20代ミュージシャンが語る“譲れない価値観”
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ゆるふわギャングが生み出す世界に向けた“爆弾”「負の感情をポジティブに爆発させる」

 ゆるふわギャングは2016年にRyugo IshidaとNENEが出会って、プロデューサーのAutomaticとともに結成されたヒップホップユニット。2人はYouTubeでMV「Fuckin’ Car」を発表した後、クラウドファンディングを利用して1stアルバム「Mars Ice House」を制作。音楽面のクオリティーの高さや、独特なキャラクターなどが評価され、一躍話題の存在となった。近年、音楽シーンの世界的なトレンドを作り出しているプロデューサー、ディプロが、SNSで「Fuckin’ Car」のPVを紹介したことも手伝って海外での評価も高まった。 2人を見ているとまるで悩みなどなくて、ただ前に進んでいるように思える。今回はリリースされたばかりの2ndアルバム「Mars Ice House II」の制作の過程をベースに、彼らの足跡や創作に向ける思いを聞いた。

隕石がぶつかって地球ができたような感じ。出会うまでは石ころだった

ゆるふわギャングが生み出す世界に向けた“爆弾”「負の感情をポジティブに爆発させる」

――2人はそれぞれソロアーティストとしても活動していましたが、ゆるふわギャングを結成してから急激に存在感を増した印象があります。

NENE 私は小さい頃から自分は絶対にスーパースターになると思ってた(笑)。いろんなことに対して自信だけはあったんです。そもそもみんなと同じことをするのが無理で高校は中退しました。小さい頃から、こうと決めたら曲げない性格。でも、人生はそんなトントン拍子にはいかなくて、やりたくない仕事もしました。

けどリュウ君と出会ってすべてが変わった。隕石がぶつかって地球ができた、みたいな感じ。それまでの私は本当にただの石ころみたいだった。彼と出会ってはじめて音楽に対して真剣になれました。

Ryugo Ishida(以下Ryugo) 俺もNENEと出会って光が見えた。それまでもやりたいことに向かってずっと突き進んでいたけど、自分を取り巻く環境はどこか暗闇に包まれていた。地元の友達はすぐに警察に捕まったり、死んじゃったり、とにかくネガティブなことばかりで。自分自身もそこから抜け出せなかった。

でもNENEと出会って、すべて明るく見えるようになったし、ポジティブになった。(彼女は)俺の中心。今はNENEがいて、やりたいことがある。 NENE 「Fuckin’ Car」は自分たちの頭の中にあることをそのまま表現しました。2人で同じことを考えて、それが曲になって、映像になった。その経験がめちゃくちゃ気持ち良くて。

「Fuckin’ Car」みたいなことをやっている人は他に誰もいなかったし、自分たちも自信満々だった。一番イケてると思ったし。この曲を作ってから、私たちは自分たちの頭の中にあるイメージをできるだけ忠実に再現することにフォーカスするようになりました。今は作品のアイデアも尽きません。

――確かに「Fuckin’ Car」はサウンドに斬新さがあったし、MVや2人のファッションも当時のヒップホップの常識ではありえないものでした。新アルバムでもシーンの流行などを無視して、独創的な作品を作られています。思いついたアイデアが実現不可能だと思うことはありますか?

NENE ない。

Ryugo 仮に難しいアイデアを思いついたら、実現するためにどうしたらいいかを考えます。たくさん曲を作って、いっぱい議論して、さらに作る。そんなことを繰り返しているとふとした時にできることがある。

NENE 今回のアルバムでは私たち2人に加えて、プロデューサーのAutomaticさんとestraさんも含めて、全員が本当に納得するまでとことん意見をぶつけあいましたし(笑)。制作はアメリカで行いました。私たちとAutomaticさんの3人で、2回に分けて2週間ずつ。1回目は調子がよかったんですが、2回目の時は行き詰まってしまって全然曲が作れなかった。

そこでAutomaticさんが「気分転換にレコードをジャケ買いしに行こう」と提案してくれたんです。ハリウッドにはいろんなジャンルのCDやレコードがめちゃくちゃ置いてあるアメーバミュージックという巨大なレコード店があって、そこにみんなで行きました。私は全然知らないジャンルのアーティストのCDを買いましたが、スタジオに帰って聴いたらそれがすっごく良かった。

Ryugo そしたらスタジオでエンジニアをしてくれていた南アフリカ出身の女性が教えてくれたんだよね。

NENE その作品のアーティスト名は南アフリカの言葉で「正解」って意味なんだよって。もうそれでみんなブチ上がって、その作品をサンプリングして一気に「Antwood」という曲が作れました。どの出会いもそうだけど、私は出会いを手繰り寄せる努力も大事だと思う。リュウくんと出会うまではそういうことはそんなに意識してなかったけど、今はいろんな出会いがあって今の私たちがあると感じます。

世界で勝負するための“爆弾”をアメリカで作る

――レコーディングで訪れたカリフォルニアは、2人にとってどんな環境でしたか?

NENE とにかくスケールが大きい。道は広いし、建物や植物はデッカいし。あとみんなアバウト(笑)。私たちも日本にいる時よりおおらかな気持ちになれて、視野もすごく広くなった気がします。

Ryugo 俺は今回が初めてのアメリカだったので、単純にすごくテンションが上がってましたね。ヒップホップといえばアメリカだし、ずっと憧れていた。そこで制作できたのも、やはり今のレーベルと出会えたことが大きい。世界で勝負するための“爆弾”をアメリカで作る、そんな気持ちでした。

アメリカで思い知ったのは、みんなやりたいことに対してすごく必死ということ。路上でも、アパートでも、スタジオでも、自分たちができる場所で表現してる。どこにいても必ず音楽が聞こえてきた。それが当たり前で。自分たちも日本にいる時は必死だったけど、そのさらに上を見たというか。刺激になりましたね。

NENE アメリカで音楽やってる人はみんなすごくポジティブだったよね。それでいてハングリーでもある。とにかく真面目でした。ロスのスタジオには違う国のビートメーカーもいて、その人に「ちょっと今曲ができたから聴いてみてよ」って話しかけると、みんなすごく真面目に聴いて、意見をくれたりもした。

そういえば、私たちが制作していたスタジオは夜しかボーカルレコーディングができなかったんですよ。なぜかというと、すぐ近くに教会が昼間に賛美歌を大音量で流してるから。スタジオにも防音設備はあるけど、それでもレコーディングに影響が出ちゃうくらいの爆音で(笑)。それも日本では絶対に経験できない。制作がうまく進まない時、賛美歌を聞いて自然と気持ちが癒やされたこともありました。アメリカは私たちに合ってる。

ネガティブな感情を好きなことにぶつけてポジティブに爆発させる

ゆるふわギャングインタビューカット

――2人からはすごくポジティブな印象を受けますが、ネガティブな感情は内面から湧き上がるだけでなく、外部からもたらされることもありますよね? そういう場合はどうやって対処していますか?

NENE いっつもイライラしてますよ(笑)。テレビをつけたら、ニュースでずっと同じことばっかりやってるし。おじさんとおばさんの不倫とか本当にどうでもいい。私は社会のこととか全然知らないけど、それでももっと伝えなきゃいけない大事なことがあるんじゃないの?って思う。

Ryugo 俺は地元の友達が警察に捕まっちゃったりすることが多くて。なんでそうなっちゃうのか、考えると、もどかしい気持ちになる。みんな生きるのに必死で、生活するためにお金が必要で、ネガティブなほうに行ってしまう。(自分の地元は)そういう環境なんです。でもそういう友達のためにも、俺は頑張ろうという思いも今回はすごくあった。

世の中には自分ではどうすることもできないことがたくさんある。でも結局、感情は自分でコントロールするしかない。ネガティブな気持ちになって、八つ当たりして何かを壊したり傷つけたりすることが一番良くないと思う。そこで我慢して、あえておいしいものを食べに行くとか、曲を作るとか、好きな映画を見るとか、なんでもいいけど、そのたまっている負の感情を楽しいことで爆発させなければいけないと思う。俺たちの場合は、それがたまたま曲作りというだけ。自分のやりたいことにぶつけて爆発させている。

NENE 日常の本当にくだらないイライラもね。私たちは全部創作にぶつけています。昔は落ち込むこともたくさんあったけど、過去にとらわれてしまうことは無駄だと思うようになりました。大事なのは今この瞬間というか。実際今回のアルバムは、作った時の感情をできるだけありのまま表現することにこだわったし。

――2人のように感情をぶつける対象が見えている人はいいですが、それが見つからない人もいるのでは?

Ryugo そういう人はたくさんいると思う。実際周りにもたくさんいるし。やりたいことが見つかんないなら見つかるまで探すか、待つしかないと思う。自分が好きなことをやってる時に、「これだ」と思う瞬間は誰にでもあると思うんですよ。それがすごく大事かなと思う。「これなんじゃないか」と思ったら、それをやればいい。やってみてダメだったらしょうがない。やりたいことがあって失敗を恐れている人には、「失敗は絶対するものだと思う」というのは知ってもらいたいかな。

NENE 失敗しないと次にはいけないし。やりたいことがあって「いまそれをできない」みたいにいうのはただの言い訳で。やりたかったらやればいい。 ――では最後に2人の譲れない価値観を教えてください。

(2人そろって) 自分自身。

Ryugo あは(笑)。

NENE ふふふ(笑)。  

ゆるふわギャングインタビューカット

Ryugo 俺ら自身、まだ自分が何なのか模索中です。(今は自分たちを)信じて前に進んでいきたい。そしたらいつか自分がどういう人間なのかがわかってくると思う。

(文・宮崎敬太 写真・江森康之)

 

プロフィール

ゆるふわギャング
MCのRyugo Ishida、NENE、ビートメーカー・Automaticによって構成されるヒップホップユニット。2016年結成。17年4月に1stアルバム『Mars Ice House』、18年7月に2ndアルバム『Mars Ice House II』をリリース。クールなサウンドとビジュアルで海外メディアからも注目を集める

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