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京都ゆるり休日さんぽ
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本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

夕飯の買い物の帰りに、おもしろそうな映画のチラシを見つける。雨宿りに駆け込んだアーケード街に映画館があり、普段なら選ばないような映画を1本見ることにする。そんなふうに日常の時間の延長線上にある、映画・書店・カフェが一体となったカルチャースポットが、京都・出町柳の商店街の一角にあります。

本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

入り口付近には公開予定の映画のチラシがぎっしり

「出町座」と名付けられたこの施設があるのは、古き良き京都の商店街の中でもとりわけユニークな、出町桝形商店街。全長164メートルのこぢんまりとしたアーケード街ながら、鮮魚店、八百屋、洋品店など昔ながらの個人商店が軒を連ね、頭上を泳ぐサバのモニュメントやパンチの効いたキャラクターの看板などが個性的な商店街です。地元の買い物客でにぎわいながらも、鴨川の対岸には京都大学やサブカルゾーンの左京区があることから、行き交う人々に漂うのはどこかフリースタイルな雰囲気。そんなムードに呼応するように、昨年末のオープン以来、出町座はたちまち商店街の顔になりました。

本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

商店街の一角。1階はカフェと書店、上映室は2部屋

セレクト書店「CAVA BOOKS(サヴァ・ブックス)」、カフェ「出町座のソコ」とともに、2シアターで1日10作品前後の映画を上映する出町座ですが、書店やカフェを併設しているというよりは、1つの空間に混在しているといった印象。カフェのメニューの多くは上映室に持ち込みできるほか、上映までの空き時間や映画の余韻にひたるひと時を、本やコーヒーとともに過ごすことができます。

本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

芝漬け、ピクルス、生のきゅうりをサンドした「3種のきゅうりサンド」(600円・税込)

もちろん、カフェや書店だけの利用もできます。取材時は、午後から台風が接近するという嵐の前の静けさ。学校が休校になったと思われる小学生の男の子とお父さんが出町座を訪れ、カフェのカウンターに並んで座りながら、雨が降り始めるまでのひと時、それぞれの本の世界を楽しんでいました。その背中を眺めながら、出町座を運営するシマフィルムの田中誠一さんは語ります。

本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

カフェカウンターの後ろの書棚にずらりと本が並ぶ

「『今、世界でこれがおもしろい』というクリエイティビティと、商店街を歩く主婦や子どもたちが胸の内に抱くものは、直結していると僕らは思っているんです。いい本に出合ったから、いい映画を見たから、その日の晩ごはんがちょっと豪華になる。近所にそんな場所があったら楽しいじゃないですか」

本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

地下上映室は42席。小規模ならではの親密感が魅力

田中さんは、廃校となった立誠小学校の元校舎を活用した「立誠シネマプロジェクト」を立ち上げ、街に根ざした映画の形を提供してきたメンバーのひとり。昨年7月に惜しまれつつ閉館し、移転先を探していたところ、この商店街の空き物件に出合いました。新たな形で京都のカルチャー拠点となるべく、クラウドファンディングによるサポートも呼びかけた結果、目標額の約3倍もの資金を集め、御所以北では数少ない映画拠点のオープンを実現させました。

本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

映画もカフェも券売機でチケットを購入するシステム

上映作品は、ミニシアターで口コミの人気を得てきたような作品もあれば、美しいアニメーション映画や、人気俳優と若手監督の話題作などさまざま。大型のシネマコンプレックスとは毛色が異なる編成ながら、マニアックに偏りすぎず、映画体験への間口を広げようとしていることが感じられます。

本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

関連書籍や京都のガイド本など閲覧自由のコーナーも

上映作品に合わせて、書店では原作や関連書籍はもちろん、書店員の感性でリンクさせたテーマの選書を並べ、好奇心の扉を次々とノックする仕掛け。映画館を出たあとも、映画の魔法が解けない小さなおまじないが、出町座のあちこちにかけられているかのようです。

本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

小劇場のような名前もノスタルジックな印象

「最近映画を見ていないな」という人も、映画が好きでたまらない人も、本とコーヒーだけを楽しみたい人も、一度、レトロな商店街の片隅にある出町座を訪ねてみてください。ここで時間を過ごすうちに、なんだか映画が見たくなる。初めての映画やいつかのデート、眠っていた映画館の記憶がよみがえってくる。好奇心と懐かしさが入り混じったそんな気持ちも、物語のスパイスになるはずです。ここで出合った映画や本が、誰かの一日をほんの少しあたためることを願っています。(撮影:津久井珠美)

【出町座】
https://demachiza.com/

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