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今もっとも流行語を生み出しそうなバンド!? ヤバイTシャツ屋さんの卓越した言語センス

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音楽バラエティー番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で披露するロジカルな歌詞解説が話題の作詞家いしわたり淳治。この連載では、いしわたりが歌詞、本、テレビ番組、映画、広告コピーなどから気になるフレーズを毎月ピックアップし、論評していく。今月は次の6本。

 1 “かわE 越して かわF やんけ!”(ヤバイTシャツ屋さん『かわE』/作詞:こやまたくや)

 2 “チャプター飛ばしたいわー”(サバンナ 高橋茂雄)

 3 “安心対応”(ご長寿早押しクイズ)

 4 “平成最後”

 5 “でも過去は過ぎたことです!”(滝沢カレン)

 6 “ぐーっと$?□&▽%+”(前田日明)

最後に日々の雑感をつづったコラムも。そちらもぜひ楽しんでいただきたい。

いしわたり淳治 今気になる六つのフレーズ

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「ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん」「そんなの関係ねぇ!」「なんでだろう」「あったかいんだからぁー」など、芸人による流行語はすこし考えただけでもいくらも思いつく。でも、かつて「ちょっと待って」というフレーズは山口百恵さんの『プレイバックPart2』のほうが印象が強かったはずである。

いつの頃からか、世の中からいわゆる“流行歌”というものが激減して、それに比例するように音楽の歌詞から流行語が生まれなくなってしまった。日常生活で使い勝手のいい印象的なフレーズを生み出すのは決まって芸人たちで、本職であるはずのミュージシャンが作り出す音楽のほとんどはシリアスな言葉ばかりが並ぶようになってしまった。

シリアスが全盛だった日本の音楽界において、いわゆるおふざけ的な要素の強い音楽は長い間イロモノ扱いだった。たとえ誰かに「知ってる? あのバンドの曲、超面白いんだよ」と勧められても、じゃあそのおふざけのような音楽にわざわざお金を出して買ったり、レンタルしたりするかというと、なかなかそういうわけにはいかず、いまいち広まりづらかった。

しかし無料動画サイトや定額制音楽配信サービスで音楽を聞くのが主流になったことで、今はイロモノの音楽であってもノーリスクで簡単に試し聞き出来るようになった。イロモノ扱いされるような音楽というのは、お笑い芸人の歌ネタのような歌も多いから、これはつまり、人々の音楽の聞き方が変わったことで、音楽から流行語が生まれる可能性が高まった、と言えるのではないかと思う。

ヤバいTシャツ屋さんの新曲『かわE』。昭和のダジャレのような「かわE 越して かわF やんけ!」「恥ずかC 越えて 恥ずか Dやんけ!」という表現は、現代の日常生活でも使い勝手がすこぶる良くて、これが広く浸透したら流行語の可能性もあるのではないかしらと、一聴して思った。この曲に限らず彼らの曲は日常生活で使い勝手のいいフレーズが満載だ。今一番流行語に近いバンド、ヤバT。このままいつまでもすてきにふざけ続けて欲しいなと思う。

フレーズの画像02

12月30日放送のテレビ朝日『アメトーーーーーーーーーーク年末5時間スペシャル!!』運動神経悪い芸人でのこと。恒例の野球企画で、キャッチャーの東京03豊本明長さんが、ピッチャーの笑い飯西田幸治さんのヘロヘロの投球を何度も後逸しては小走りでボールを拾いに行く姿をベンチで見ていたサバンナ高橋茂雄さんが、「チャプター飛ばしたいわー」とつぶやいた。素晴らしい表現だなと思った。

目の前で何度も繰り返されるもの、例えば大相撲中継で取り組みの前に力士が何度も見合っては離れる動作を眺めている時のあの気持ちも「チャプター飛ばしたいわー」が最適なのだなと思った。まだ名前のなかった感情に初めて正確に名前がついた感じがした。

飲みに行くと酔って何度も同じ話をする人がいる。あの時の気持ちも言葉にすると、「チャプター飛ばしたいわー」なのかもしれない。何度も聞いたからと言って「その話、さっき聞きました」と言うのは冷たいし、「へえー、そうなんですね!」なんて初めて聞いたようなリアクションをすると、話が勢いづいて長引いたりする。話している方は、酔って覚えていないから同じ話をしているわけで、だからきっとこちらのリアクションもあまり覚えていないだろう。「なるほどー! (横を向いて小声で)ああ、チャプター飛ばしたいわー……。ああ、そうなんですね、へえー!」なんて受け答えができたら、同席者たちのやるせない気持ちもすこし和らげてあげられるかもしれない。

今もっとも流行語を生み出しそうなバンド!? ヤバイTシャツ屋さんの卓越した言語センス

12月29日放送のTBS『爆笑!さんまのご長寿グランプリ2018』ご長寿早押しクイズでのこと。「正義のヒーロースーパーマンの胸に書かれている文字は何でしょう?」という問題に、 高齢の出場者のひとりが「安心対応!」と答えた。すごい発想である。笑ったと同時に、はっとさせられた。お年寄りはヒーローにもそれを求めるのかと。

私の住む街の商店街には商品のほとんどない小さな電器屋さんがある。あるのはテーブルと丸椅子で、そこにお年寄りが訪れては、話をしながら、パンフレットで説明を受けて、商品を取り寄せて販売しているらしい。最新機種はどんどん使い方が複雑になっていく。新しい“街の電器屋さん”の形だなと思った。価格競争では大手家電量販店に勝てないのだから、商品として「安心対応」を提供する。今の時代、電器屋さんに限らず、どんな些細な相談にも親身になって対応してくれる「安心」こそが、お年寄りのいちばん求めている商品なのかもしれないと思った。今もっとも流行語を生み出しそうなバンド!? ヤバイTシャツ屋さんの卓越した言語センス
最近やけに「平成最後」という言葉を耳にする。これほど騒がれると、最後、最後って、最後だから何なのだ、という気持ちがしてくるけれど、言葉として妙に新鮮な響きがあるのも否めない。

では、昭和生まれの私が「昭和最後」の何かをひとつでも覚えているだろうかと考えてみると、やはり何も思いつかない。ほーら、やっぱり。やんや騒いでいるけれど「平成最後」に何も価値がないじゃん、と言いたいところだけれど、いや待てよ。それはすこし早合点かもしれない。

というのも天皇退位による改元と皇位継承前の新元号公表はいずれも憲政史上初めてである。つまり昭和のときは時が過ぎてから「思えばあれが昭和最後のクリスマスだったな」というように、どれも後から回顧するものだった。だから記憶も曖昧になっているのだと思う。明確に「これが平成最後のクリスマスだ」「これが平成最後の正月だ」と思って過ごしたのは、明治以降は今回が初めてということになる。だから、もしかしたら「平成最後の〇〇」を、私たちは案外この先も覚えているのかもしれない。まあ、こればっかりは、時が経ってみないと分からないけれども。

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1月2日放送のテレビ東京『滝沢カレンのわかるまで教えて下さい!』でのこと。伝統文化評論家・岩下尚史さんに正しいお正月の過ごし方を教わっていた滝沢カレンさんが、途中から「新しい正月の過ごし方があってもいいんじゃないですか?」「どうして過去にこだわらなければならないんですか?」と講義を全否定し始め、最終的には「でも過去は過ぎたことです!」とぴしゃりと言い放った。笑った。こんな無茶苦茶なMCは見たことがない。普通に考えたらありえない展開だけれど、逆にこの彼女のまっすぐな発言が、見る者に「まあ、たしかに。そもそもなんで伝統って守る必要があるんだっけ?」という疑問を投げかけ、人々に考えるきっかけを与えたことは間違いないと思う。世代間のギャップがどんどん広がって、年上からの説教臭い話は敬遠される昨今、こういう笑える切り口での問題提起って、これからとても大事なことではないかしらと思った。

今もっとも流行語を生み出しそうなバンド!? ヤバイTシャツ屋さんの卓越した言語センス
12月29日放送の日本テレビ『有吉反省会年末SP』でのこと。元プロレスラー前田日明さんの若かりし頃の試合後のマイクパフォーマンスやインタビュー映像が流れ、あまりの滑舌の悪さに画面のテロップが記号だらけになっていた。VTRを見終えたあと、有吉さんが「ご自身は分かりますか?」と尋ねると、前田さんは「分からないですね」と即答した。驚いた。

ものすごく字が下手な人のメモは、他人は読めなくても本人はすらすら読めるものだ。話が下手な人の話も、他人には伝わらなくても、自分では何を言っているかは当然分かっているものだろう。

そんな風に、プロレスラーの滑舌も、他人には分かりにくくても、自分は聞き取れる類のものだと思っていた。でも、違った。へえー。やっぱり、あれって自分でも聞き取れないのか。じゃあ、その謎の言葉に拳を突き上げて歓声を上げていたプロレスファンは、いったい何にリアクションしていたのだろう。そう考えると、言葉の領域を越えた、ものすごくピュアで美しい、心と心のコミュニケーションだなあと思った。

《mini column》寝癖はじめました。

2019年が始まった。新年になると何か目標を立てなければならないような気がしてくるけれど、年が変わったからといって自分を変えなければならない道理はないわけで、思い立ったが吉日じゃないけれど目標なんてのは掲げたいと思った時に掲げたらいいのだと思うことにして、いつからか無理に新年の目標を絞り出すことはやめにした。むしろ、前々から変えたいと思っていたのは、自分自身よりも枕のほうだったので、新年早々買い換えた。

もしかしたら自分の首だの肩だの背中だのの骨格が特殊な形状をしているのではないかしらという気がしてくるほどに、なかなかしっくりくる枕が見つからなくて、いっそのことオーダーメイドしようと思ってそういう店に行ってみるのだけれど、今度は選択肢が多すぎて、何から何までどうにでもなるのに本当にこれでいいのか、という自問自答がやってきて、結局決め切れないまま保留して、元のしっくり来ない枕で寝続けていた。当たり前だけれど眠っているときは意識がないわけで、意識がない間にしっくりくるものを、ばりばりに意識のある状態で選ぶというのは、なんとも難しいことだ。

新しい枕は、正月にふらっと訪れた田舎の寂れたショッピングセンターの片隅の寝具売り場で、なんとなく衝動買いした。その夜から使っているけれど、いい感じだ。ずいぶん長い間忘れていたすっきり目がさめるという感覚を思い出した感じがするほど。

でも、ひとつ気になるのは、これまでほとんど出来ることのなかった寝癖が枕を変えて以来毎朝かならずド派手に出来ているということで、これはもしかして枕が合わずに、寝ている間にウーウーとうなされ、ベッドの上をぐるんぐるんのたうちまわっているからなのではないだろうか。私は本当に安眠できているのだろうかと不安になってくる。いやはや。無意識の間に使うものを意識的に選ぶのは難しいな、と毎朝やけに芸術的な形に仕上がった寝癖を直しながら思う。    

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