猫と暮らすニューヨーク
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15歳の昼寝狂。昔は飼い主を泣かせたことも

15歳の昼寝狂。昔は飼い主を泣かせたことも

2階層に分かれたアパートメントの地下にある部屋。「ミアは私たちがいる場所が好き。この部屋でテレビを見ていると、ミアも降りてきます」とマーシャさん。

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Mia(ミア)15歳 メス トラ柄の雑種
飼い主・レコードレーベルLet’s Play Houseを主宰するNik Mercer(ニック・マーサー)さんと、ファッションブランドでデザイナーを務めるMarsha Tam(マーシャ・タム)さんカップル。ブルックリンにある2階層のアパートメントに暮らす。

ニックさんとマーシャさん、ふたりの寝室のベッドの上に置かれた猫用の丸いベッド。15歳になるおばあちゃん猫のミアは、その中でぎゅうっと丸まり、日がな一日を寝て過ごす。だからあだ名は「昼寝狂」。でも昔は血気盛んでやりたい放題、飼い主を泣かせたこともあるらしい。

マーシャさんがミアを飼うことになったのは、今から15年前、サンフランシスコに住みながら大学に通っていた頃。当時付き合っていた彼が、「猫を一匹飼いたい」とつぶやいたマーシャさんの言葉を聞いて、子猫をプレゼントしたのがきっかけだった(当のマーシャさんは「そんなこと言った覚えがない」らしいけれど)。魚以外、ペットを飼ったことがなかったマーシャさんは、突然始まった猫との暮らしに戸惑うばかり。「最初の3カ月は夜眠ることもできなかったんです。ミアが寝室のドアを引っ搔く、ベッドに飛び乗る、後ろ足で頰をキックする……。とにかくエネルギーで溢(あふ)れていたから」。間もなく若いカップルは別れ、猫のミアはマーシャさんに託された。

15歳の昼寝狂。昔は飼い主を泣かせたことも

この小さくつぼめた、おちょぼぐちもミアのチャームポイントです。

当時のミアの特技は、後ろ宙返りをしてハエを捕まえ、自分の水飲みボウルに入れること(目的や理由はもちろん不明)。部屋の観葉植物を片っ端からかじり、クリスマスにはリボンをむしゃむしゃ食べてしまったこともある。「胃の中にリボンがたまって、食べ物を受け付けなくなってしまって。手術を受けたら1600ドル。私が21歳のときでした。泣きました」とマーシャさん。クレジットカードでなんとか支払ったものの、お金のない大学生には「悪夢だった」と振り返る。

その後NYへ引っ越すことになり、サンフランシスコからNYまで猫と空の旅をすることに。キャリーバッグにミアを入れ、友人の助けを借りて空港へ車で向かったところまでは良かった。道中で車酔いをしたミアが、上から下からもよおし、キャリーバッグの中は大惨事。トイレを探し、バッグを必死に掃除したマーシャさん。その間、猫のミアを抱えた友人は、猫アレルギーで目の赤みとかゆみに襲われ、こちらも大惨事。それでもどうにか飛行機に乗ったマーシャさんと座席下のミアに、今度は珍事件が襲う。別の席に座っていた赤ちゃんのおもらしの臭いを、猫の臭いと勘違いした後ろの乗客が、マーシャさん&ミアの席に向かって消臭スプレーを執拗(しつよう)に吹きかけてきたのだ。「NYに着くまでずっと! あんなひどい旅は初めて」とマーシャさんは笑う。

15歳の昼寝狂。昔は飼い主を泣かせたことも

水を飲むクセのほか、観葉植物を食べるクセもあり。やめさせようと、お酢と唐辛子を混ぜたものを葉っぱに塗ったり、水スプレーをしたり、いろいろ試したマーシャさん。結局どれも効果ゼロだったとか。

さて、NYで待っていたのはニックさんとの出会い。共に暮らすようになった2人&一匹は、ミアがニックさんを追い回す事件から、ミアの水がぶ飲み疑惑まで、数々の出来事を経て、今に至る。猫との暮らしは、愉快な日々の積み重ねだ。

水飲みボウルで飲むのは浄水のみ。昼間のごはんはカリカリ、夜は缶詰。夜寝る場所はマーシャさんの頭の上。そんなこだわりの強いミアのため「浄水を用意して、ベッドの上で寝場所を整えてあげる私たち。それは時に滑稽だし、馬鹿げてるとさえ思えるけれど、“自分たちが必要とされている”と感じることは、いつだって素晴らしいこと」とマーシャさん。ニックさんが続ける。「ミアがもし人間だったら、とても信じられない人物だろうけれど、違う生き物だからね。猫に対して寛容で忍耐強くあることは、周りの人間に対しても寛容でいることに役立つと思うんです」。そんな思いもよらない学びがあるのもまた、猫との暮らしの醍醐味(だいごみ)である。

(写真・前田直子)

>>写真のつづきはこちら

ニックさんのウェブサイト http://lphnyc.com/
マーシャさんのウェブサイト https://www.bibabidi.com/
ニックさんのインスタグラム https://www.instagram.com/lphnyc
マーシャさんのインスタグラム https://www.instagram.com/mar_chat

連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

PROFILE

前田直子

写真家 24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
www.naokomaeda.net

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