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猫と暮らすニューヨーク
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九つの命をもつ、おじいちゃん猫

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Marco(マルコ)17歳 オス メインクーン
飼い主・照明メーカーのRoll&Hillで働くBrian Zbichorski(ブライアン・スピホルスキ)さんと、家具や照明のデザインスタジオで働く、Laura Schlifer(ローラ・シュライファー)さんカップル。ブルックリンのキャロルガーデンにあるアパートメントで暮らす。

「子どもの頃はひどいアレルギーで、花粉、ほこり、もちろん猫もだめ。母も同じ症状だったから、猫を飼うことも、猫を好きになる機会もなかったんです」。

そう話すのは、メインクーンのオス猫マルコと、もう10年も一緒に暮らすローラさん。きっかけは、学生時代。ルームメートが猫を飼っていたことから、猫が身近にいる暮らしにすっかり魅了されてしまったという。「猫という生き物は、家の中における静かなエネルギー。不可欠な存在感だと感じたんです」。幸いにもアレルギーの発症はなく「どうやら克服してしまったみたい」とローラさん。その後、保護施設から7歳になるマルコを譲り受け、一緒に暮らし始めた。

一方のブライアンさんは、猫と親しみながら育った愛猫家。フレンドリーなマルコとはすぐに打ち解け、ローラさんたちと共同生活をするようになって2年が経つ。

御年17歳。歳(とし)をとり、動きが少しずつ緩慢になって、最近は寝てばかりいるというマルコだけれど、相変わらず2人のそばで過ごすことが至上の喜び。ソファやベッドでは隣に寄り添い、冬になると2人の毛布のなかにもぐりこんで、何時間もすやすやと眠る。特にお気に入りなのは、ブライアンさんが座っていた場所。ソファからブライアンさんが立ち上がると、即座にその場所を奪うのだとか。ブライアンさんには、ぬくもり以外にマルコをとりこにする何か、があるのだろうか……。

九つの命をもつ、おじいちゃん猫

暖かな季節は窓のところに座って鳥を眺めたりもするけれど、冬は寒いし、もうおじいちゃんだし「丸まって眠るにかぎるんじゃよ」(マルコ)

マルコの謎な行動はほかにもある。例えばローラさんの帰宅時。「玄関のドアを開けると、真っ暗な部屋のなかで、マルコがレコードプレーヤーの上に静かに座しているんです。まるで銅像みたいに。いったい何のために、どのぐらいの時間そこにいたんだろうって、すごく不思議」(ローラさん)。また、なぜか人間の肌が嫌い。ブライアンさんがボクサーショーツ一枚の姿でベッドに横になっていたら、肌の部分を避けるべく、狭いショーツの上だけに座ろうと必死になっていたとか。「座るためのスペースはたくさんあるのに!」と笑う2人。人間には理解できないことばかり。それが猫なのである。

九つの命をもつ、おじいちゃん猫

マルコが保護施設に保護されるまでの7年間、いったいどんな暮らしを送っていたのかは謎のまま。「九生あり」のマルコのこと。きっと波乱に富んだ日々だったはず……。

ところで猫には、“A cat has nine lives(猫に九生あり。猫にはたくさんの命があるという意味)”という言葉があるけれど、「マルコこそ、その典型」とローラさん。ここ数年の間に、心臓病、腎臓病など、数々の病気に罹患(りかん)し、手術もふたつ経験。何度も命拾いをして、見事な復活を遂げた。病気に罹(かか)らずとも、そもそも猫は好奇心旺盛な動物。「他の動物だったら命を落とすようなことをたくさん経験する。だから九つもの命が与えられたのかもしれないですね。僕もそうありたいなあ」とブライアンさん。

病気や手術に負けず、優しく、穏やかな性格のまま、長寿の域に達したおじいちゃん猫のマルコ。「一緒に過ごせる時間があとどれだけあるか。そのことを考えない日はありません」と、マルコを撫(な)でながら静かに話すローラさん。保護施設から与えられたマルコという名は、恐らくマルコ・ポーロから取ったもの。歴史的な冒険家よろしく、マルコと2人の飼い主との旅が、まだしばらく、できるだけ長く、続くことを願っている。

(写真・前田直子)

>>写真のつづきはこちら

連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

ローラさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/exclamationpoints

ブライアンさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/heyitsbz

PROFILE

前田直子

写真家 24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
www.naokomaeda.net

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