&Travel

クリックディープ旅
連載をフォローする

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

今回は、タイの国境地帯を巡る、再び「12万円で世界を歩く」タイ編の5回目です。メーサリアンからメーソート、ミャンマーのミャワディを経由し、バンコクに向かいます。

前回『再び「12万円で世界を歩く」タイ編4』はこちら

(文:下川裕治、写真:阿部稔哉)

メーサリアンからバンコクへ

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

およそ30年前に刊行された『12万円で世界を歩く』では、12のコースを紹介している。そのなかのひとつが、タイの国境地帯をめぐる旅。そのルートを辿(たど)ってみる旅が続いている。

前回はチェンラーイからメーサリアンへ。さまざまな乗り物をつなぐ旅だった。朝6時から深夜0時まで、ひたすら乗り続けた。便利になったことはありがたいが、こうも乗りっぱなしの旅が続くと、さすがに顎(あご)が出てくる。

今回はメーサリアンからメーソート、ミャンマーのミャワディを経由し、バンコクへ。約30年前、メーサリアンとメーソートの間は、公共交通機関がなかったため、バン1台をチャーターした。はたして今回はどうなるのか。朝、メーサリアンの人に移動手段を聞きまわることからはじまった。

今回の旅のデータ

タイは鉄道やバスを補完する乗り物が多い国だ。ソンテオはトラックの荷台にベンチ式の椅子を取り付けたもの。バンコクではソイと呼ばれる路地の乗り物として運行されていることが多い。チェンマイではタクシーとしても使われる。乗り合いバンはロットゥーと呼ばれる。20年ほど前にバンコク市内を走りはじめた。いまでは長距離を走るタイプもある。タクシー、トゥクトゥクという三輪タクシー、バイクタクシーは個人客を対象にしている。基本的に乗り合いシステムにはならない。

長編動画

メーサリアンからメーソートまで、ソンテオと呼ばれる乗り合いトラックの荷台からの映像を。冷房などなく、風が舞い込む荷台。そのつらさ、伝わります?

短編動画

メーサリアンの朝。托鉢(たくはつ)僧がやってくる。僧たちは食事を受けとった後、きちんと経を唱えていた。

メーサリアンからバンコクへ「旅のフォト物語」

Scene01

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

メーサリアンの朝。この青年にメーソートまでの足を聞いてみた。車をチャーターするつもりでいた。ところがこの青年は、「ソンテオがありますよ」。「はッ?」。ソンテオは乗り合いトラック。長距離の路線を走る乗り物ではない。この青年がバイクで乗り場まで連れていってくれるという。無料で。

Scene02

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

ソンテオが待っていた。次は8時半発。時刻表が掲げてあった。1日3本もある。メーソートまで約5時間半……。そんなに長くソンテオに乗ったことはなかった。基本的に市内移動の乗り物なのだ。運賃は200バーツ、約740円。約30年前、車のチャーター代は約4230円。だいぶ安くなった。いや、そういうことではないのだが。

Scene03

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

ソンテオはメーサリアンを離れ農村地帯に。やがて深い山に囲まれた一帯に入っていった。こういうウシたちを避けつつ。ミャンマー国境付近を南下する道。途中に検問所がいくつかあったが、兵士や警察官の姿はなかった。この一帯もずいぶん安定してきたということだろうか。

Scene04

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

急カーブの道が続く。しかし道はよく、対向車も少ないので、ソンテオは時速100キロ以上のスピードで飛ばす。気分が悪くなってきた。ソンテオの椅子は荷台にベンチを取り付けただけのもの。つまり進行方向と直角の向きに座る。これがいけない? こうして前を向くようにしたのだが。

Scene05

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

ソンテオの椅子の上で、いろいろと体勢を変えてみたが50歩100歩。はいあがる胃液のにおいが不快だ。最初の2時間、乗客は僕らだけだったが、しだいに山で暮らす人々が乗り込んでくる。彼らは慣れているのか、こうするしかないのか、すぐに寝入ってしまう。僕も目を閉じたが……。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

ミャンマーとの国境を流れるモエイ川が見えた。以前、対岸には政府から独立を目指すカレン族の拠点エリア、コートレイがあった。近隣ではコートレイ共和国と呼ばれていた。約30年前も地元の人たちは行き来が自由だった。家はタイ側、畑はミャンマー側という農家も多かった。政府とカレン族は現在、一応、和解したといわれているが。現実はシーン8で。

Scene07

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

国境周辺。道を歩いている女性は、タイ人なのか、ミャンマー人なのか。もう判別もつかない。ソンテオの椅子を埋めているのは、ほとんどがミャンマー人。僕はどの国を車で走っているのかわからなくなる。この先にモエイ川を渡る船着き場があった。これは正式な国境なのだろうか。

Scene08

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

メーソート手前、約60キロ。突然、難民キャンプが出現した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告では、ミャンマーとの国境周辺に点在するタイ側のキャンプには、約9万7000人の難民がいるという。帰還も少しずつ進んでいるが。キャンプに暮らすのは大半がカレン族。ここはメラ難民キャンプ。最大規模のキャンプだ。

Scene09

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

メーソートに着いた。結局、6時間近くソンテオに揺られていた。僕のソンテオ乗車最長時間を記録してしまった。その足でミャンマーとの正式国境へ向かった。途中の道には、タイからミャンマーに物資を運ぶトラックの列が延々と続いていた。トラックは空で戻ってくる。一方通行の国境事情。

Scene10

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

モエイ川に架かる橋を渡ってミャンマーのミャワディへ。橋の上には物乞いの子供が多く、彼らを振り切るのに苦労する。約30年前はこの川を越えることができなかった。この橋もなかった。いま、観光目的の日本人はビザなしで国境を越えることができるようになった。天気は悪いが、足どりはちょっと軽い。

Scene11

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

ミャワディは猥雑(わいざつ)な街だ。以前、僕と写真家の阿部稔哉さんは、ここからヤンゴン行きのバスに乗った。そのバスが峠道で横転。僕は肋骨(ろっこつ)にひびが入ってしまった。そのときも、こうやって油の多いミャンマー料理を食べていたなぁ、などと振り返る。これで50バーツ、約185円。タイの物価の半分以下の安さ。

Scene12

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

ミャンマーの人は、クーンと呼ばれる、かみタバコに似た嗜好(しこう)品が大好きだ。ビンロウ(ヤシ科)の実と石灰を溶いたものなどを、キンマ(コショウ科コショウ属)の葉に包んだもの。これをかむと、口中がしびれ、やがて爽快感が……とミャンマー人はいうが、僕は苦手。ミャワディには流れ作業でつくる店まで登場していた。唾液(だえき)が赤くなる。口の周りが赤いミャンマー人はちょっと不気味。

Scene13

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

とんぼ返りでタイのメーソートに戻った。夕食を食べに近くの食堂に向かうと、激しい雨。そのなかをメーソートの人たちはバイクで移動。雨具を身に着け、傘をさし……。ん? ここではバイクの片手運転が許されている? 写っていませんが、警官がそうして雨のなか、バイクを運転していました。結局、この雨のなか戻る気になれず、食堂でついビールが増えてしまった。

Scene14

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

メーソートからバンコクに戻るのはバスで。バスターミナルは週末で混みあっていた。前日の夕方に乗車券を買ったが、残り2席だった。運がよかった。運賃は630バーツ、約2331円。難点はバスターミナルが遠くなったこと。郊外というか、街の外というか。メーソート空港の脇。そこまでトゥクトゥクで150バーツ、約555円もかかってしまった。

Scene15

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5

朝に出発したバンコク行きのバスは、昼食代込み。途中にあるバス会社専用ドライブインで好みの食事をとる。車内ではお菓子とコーヒーがサービス。乗客の半分ほどはミャンマー人だった。出稼ぎバスの雰囲気すらある。彼らはこの種のバスに慣れているようで、コーヒーのいれ方も教えてくれた。

【次号予告】次回はバンコクからアランヤプラテートへ。
※取材期間:2019年8月30日~31日
※価格等はすべて取材時のものです。

■ 再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら
■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら
■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら

BOOK

再び「12万円で世界を歩く」タイ編5
12万円で世界を歩くリターンズ
[赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編] (朝日文庫)

実質デビュー作の『12万円で世界を歩く』から30年。あの過酷な旅、再び!!
インドネシアで赤道越え、ヒマラヤのトレッキング、バスでアメリカ一周……80年代に1回12万円の予算でビンボー旅行に出かけ、『12万円で世界を歩く』で鮮烈デビューした著者が、同じルートに再び挑戦する。

REACTION

LIKE
COMMENT
0
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら