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清らかな白の陰影が心伝える 紙の品「かみ添」

清らかな白の陰影が心伝える 紙の品「かみ添」

光の角度で文様の見え方が変わる、美しい紙の品々

薄化粧をほどこすように、版木を使って紙に美しい文様を写す「型押し」という技法。唐紙(からかみ)などに用いられるこの技法で、つつましくも凛(りん)としたたたずまいの紙の品々を作るのが「かみ添(そえ)」の嘉戸浩(かど・こう)さんです。職人の町・西陣の一角にある小さなショップに並ぶのは、メッセージカード、ぽち袋、レターセットといった、手仕事の風合いが生きた定番の紙文具の数々。絵の具のノリや文様のかすれ具合もそれぞれ異なる手摺(ず)りの一枚は、大切な手紙や贈り物に使いたくなります。

清らかな白の陰影が心伝える 紙の品「かみ添」

和だんすや唐紙のアートパネルなどを配したシンプルな空間

とりわけ、かみ添の仕事で心奪われるのは、白に白で文様を重ねた意匠。微妙に色調の異なる白の重なりは、光を受けるとほのかにきらめき、文様が浮かびあがります。ふすま紙として用いられてきた唐紙は、ほの暗い空間の中でろうそくのあかりに照らされたとき、より美しく文様が浮かびあがる――。谷崎潤一郎の『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』のごとく、日本独自の光と影の美意識に由来しているのかと思いきや、嘉戸さんからはこんな答えが返ってきました。

清らかな白の陰影が心伝える 紙の品「かみ添」

白×白の作品。雲母(きら)で摺った文様は光を受けてきらめく

「白地に白というのは、唐紙の基本なんです。地色の白は紙の素の色ではなく、一面に胡粉(ごふん)という白の絵の具を引いています。それは、和紙の強度を上げ、紙肌が変色するのを防ぐため。その上に、雲母(きら)という貝を砕いた絵の具で文様を摺ります。紙を丈夫にするという目的から生まれ、日本の住環境にも合っていたのだと思います」

清らかな白の陰影が心伝える 紙の品「かみ添」

ふすまやついたてなどの作品も。光の具合で見え方も変わる

文化の成熟やデザインの多様化とともに、さまざまな色が使われるようになった唐紙。けれど、嘉戸さんは必然から生まれた白の美を大切にしています。奥ゆかしいたたずまいは、紙の質感や繊細な文様に見入るきっかけになり、贈る気持ちに控えめに寄り添う。清らかで凛とした白の表情は、聖夜の贈り物や新年のあいさつにも似合います。

清らかな白の陰影が心伝える 紙の品「かみ添」

色を用いた作品も。抽象的モチーフから古典柄まで多彩

文様は、嘉戸さん自身がデザインし、職人に依頼して版木を彫ってもらったり、既存のモチーフやクライアントからのイメージを元にアレンジしたり。そのため、作品はどこか異国情緒や現代の感性をまとい、伝統工芸であることを感じさせない自由さがあります。「この仕事に携わる前はグラフィックデザインをやっていました。もともと紙と印刷が好きだったので、僕にとっては、型押しも印刷技術の一つ。現代の特殊印刷と同じ文脈にあります。手仕事の品というよりも、一風変わった印刷のテクスチャーや発色をおもしろがるように見てもらえたら」

清らかな白の陰影が心伝える 紙の品「かみ添」

型押しの道具。色をふわりと転写する技法は唐紙ならでは

「ふるい」と呼ばれる円形の道具に絵の具を塗り、版木をなでるようにして色を移したら紙をのせ、文様を摺ります。この時、版画のようにバレンでごしごしと擦ることはありません。心持ち手を添える程度に押さえ、絵の具を紙の上に写しとる。和菓子の蜜がけのように、紙の上にふわりとのるような唐紙独特の質感はこうして生まれます。人の手でしか生み出せない風合いを持ちながらも、原本からたくさんの複写を作り出すという目的は、たしかに印刷そのもの。そうとらえるとこの美しい紙との距離はぐっと縮まり、同時代のすぐれたデザインの一つなのだと実感します。

清らかな白の陰影が心伝える 紙の品「かみ添」

繊細で控えめな意匠だからこそ、ずっと眺めたくなる

封を開き、つづられた言葉を便箋(びんせん)やカードの意匠とともに味わうこと。心づけやお祝いのぽち袋に、光の角度でようやく見えるほどのさりげない絵柄があしらわれていること。紙のコミュニケーションツールを使う機会が少なくなった今だからこそ、そんなふうに、紙そのものがギフトになるようなカードや封筒を選んでみてはいかがでしょう。壁や棚にそっと飾っておきたくなるような手紙は、「心を伝える」という役目を果たした後、受け取る人の暮らしに思わぬ彩りをもたらすかもしれません。(撮影:津久井珠美)

かみ添
http://kamisoe.com

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