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このパンがすごい!
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卸売市場の大衆食堂で味わうツナメルト/調理室池田

卸売市場の大衆食堂で味わうツナメルト/調理室池田

外観

市場って海のそばにあるとばかり思っていたけど、たまプラーザにもある。川崎市中央卸売市場北部市場。ムズカシイ響きだが、大雑把にいえばかつての築地みたいなところだ。市場関係者や料理人のような方々が門から忙しそうに出入りしている。パンを食べたいだけの人間が、入っていいのか?

入っていいらしい。マニアックなたたずまいだけれど、商店街みたいに、一般人も買い物や食事できるエリアが「関連商品売場棟」(関連棟)。ここに、市場の朝を支えるサンドイッチ食堂がある。並んだ他の店と同じ作りの一軒ながら、アンティークのドアをはめこみ、味があるコンクリートの床に、やはりアンティークの家具を置く。こんなところに、こんなおしゃれな店が。吸い込まれるように中へ入り、サンドイッチを注文した。

卸売市場の大衆食堂で味わうツナメルト/調理室池田

ツナメルト。コーヒーはチャンチャマイヨ

「ツナメルト」。まろやかな自家製マヨネーズにまみれて、自家製のツナ。ああ、これは最近まで泳いでいたなあという、生き生きした味わいがある。それをきゅんと引き締めるワインビネガー、コリアンダーやフェンネル、黒胡椒のスパイス感。そのエキゾチックな香りに、パリの定食屋の記憶が転がり落ちてきた。

卸売市場の大衆食堂で味わうツナメルト/調理室池田

ベーコン・トマト・マッシュルーム

なんの飾りもなくサンドイッチだけ、ぽんと置かれた皿。そこにいみじくも書かれた「BOUILLON CHARTiER」(ブイヨン・シャルティエ。パリで100年つづく大衆食堂)の文字。市場という「ど日常」の中で大衆食堂の役割を演じる姿は、「伝説のレストラン」と呼ばれるその店さながらではないか。

「調理室池田」は昨年12月にオープン。夫婦でこの店をはじめた池田宏実さんは料理教室を主宰するなど、料理家として活動をしてきた。

「もともとは、新鮮なものが安く手に入るので、この市場に買い付けに来ていました。でも、買い物のあと休みたいと思っても、屋根のついた場所でコーヒーを飲めるところがなくて」

だったら、とコーヒーも飲めて軽食も食べられる「調理室」を自ら作った。市場で食材を仕入れ、できるだけ自分で調理。先述のツナは、魚屋で、マグロの刺し身用のサクから切り落とされた部分を分けてもらい、オイルでコンフィして作る。

卸売市場の大衆食堂で味わうツナメルト/調理室池田

ベーコン・トマト・マッシュルーム

定番のツナメルトに、日替わりのサンドイッチ。この日は「ベーコン・トマト・マッシュルーム」。これも市場の肉屋から厚さを指定して切ってもらったベーコンを使用。ちょっと厚めのベーコンは脂がとろっとする。

火を入れたトマトもジューシーにとろっと。それらがいっしょにしたたったところに、自家製マヨがいて、クリーミーさの中に包み込んでしまう。やはりちょっとぶ厚めに切った2枚の食パンはしっかりおなかにたまる。忙しい中で池田さんがハンドドリップしてくれたコーヒーは、サンドイッチの味わいの流れを苦味で切ることなく、褐色の香りで小休止させてくれた。

卸売市場の大衆食堂で味わうツナメルト/調理室池田

2階のギャラリースペース。壁には小町渉さんの絵

池田さんによると、「関連商品売場棟」だけでなく、「水産棟」で、プロでなくても新鮮な魚を買うことができるという。買い物のあとは、おいしいコーヒーとサンドイッチで一服。古めかしい建物の中でくつろぐこの時間、なにかに似ていると思ったら、築地市場の閉場とともに役割を終えた喫茶店「愛養」なのだった。愛養との別れのさびしさで流した涙も消えぬうちに、新時代の愛養が出現していたなんて。時代は巡る。

そんな雰囲気を醸しだす理由は、価格帯も気軽さも含め、あくまで市場の「調理室」を貫いていることにあるのだろう。

卸売市場の大衆食堂で味わうツナメルト/調理室池田

チェリーのプディング、バナナブレッド

「こだわるんだけど、こだわりすぎず。本当はドトールのほうが、市場のみなさんはよろこんだかもしれないんですが」

と言って池田さんは笑ったが、あながちそうともいえないことは、市場関係者らしいおじさまが「いつもの」という感じで、嬉々としてコーヒーを頼んでいるところから見てとれた。調理室池田には、日常でもっとも大切な、人の息遣いと体温がある。

調理室池田
川崎市宮前区水沢1-1-1 川崎市中央卸売市場北部市場 関連棟 45
7:00~13:30(L.O. 13:00)
休みは市場に準ずる(原則、水・日曜と祝日)

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