絶景!マーロン・ブランドが所有したタヒチの島々。理想を引き継いだリゾートに

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信するビーチライターの古関千恵子さんが訪れた、世界各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。
今回訪れたのは、タヒチ島からリゾート専用機で約20分。12の島々からなるテティアロア環礁です。かつてこの環礁の所有者だったのが、今は亡きハリウッドの名優、マーロン・ブランド。彼の理想を引き継いだ、再生可能エネルギーを用いたエコ・リゾートの形がここにはあります。
マーロン・ブランドが購入した、古代タヒチの聖域、テティアロア環礁

タヒチ島からのリゾート専用機。飛行時間は約20分
国際空港のあるタヒチ島から北へ約50キロメートル。緑の高峰をいだく島が多いソシエテ諸島にあって、珍しくも平らな12の島々からなるテティアロア環礁。かつては、タヒチアンが儀式を行う聖域として、この環礁を守ってきました。また、古代のタヒチの王族にとっても、この島々は特別な憩いの場でもありました。
マーロン・ブランドがはじめてここを訪れたのは、1962年公開の映画『戦艦バウンティ』(原題:Mutiny on the Bounty)の撮影の際。島の美しさ、鳥たちや海洋生物の多様性に心打たれ、パラダイスに近づいた手ごたえを感じたといいます。
ブランドは、『戦艦バウンティ』をきっかけに、共演者でタヒチで生まれ育ったタリタさんと3度目の結婚。1967年にこの環礁をまるごと購入しました。愛する女性と楽園の島々を手に入れたのです。

海底の白砂が光を反射して、浮遊感ばつぐんの海。スノーケリングを数時間しても飽きることがありません
「20世紀最高の俳優」とされるブランドにも低迷期はあり、その頃はテティアロア環礁を守るため、自分の意にそぐわない映画にも出演をしたというエピソードも残っています。
また、タヒチで高級リゾートを展開している実業家に、タヒチの自然と文化を守る大切さを説き、共同でエコ・リゾートを造る計画を推し進めたこともありました。
自然環境を維持する理想を引き継いだリゾート「ザ・ブランド」

12の島々のうち、リゾートの施設があるのは「オネタヒ島」
かつてテティアロア環礁には、ブランドが手掛けた「ホテル・テティアロア」がありました。自然美がそのまま生かされた、近年注目のキーワード「ベアフット・ラグジュアリー(あえて裸足で過ごすような、自然を感じるナチュラルな仕様ながらも、実は贅沢なスタイル)」の先駆けのようなリゾートでした。
ブランドの没後にそのリゾートは一時クローズしていましたが、2014年に「ザ・ブランド」というまったく新しいリゾートとしてオープン。ラグジュアリーさや快適さを犠牲にすることなく、自然環境を持続する先進技術のパイオニアモデルとなる――、生前のブランドが理想としたリゾートです。
アクティビティーのひとつ「グリーン・ツアー」に参加すると、取り組んでいる環境保護やエネルギー対策について知ることができ、リゾートのバックステージを見て回れます。
たとえば太い金属パイプが迷路のように入り組んだ海洋深層水の施設では、海水の温度差を利用して発電。その電力で、エアコンの動力の60%が補えるそうです。

海洋深層水を循環させている施設。エアコンの動力に使われています
再生可能エネルギーの分野では太陽光やココナツオイルにも着目し、研究を行っています。また、リゾートで出る1日200キログラムものゴミを24時間かけて堆肥(たいひ)に変え、オーガニックガーデンの肥料として活用。雨水はタンクに蓄え、トイレや洗濯に使用しています。

雨水や井戸水も大切な資源。濾過(ろか)してトイレや洗濯に使用します
35のヴィラはそれぞれにプライベートビーチも

まるで邸宅のような3ベッドルームのヴィラ。ビーチベッドを置くデッキテラスやガゼボなど居心地のいい場所があちこちに
もちろん、エコ一辺倒ではなく、ラグジュアリーなおもてなしも「ザ・ブランド」は極めています。島内に点在するヴィラは35棟。1ベッドルーム(96平方メートル)、2ベッドルーム(168平方メートル)、3ベッドルーム(246平方メートル)の3タイプに分かれており、それぞれにプライベートビーチや小さなプール、ガゼボをしつらえています。

植栽の配置で隣のゲストが目隠しされて気にならないプール
到着時にはウェルカムサービスとして、この島でとれたハチミツを使ったマカロンとルイナールのシャンパンがテーブルの上に用意されています。ほかにもビーチバッグにビーチサンダル、日焼け止めローションやロゴ入り水筒など、持ち帰り自由のアメニティーも上質なものばかり。

島の内陸にある、鳥かごのようなデザインの本格的なスパ
宿泊の料金システムが、オールインクルーシブ制(一部別料金あり)なので、滞在中の食事代やアクティビティー代が含まれています。その中のひとつ、フランス料理のファインダイニング「レ・ミュティネ」はパリのミシュランスターシェフ、ギー・マルタンがプロデュース。島であることを忘れさせる料理のクオリティーです。

『戦艦バウンティ』にちなみ、「反乱」を意味するレストラン「レ・ミュティネ」

朝食で食べたスクランブルエッグとベーコン
環境を守るスタッフやガイドの心意気、楽園の絶景がさらに心に響く
滞在中にぜひ参加したいアクティビティーツアーが「テティアロア・アルティメットツアー」。アジサシの聖域や古代のマラエ(祭壇)、サメの赤ちゃんが集まる海域など、環礁内の島々をボートでめぐりながら、手つかずの自然を体感します。ツアーを通して、この環境を守るスタッフやガイドの心意気も感じ、楽園の絶景がさらに心に響いてきました。

テティアロア環礁のリゾートガイドは島への思い入れもたっぷり

環礁内の自然を探検するツアーでは古代タヒチの聖域も訪れます

ふわふわの産毛がかわいいアジサシの赤ちゃんが生息している島も

この環礁にはじめてやってきたブランドが「楽園に近づいた」と感じた気持ちと、ここに来ればきっとシンクロするはず
■ザ・ブランド(日本での問い合わせ先)
ICM
TEL:03-5405-9213
https://www.icmjapan.co.jp/thebrando/index.shtml
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高級感のあるホテルに泊まりながらも、グリーンツアーなどで環境の勉強をする。このような体験型のプライベートツアーはアフターコロナの時代にかなり合っている気がします。