スリランカ 光の島へ
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〈6〉私の座っていたイス、これから座るイス

大手新聞社の写真部に嘱託として3年在籍ののち、フリーランスカメラマンになった。フリーランスになったばかりの頃、仕事がないので昼間はいつでも仕事が受けられるように、繁華街のラブホテルの清掃員を夕方から朝までやったりしていた。だんだん仕事が入ってくるようになり、写真の仕事だけでも食べられるようになって単純にとてもうれしくて誇らしく思えた。その後は目の前の仕事を必死にやった。体調が悪くても絶対に顔に出ないように、仕事を断ることがないようにプライベートの予定も仕事優先で立てていた。

だって「つかんだ自分のイスを人に譲りたくないから」。言葉にするとすごく小さな人間のようで恥ずかしい。でも本当の気持ち。

  

編集者さんやデザイナーさんが使いやすい写真を撮るように(プロとして当たり前ではある)、自分の写真について強い主張はしないように。だけれどだんだん自分が作った自分を当てはめる枠に疑問を感じてきた。私はちゃんと個性が出ているカメラマンになっているのだろうか。自分のイスを守るために変わることを怖がっていないだろうか。きっと今のままでは私が必死に守っているイスは長くはもたない。だから新しい場所、スリランカでもう一回フリーランスになりたての頃のように挑戦しようと思った。ずっとカメラマンでいるために。

  

スリランカに移住してから出逢(あ)う人の国籍が今までと全く違う。その分いろんな価値観を耳にする。「1カ月の休暇を取ってスリランカ中を家族でドライブしながら回ってるんだ」「3カ月の休みを取って彼女と世界を旅してる。もちろん合間に仕事もしてるよ」。職業はエンジニアだったり、会計士だったり様々だ。そして自分のキャリアアップのために転職を臆することはない。いい条件であればさっと軽やかに職場を移る。

スリランカ人もそう。勤続が長い人は揺るぎない立場を築いていてプライベートな時間もしっかり確保する。彼らに共通して言えることは「私はこれができます」「私はこのスペシャリストです」と『自分キャッチコピー』があること。

実績ゼロのこのスリランカで今自分の写真を創(つく)っている。写真館では「お客様がこう撮ったら喜んでくれるかな」を最優先に。でもそこには、あなたの魅力はこういう風に見えますという私のフィルターを入れて。出かける時には新しいお店ができていないか、人気の場所はどんな感じなのか、自分の写真で何かできる可能性はないのか、いつも気にしながら歩いている。

ピンとくる場所や人には片言の英語でその場で売り込みすることもある。そのとき見せる写真は「これが私です」というものだけにして。そして若いクリエーターやアーティストとお金はなしで一緒に作品を作ったり。仕事につながることはとても少ないし、鼻がへし折れることも多々。でも不安で不安でどうしようもない時、「何度も写真見返しています」の一言でまた顔をあげられる。

いつか自分のどっしりしたイスを創りあげるために、スリランカに助けられながらもがく日々。

フォトギャラリーへ(写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)

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