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アーティスト・蓮沼執太さんのブルックリン最新ガイド

東京とニューヨークの二つの都市を活動の拠点にする、アーティストの蓮沼執太さん。「蓮沼執太フィル」ではライブ音源を収録したアルバム『フィル・プレイズ・フィル』がまだ記憶に新しく、さらにソロでは、パフォーミングアーツや音楽プロデュースなど多岐にわたって活躍しています。この秋、ニューヨークのレーベル「ノーザン・スパイ・レコード」から新作EP『Oa』をリリースしたばかりの蓮沼さんに、“いま、気になる”ブルックリンのエンタメスポットを教えてもらいました。

(写真・文 = 草深早希)

“ニューヨークの今”に触れる音楽の交流地点「パブリックレコード」

ブルックリンを流れるゴワナス運河の先端にある「パブリックレコード」は、さまざまなジャンルの音楽の交流場所として今年2月にオープンしたばかり。ニューヨークにいるアーティストやミュージックフリークが口ぐちに名前を挙げるほど、いまブルックリンで話題のスポットです。

アーティスト・蓮沼執太さんのブルックリン最新ガイド

アクセスは、F、Gトレインの「Bergen St」が最寄り駅で、駅から徒歩10分ほど。明るく居心地のよいカフェは、平日から人々が集う

建物は、「Palto Flats(パルトフラッツ)」をはじめニューヨークの気鋭のレーベルと、レアなレコードを中心に集めた「ハイファイレコードバー」、ライブアクトとDJプレイを実現できる大きなサウンドシステムを設備したパフォーマンススペース、そして、ビーガンメニューを提供しているカフェ&レストランの三つのスペースで構成されています。

アーティスト・蓮沼執太さんのブルックリン最新ガイド

パフォーマンススペースのフロア。特に週末は、お昼すぎのライブからオールナイトのダンスパーティーまで、ニューヨークのミュージシャンやDJ、レーベルなどによるイベントでスケジュールがびっしり埋まるほど人気。気になるイベントはホームページをチェック。写真提供=Public Records

蓮沼さんのおすすめは、やっぱり音楽イベント。「家が近くて立ち寄りやすいっていうのもあるんですけど、とてもいい雰囲気の空間なんです。ニューヨークのバンド『Zs(ジーズ)』のドラマー、グレッグ・フォックスがイベントのディレクションをしていて、今年は、ララージ(※1)の『アンビエント3:デイ・オブ・レディエンス』のパフォーマンスを見に行きました」。

※1……ララージ(Laraaji)は、チターという楽器の奏者で電子音楽家。1970年代よりニューヨークのストリートで演奏をはじめ、ブライアン・イーノにその才能を見いだされたという、今では大御所といえるアーティストのひとり。イーノがプロデュースするシリーズ3作目で、ララージの代表作である『Ambient 3: Day of Radiance』は、来たる11月4日(月)、「WWW」主催で行われる来日シークレット・イベントで公演予定です。

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(左)入り口すぐの「ハイファイレコードバー」内のマガジンショップ。(右)建物は、重厚感のある赤いレンガ造り

パブリックレコード
http://publicrecords.nyc

アート企業が手がける、新たな飲食の場「バーライカ」

アーティスト・蓮沼執太さんのブルックリン最新ガイド

「バーライカ」があるのは閑静な住宅街クリントンヒル。アクセスは、Gトレインの「Classon Av」が最寄り駅で、駅から徒歩4分ほど。お店の外にある「Greene Av/Grand Av」のバス停が目印。写真提供=e-flux

アーティストプロジェクトや展示のキュレーション、作品のアーカイブ、コンテンポラリーアートにまつわる情報誌『イーフラックス ジャーナル』の出版など、アート事業を主体とした企業「イーフラックス」の創設者アントン・ヴィドクルが手がける新しい事業形態のバー「バーライカ」。2018年秋にオープンしました。

アーティスト・蓮沼執太さんのブルックリン最新ガイド

上映の様子。プログラムの内容は、ホームページにて公開。蓮沼さんいわく、お店の名前である「ライカ」は、ヴィドクルの愛犬の名にちなんでつけられたんだとか。写真提供=e-flux

「パフォーマンスやアートフィルムの上映を中心に定期的にアートプログラムを開催していて、気になるイベントがあるとたまに見に行きます。今年『ジューイッシュ・ミュージアム』でも個展をしていたマーサ・ロスラー(※2)の映像上映、『ペンシクル・オブ・プレイズ』が記憶に残っています。政治的なトピックをテーマに、風刺をきかせて批判する彼女の作品は、時に笑い、考えさせられるものでした。イベントだけじゃなくて、ここは、ごはんもおいしいんですよ」と、蓮沼さん。

※2……マーサ・ロスラー(Martha Rosler)は、パフォーマンスやインスタレーション、動画、写真などを制作するアーティスト。作品は「公共の場」に焦点を当て、日常のなかで特に女性に影響を与える問題を探ります。

アーティスト・蓮沼執太さんのブルックリン最新ガイド

ディナーメニューより、日本の定食。ディナーは18~22時、メニューは毎週替わります。写真提供=e-flux

アーティスト・蓮沼執太さんのブルックリン最新ガイド

カクテル・日本酒は12ドル~、ビールは6ドル〜。そのほか、毎日閉店まで日本風のカレーとおつまみも提供。写真提供=e-flux

洗練された内装やエッジの利いたアートプログラムなど、アート企業ならではの店構えにハードルの高さを感じてしまいそうだけど、そんなイメージとは裏腹に、店内では旬の魚介と季節の野菜にこだわったおいしい創作和食とお酒を提供しているから、ごはん目当てにふらっと立ち寄りたくなる場所です。

イーフラックス
https://www.e-flux.com/
バーライカ
https://www.laika.bar

工業地帯にたたずむ、週末限定のギャラリー「ザ・チムニー」

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Courtesy of The Chimney and Yasue Maetake. Photo by Hirofumi Kariya

町工場が集うイーストウィリアムズバーグの街並みに溶け込むような、インダストリアルな建物の「ザ・チムニー」は、国際的な活動の場を持つアーティストを専門にプロモーションするギャラリー。さまざまな学問分野にわたる展示作品によってインダストリアルな建物を活性化し、新たなスペースとして再利用することを目的としています。

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Courtesy of The Chimney and Aaron Taylor Kuffner

「ここは、ギャラリーのほかに若いアーティストのスタジオも増えているエリアなんです。初めて行ったときは、ぽつんと煙突のある建物を見てとてもユニークなギャラリーだと思いました。しかも、一部屋だけで展覧会を行う珍しいスペースなんです。いちばんおもしろかったのは、2017年のアーロン・テイラー・カフナー(※3)の個展。スペースの中央が寝れるようになっていて、自動的に叩かれるゴングの音に合わせて動き出す光を鑑賞できるというインスタレーションでした」と、蓮沼さん。

※3‥‥アーロン・テイラー・カフナー(Aaron Taylor Kuffner)は、主に彫刻と音を取り扱うアーティスト。彼の作品は、詳細に研究し、専門家と協力しながら特殊な技術の開発をするという長期的なプロジェクトの大成がほとんど。

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ニューヨークを拠点に活動する日本人彫刻家、マエタケヤスエさんによる2017年のインスタレーション。腐敗した材料は図らずも有機的に新しいものへとカタチを変えるという自然の経過と、インダストリアルな建物を調和させたもの。
Courtesy of The Chimney and Yasue Maetake. Photo by Hirofumi Kariya

展示のほか、定期刊行物の発行、アーティストによるトークショーやワークショップの主催、そして、パフォーマンスやスクリーニングなどのライブイベントも意欲的に開催。10月20日(日)まで、メキシコとニューヨーク、二つの地理を記録し作品に落とし込んだメキシコ人アーティスト、ペルラ・クラウゼの個展を開催中です。

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ザ・チムニー
https://www.thechimneynyc.com

蓮沼執太(はすぬま・しゅうた)

アーティスト/音楽家

1983年東京都生まれ。国内外でのコンサートをはじめ、映画、演劇、ダンス、CM楽曲、音楽プロデュースやリミックスなど、多数の音楽制作をする。環境音や電子音を用いたサウンドワーク、自らの歌唱を取り入れた楽曲、タブラ奏者U-zhaanとのユニット、さらに「蓮沼執太フィル」を組織した大編成アンサンブルでの協働など、幅広い音楽活動を展開する。最新アルバムに蓮沼執太フィル『アントロポセン|ANTHROPOCENE』(日本コロンビア 2018)、NYレーベルのNorthern Spy Records よりEP『Oa』をリリース。また「作曲」という手法を応用し物質的な表現を用いて、彫刻、映像、インスタレーションなどを制作する。2013年にアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)のグランティとしてニューヨークへ。2017年に文化庁「東アジア文化交流使」に任命されるなど、国外での活動も多い。主な個展に『Compositions』(ニューヨーク・Pioneer Works 2018)、『 ~ ing』(東京・資生堂ギャラリー 2018)など。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。10月26日(土)に千葉のDIC川村記念美術館でミュージアム・コンサートを開催予定。

shutahasunuma.com


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