堪能できる楽しいファクトリーツアーでした。

ふだん飲んでいるUCCコーヒーがどうやって作られているのかを知ると、味わいも変わりそう

ふだん飲んでいるUCCコーヒーがどうやって作られているのかを知ると、味わいも変わりそう

★藤居本家
滋賀県愛知郡愛荘町長野793
http://www.fujiihonke.jp/
藤居本家の酒蔵見学の所要時間は40~50分。7日前までに要予約。※ガイド役は藤居社長でない場合も。

★近江上布伝統産業会館
http://asamama.com/
各種体験については、HPの「近江上布伝統産業会館について」の中にある「体験案内」をご覧ください。

★UCC上島珈琲 滋賀工場ファクトリーツアー
https://www.ucc.co.jp/factory/
所要時間は約80分(無料)。見学は完全予約制です。

こだまゆき

フリーライター 知らない土地での朝食がなによりも楽しみなフォト派のライター。iPhoneで撮るのも一眼レフで撮るのもどちらも好き。自由で気ままな女性ならではの目線で旅のレポートをお伝えしています。執筆業は旅関連の他、デジカメ、雑誌コラム、インタビューなど。趣味は顔ハメパネル。

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