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スリランカ 光の島へ
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〈21〉「コロンボで爆破テロ」……あの日から前に進むために

〈21〉「コロンボで爆破テロ」……あの日から前に進むために
教会が狙われたニゴンボ、事件後初めて訪れたが穏やかな夕暮れだった

スリランカ同時爆破テロのニュースを知ったのは、コロンボ行きの飛行機に乗り換えるために降りた上海の空港で。搭乗時間まで空港内をぶらぶら散歩したり、「トイレ!」と騒ぐ娘をバタバタとトイレへ連れて行ったりしていた。椅子に座ってふと携帯を見ると着信とメッセージ受信の表示が。

「コロンボで爆破テロ」「何カ所も」「被害者の数がすごい」

小刻みに入ってくるメッセージでかなり深刻な状況なのが伝わってきた。中国だったためか、SNSに規制がかかり思うように友人たちと連絡がとれない。検索サイトも使えなかった。周りにいたスリランカ人やニュースサイトを見ている中国人に頼んでニュースを見せてもらう。たまになんの拍子か友人からのメッセージが受信できた。「コロンボに戻らない方がいいかも」「飛行機が狙われる可能性がある」。

航空会社のスタッフに確認すると、テロが起こったことは事実、でも空港は閉鎖されていず飛行機は飛ぶとのこと。搭乗時間ギリギリまで搭乗ゲートと娘の顔を何度も見つめる。飛行機に乗るべきかどうか。夫と相談し、このままここにいても何もわからない、いったんスリランカへ戻りまず情報を集めようと決めた。もし空港が危ないなら飛行機が飛ぶことはないだろうと。

飛行機に乗り込んで離陸準備が整ったのだが、ある中国の旅行会社がツアー中止を決めたらしく30人ほどの人が降りることとなった。また離陸準備が最初から行われる。その間に何か情報を得たのか、心変わりしたのかまた離陸準備が整った後に降りる人が出てきた。3回ほどそんなことが起こり飛行機の中に3時間近く待機。離陸までにかかる時間がさらに不安を募らせる。

残った乗客の国籍は様々。急に中東系の人や肌の色が濃い人が気になり始める。キョロキョロしつつ自分の中の偏見に気づかされる。飛行機が飛んだ後は機内のWi-Fiがつながり現地の様子を知る友人からの電話も受けることができた。悲惨な状況がだんだんと明らかになってくる。本当にあのスリランカで起きていることなのだろうか、言葉がまったく見つからない。動悸(どうき)と頭痛が激しくなる。

〈21〉「コロンボで爆破テロ」……あの日から前に進むために
スリランカと日本に関わる様々な人と集まりたくさん話した

4時間ほど遅れて到着した。空港は落ち着いていた。外出禁止令が発令されていたものの、入国した外国人にはセキュリティパスが出されるため帰宅できるとのこと。ターンテーブルで荷物を待つ間、ゴミ箱の方に走る娘を必死に止める。すべてが恐ろしく思えた。娘はいつもと違う私に不思議な顔をしていた。

3時間ほどタクシーカウンターの列に並ぶ。誰もが静かに列に並んでいた。それもまたいつものスリランカじゃなかった。家に着いたのは朝方の4時。少し横になったのだが、まったく眠れなかった。外が明るくなる。いつもの空なのに、すべてが変わってしまった。黙々と、時に手がまったく動かなくなったりしながらやっと荷ほどきをした。それが21日から22日の私たちに起こった出来事。

遠い国のことだと思っていたテロが私たちのすぐ側で私たちの大事なものをたくさん奪っていった。たくさんの命、信じてきたもの、積み重ねてきたもの、夢や将来。怒りというよりも無力感でいっぱいだった。様々な情報や連絡が飛び交い、携帯は光りっぱなし。急にいなくなってしまった大好きなあの人を想うと心臓が握りつぶされたように息ができない。気持ちのやり場をどうしていいかわからず、眠ることもできず事件後の最初の1週間はスリランカに来てから一番長い1週間だった。

〈21〉「コロンボで爆破テロ」……あの日から前に進むために
裕福な家もそうでない家も追悼を表す白い旗が多く掲げられていたニゴンボ

事件の日から10日以上が過ぎて街は落ち着きを取り戻してきた。数日は外に出ることを躊躇(ちゅうちょ)していたけれど、ずっとこもっていることもできず最初は近所のスーパーから、そして少しずつ距離を伸ばして、友人たちと会ったり外食もできるようになった。スリランカの人たちは少し疲れた顔もしているけど、ここで生きていかなくちゃいけない、だからこそいつものように冗談を言い合って肩をたたき合って笑う。つらい背景が彼らの強さや温かさをよりはっきり際立たせているのを感じる。

まさかこのコラムでこんなことを書くことがあるなんて思ってもいなかった。私は政治情勢に明るいわけでもなく「テロに打ち勝つ」ということがどういうことなのかもわからない。正直言えばやっぱり怖い。でも今私たちがしていること。近くの人で集まり、事件当時どうやって過ごしていたか、どれだけ大きなものを失ったかを話し、互いに再確認している。そうやって話すことで、自然とお互いに励ましあっていて、気持ちのやり場が少しだけ見えてくる。「前に進みたい」、そういう言葉が出てくるようになった。

スリランカがこんな形で注目されてしまったことがとても残念で仕方がない。でもこの連載を読んでくださっている皆さんにお願いがある。ここでスリランカをただの怖い国だと見捨てないで欲しい。この国はまた輝きを取り戻すから、あの人が好きだったスリランカに戻るから、どうかそのことを心の片隅に置いて見守って欲しい。そうしたら私たちはもっと頑張れるから。

たくさんの亡くなられた方たちのご冥福を、負傷し今も苦しんでいる方たちのことを、そしてその報道された数字の周りにいる悲しみに暮れる多くの人たちのことを心から想っています。

フォトギャラリーへ(写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)

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