もう“なんちゃって四駆”とは呼ばせない 登場した新型RAV4試乗レポート

トヨタ自動車のSUV「RAV4」が2019年4月10日にフルモデルチェンジを受けて5代目として登場した。米国では最も売れているトヨタ車で、じつは一足先に彼の地でデビューを果たしている。ついに日本でも乗れたので、試乗レポートをお届けする。
2018年3月、ニューヨークで開かれた自動車ショーで今回の新型がお披露目されたとき、私も記者会見に臨んだ。米国のメディアの関心がとても高くて広い会場は満員。その熱気に驚いた記憶がまだ鮮烈に残っている。
日本でのラインナップは、エンジンが2リッターガソリンと、2.5リッターガソリンエンジンを使ったハイブリッドの2本立てだ。駆動方式は大きくいって、前輪駆動と4WDが用意されている。
凝っているのは、4WDにはなんと3つの方式があることだ。ハイブリッド車は後輪左右に別べつのモーターを使う(おなじみの)「E-Four」である。いっぽうガソリン車には従来からの「ダイナミックトルクコントロール4WD」に加え、あらたに「ダイナミックトルクベクタリングAWD(Dynamic Torque Vectoring AWD)」が搭載された。

「Adventure」のグリルはクロームの仕様がない
そもそもRAV4は画期的なクルマだった。トヨタ自身の言葉を借りると、「フレーム付4WDがオフロードを走行するためのクルマと位置付けられていた時代に発売され、乗用車タイプのSUVという新たな市場を開拓」したことで自動車史に残る。
私も1994年に初代が発表された直後の思い出がある。白金あたりで停車していたら、大学生らしき男子がお父さんの手を引っ張って走ってきて「これがRAV4ってクルマだよ!」と私が乗っていたRAV4に見入っていたのだ。行く先々で話しかけられた。
「そのあとSUVが市場に多く投入されたので、ここで存在感を強く出さなくてはと思いました。そこで“なんちゃってヨンク”という揶揄(やゆ)をはね返すために、4WDシステムの開発にも力を入れました」と新型の開発を指揮したチーフエンジニアの佐伯禎一さんは話してくれた。

全長4600mm、全幅1855mm、全高1685mm(「Adventure」以外のモデル)
初代RAV4を発売した当時は、ソニーのプロダクトを連想させる、「キュートなデザインの新しいタイプの乗用車」でよかったのが、時代とともに求められるコンセプトが変わったのである。ちなみに米国では温暖な地方では前輪駆動モデルが売れ、東部など降雪もそれなりにあるところでは4WDが販売の中心になっているそうだ。
私が試乗したのは、ハイブリッドの4WDと、ガソリンの4WD(ダイナミックトルクベクタリング搭載車)である。
一般のオンロードでの印象は、ハイブリッド車のスムーズな加速が好印象だった。走りはじめから力があって、アクセルペダルを踏み込むと、ぐんぐん速度を上げていく。
CVT(無段変速機)のガソリン車は、いっぽうで、少し高めの回転を維持して走ったときによさを発揮するようだ。1500rpmから上のエンジン回転域では、アクセルペダルへの反応もよい。
さきに触れたように、2車は構造が異なる4WDシステムを搭載している。ダイナミックトルクベクタリングとは、カーブを曲がるときなど(とくに後輪に)かかる力を自動制御し、走行ラインが乱れないようにするのを狙ったものだ。

スイッチ類は整理されていて使いやすい

「Adventure」に設定された合成皮革とオレンジステッチのシート
実際にコーナリング中はアクセルペダルに載せた足の力をゆるめる必要はない。踏み込んでいくとリアの外側のタイヤにトルクがかかるのがわかる。
自動車評論用語でいうところの「オンザレール感覚」、レールの上を走るがごときスムーズな軌跡でカーブを曲がっていけるのだ。制限速度内で走っているかぎり、カーブ手前でブレーキングの必要はない、とまで言い切ってしまえるほどだ。飛ばすのが好きなひとは、ドライブモードセレクターで「スポーツ」を選ぶと、かなり楽しめるだろう。
一方で、小石が敷き詰められているようなダート路面では姿勢の安定性が高い。ダイナミックトルクコントロール4WDはアクセルペダルの踏み込み方に応じて軌跡が変わる(これはこれでいいのだけれど)のに対して、ダイナミックトルクベクタリングAWDは摩擦係数が低い路面でも狙ったとおりのラインをとれる。

4WDモデルは走行モードに応じて駆動力、4WDシステム、ステアリング、ブレーキを統合制御する(写真はハイブリッド車)

後席空間はかなり広い

デジタルリアビューミラーは解像度が高い

荷室容量は580リッターもある
ボディサイズは全長4600mmと、イメージより余裕がある。日産エクストレイル(4690mm)、スバル・フォレスター(4625mm)よりはコンパクトで、マツダCX-5(4545mm)より少し大きい。
ホイールベースは2690mmと数値では控えめだけれど、実際の後席のスペースはかなり広い。おとなが座って脚を組めるぐらいだ。荷室も奥行きがあり、パッケージングでそうとうがんばった結果と感心した。
「アーバンカーキ」というソリッド(メタリックではない)の専用色が新設定され、これもスタイリングに合っている。「ぼんやりしないように色の調合が大変でした」とは担当デザイナーの言葉である。ホワイトやブラックに加え、あざやかなブルーにホワイトのルーフのコントラストカラーなども用意されているが、このアーバンカーキ、雰囲気がある。
さらに今回のRAV4にはTRDやモデリスモといったトヨタ系の会社が内外装を中心に特別な装備を組み込んだモデルを用意している。ここにも魅力的な商品がある。個人的にはTRDが発売した「Field Monster」やモデリスタの「JAOS」といった、ゴツい外装パーツを組み込んだ仕様を選ぶのも面白いと思う。
価格はガソリンエンジン車が前輪駆動の260万8200円(8%の税込)からで、ダイナミックトルクベクタリングAWDは334万8000円(同)からだ。ハイブリッド車は前輪駆動が320万2200円(同)からで、E-Fourが345万600円(同)からとなる。

ハイブリッド「G」
(写真=筆者)