これで世界が石化しても大丈夫!?「Dr.STONE」の千空に学ぶ気球の作り方

【動画】Dr.STONE 千空に学ぶ気球の作り方
週刊少年ジャンプで連載中の科学マンガ「Dr.STONE」をご存じでしょうか。作品の舞台は、突如降り注いだ謎の光で現代人が石化し、数千年かけて原始時代に戻った地球。偶然、石化から目覚めた天才高校生・千空が、科学の力を駆使して文明を再び築いていくストーリーです。アニメ放送も、7月から、TOKYO MXなど各局で始まりました。
マンガを読みながら筆者が思ったのは「こんな風に世界が石化した時、私も千空みたいにゼロから工作ができるのか」。このままでは世界が石化して私だけ目を覚ましても、どうすることもできません。そこで、文明がある今のうちに「Dr.STONE」に登場するアイテムを作ってみることにしました。事前に練習しておけば、世界が石化してもスマートに対処することが出来ますね。
今回、つくるのは千空たちが長距離を移動するために完成させた「気球」。早稲田大学理工学術院・草鹿研究室に協力をお願いしました。実はその仕組みはいたってシンプルで、家庭でも簡単に再現できるので、お子さんと一緒に挑戦してみてください。

マンガ「Dr.STONE」の一コマ
【用意するもの】
・ポリ袋2枚(45ℓ、できるだけ薄いもの)
・ピアノ線(数メートルあれば十分)
・ニクロム線(同上)
・マーカーペン1本
・画びょう1本
・ひも1本(1メートル程度あれば十分)
・紙コップ1個(小)
・発泡スチロール(厚さ1.5センチ、表面が両辺10センチ程度の正方形)
・アルミホイル
・クギ7本(長さ4センチ程度)
・ろうそく7本(数センチ)
・アルミ製のダクト(長さ20センチ程度)
・セロハンテープ、ガムテープ
・シーラー(ポリ袋を熱で接着する道具)
・はさみ、カッター、ニッパー、定規
※ピアノ線やニクロム線、ダクトはホームセンターで手に入ります。シーラーも、100円ショップなどで扱っています。
【作り方】
① ポリ袋一枚を平らに置き、底の部分をまっすぐカッターで切断する
② それを筒状に広げ、開いている部分の直径を測る(この日は40センチ)
③ もう一枚のポリ袋に、②で測った直径の大きさの円を描く。半径の長さに切ったひもの両端に画びょうとマーカーペンをくくりつけ、画びょうを支点にコンパスの要領で。円が描けたら、それをカッターで切り出す
④ 筒状にした①の開き口のどちらかを、③で切り出した円でふさぐ。シーラーでまず4カ所をとめ、円を描くようにふたをしていく。できたら裏表をひっくり返す。風船の形ができてきた
⑤ ピアノ線を用意し、風船下部の円周の長さに合うように切る。端同士を折って引っかけ、セロハンテープで止めることで、輪っかを作る
⑥ ⑤の輪っかを、風船下部にシーラーで貼り付ける。風船の形を安定させるため
⑦ 紙コップを用意し、飲み口付近に3カ所、等間隔に小さな穴を開ける(千枚通し、アイスピックなどを使う)
⑧ 30~40センチの長さに切ったニクロム線3本を用意し、⑦で空けた穴にそれぞれ通して固定する。ゴンドラと風船をつなぐロープ部分が完成
⑨ ニクロム線3本のもう片方の端を、風船下部に付けたピアノ線に等間隔に引っかけ、セロハンテープで固定する。これで気球の本体が完成
⑩ 最後は気球に熱を送る土台作り。発泡スチロール(厚さ1.5センチ、表面は両辺10センチ程度の正方形)をガムテープでぐるぐる巻きにし、アルミホイルで包装紙のように包む
⑪ マーカーペンで⑩の中央に1個、それを囲むように等間隔で6個の点を書き、そこにクギ7本を刺す。それを裏返し、突き出したクギにロウソク7本を刺す。これで土台のできあがり
実際に飛ばしてみよう!
これで気球の本体と、土台が完成しました。ここまでの作業時間はおよそ30分。ここからは、実際に気球を飛ばしていきます。作業は風の弱い時間帯を選び、必ず二人以上でおこなってください。また、火の扱いには十分注意してください。
まず、屋外の平らな場所に土台を置きます。ロウソク7本に火をつけ、筒状のダクトをかぶせます。風よけのほか、熱が上に流れるようにするためです。
風船を土台の上に広げ、中に温かい空気をためます。一人が風船の上の部分を持ち上げ、もう一人が下の部分を土台に向けて広げます。
1分20秒ほど熱をためて、そっと手を離すと……。
気球がスーッと浮かんでいき、約8メートル上の天井にぶつかって止まりました。天井がなければ、もっと高いところまで上がります。温かい空気を失った気球は、数十秒後にゆっくり地上に降りてきました。
なぜ気球は飛ぶの?
家庭でも簡単に気球を作って、飛ばすことができました。でもなぜ、気球は空に浮かぶのでしょうか。草鹿研究室の山口恭平助手に、その理由を解説してもらいました。
気球の内部に温められた空気が取り込まれると、冷たい空気は気球の外側に押しのけられます。その押しのけられた空気の重さに等しい力を受けて、気球は浮かび上がろうとし、その力を「浮力」と呼びます。浮力が気球の重さ(気球の内部に存在する温かい空気の重さを含む)よりも大きくなると、気球は空に浮かんでいきます。
気球が浮かび上がるためには「密度」が重要になります。空気は温められると膨張して体積が大きくなる(=密度が小さくなる)ように、温度によって物質の密度は変化します。気球内部の温かい空気と気球外側の冷たい空気の密度に違いがあるほど、気球は浮かびやすくなります。
また山口助手は「火の扱いには十分気を付けて、気球作りを楽しんでください」と話していました。
いかがでしたか? 今後も「Dr.STONE」にどんな文明の利器が登場するのか、そしてそれがどんな仕組みで動いているのか、という点にも注目して、千空たちの冒険を見守りましょう。 (文・写真=&編集部員)
■企画協力
早稲田大学理工学部 https://www.waseda.jp/fsci/
・Dr.STONE原作コピーライト:©米スタジオ・Boichi/集英社
・Dr.STONEアニメコピーライト:©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会