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マンションの「普通」をめぐるドキュメンタリー『四谷コーポラス』

マンションの「普通」をめぐるドキュメンタリー『四谷コーポラス』

撮影/馬場磨貴

前職では都心で中古マンションを購入してリノベーションをしたいお客様に対して、リノベーションに向いた物件をご案内することをしていました。見極めるポイントはいくつかあるのですが、その中のひとつに、ゴミの集積所や駐輪場などの共用部分がどのように使用されているかを見ることがあります。それは、マンションがしっかり管理されているかの指標といえます。いくら新しいマンションでも管理がおろそかになっている物件は、修繕が計画的にされていない可能性もあり、あまりおすすめできません。

始まりは、1962年に制定された法律

1962年に制定された区分所有法(正式には建物の区分所有等に関する法律)は、一棟の建物を区分して所有権の対象とする場合の、各部分ごとの所有関係を定めるとともに、建物や敷地などの共同管理について定めた法律です。この法律により、管理規約の標準化、管理組合の組織化が進み、現在のマンションの「普通」ができ、分譲マンションブームをつくったとも言えるでしょう。

それでは、1962年以前のマンションはどうしていたのでしょうか? また現在の「普通」はどのように構築されていったのでしょうか? その答えが、今回紹介する本書『四谷コーポラス 日本初の民間分譲マンション 1956-2017』に書かれています。

四谷コーポラスは、タイトルにもあるように、1956年に建てられた日本初の民間分譲マンションです。同潤会アパートや日本住宅公団(UR)の団地は、公的住宅のため、建築の記録が残されてきましたが、当マンションは、民間による個人向けの分譲共同住宅だったため、これまでしっかりとした記録が取られてきませんでした。

本書では、建設当時の関係者にどのような背景でこの建物が生まれたのか。そして大きな特徴でもある「ローン販売」「専有部分と共有部分」「管理組合」など、現在の私たちの住まいの「普通」が、法律の制定を前に定められていったのか、当人から説明される貴重な資料になっています。

また、四谷コーポラスの住民が、どのような暮らしぶりをしていたのか、当の本人たちからイキイキとその様子が語られています。それは、気概をもった施工会社や設計会社によって、凝ったデザインと意欲的な間取り、豊かな共有空間が、どのように人々の生活になじんでいったのかが見て取れます。

歴史的功績のみでなく、多方面から一つの建物に対し光が当てられた類のないドキュメンタリーです。現在の大多数の分譲マンションの原型がさりげなく、しかし力強く記されています。

(文・嵯峨山 瑛)

>>おすすめの本、まだまだあります

嵯峨山瑛(さがやま・あきら)

二子玉川 蔦屋家電、建築・インテリアコンシェルジュ。 大学建築学科卒業後、大学院修了。専門は都市計画・まちづくり。 大学院在学中にベルギー・ドイツに留学し建築設計を学ぶ。 卒業後は、出版社やリノベーション事務所にて、編集・不動産・建築などの多岐の業務に関わる。

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