&M

“かっこいい”との付き合い方
連載をフォローする

向井理「自分の見た目に自信があるわけでも、武器にしようとしてきたわけでもない」

多くの人が憧れる「イケメン」と呼ばれる俳優たち。彼らはなぜ「かっこいい」のか。その演技論や仕事への向き合い方から、ルックスだけに由来しない「かっこよさ」について考えたい――。

俳優の向井理さんは、朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で一躍注目を集め、その後も恋愛ドラマやアクション映画、時代劇、舞台作品と幅広い活躍を続けている。

20代の頃から「イケメン」として注目を集める機会も多かったが、当の本人は「より深くお芝居と向き合う必要性を感じていた」と語る。37歳の今、向井さんが考える「かっこよさ」の定義とは――。

【関連記事】

ディーン・フジオカ「社会に対してコミットして行動している人に、かっこよさを感じます」

藤木直人、不惑を超えてからの自己評価「僕は“かっこいい”の対極にいる人間」

玉木宏「感じたことを素直に受け入れる人になりたい」 40歳目前で感じる理想の男性像

東出昌大「“イケメン”にくくられることは気にしない」

井浦新「若い頃は早く“シワ”の多い顔になりたかった」

昔は型破りな人に憧れていた

――今回『そろばん侍 風の市兵衛SP~天空の鷹~』では、共演する寺尾聰さんから、「こんなにクールに演じられる人はいない」と絶賛されていましたね。

向井 意識的にクールに演じているわけではないんですけどね。市兵衛の役は、内面は熱くても外には出さない人という設定があったので、演じる上で気をつけてはいました。この役は、他の人がやったら嫌だなという役でもありました。寺尾さんが僕に対して「相性がいい」とおっしゃってくださって、僕から言うのはおこがましい話ですけど、寺尾さんといると安心感があります。年齢は違っても同じ役者として尊敬していて信頼している方なので、一緒にお芝居をするのが単純に楽しいです。

――普段はお芝居をするのは、楽しいだけではないところもありますか?

向井 やっぱり、どれだけやっても慣れることはないです。もちろん、立ち回りや乗馬などはテクニックだと思うので練習すれば慣れるのかもしれません。でも新人だろうがベテランだろうが、初めて台本を見て覚えるという過程はついてまわりますし、セリフ覚えも人によるけど簡単じゃないし、ただ覚えたものを言うだけでは仕事にならない。現代劇でも時代劇でも「簡単だな」と思うことはほとんどないです。大前提として、いつでも大変だという思いがあります。

――2019年でいうと、ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)にも出られていましたね。向井さんが演じた種田は、大げさなわかりやすいキャラクターではないけれど、印象に残りました。

向井 (役作りの)裏側はそんなに話したくないほうですが、やっぱり『そろばん侍』の市兵衛も、『わたし、定時で〜〜』の種田にしても、セリフではなくて表情で伝えるような役はすごく難しかったです。むしろ、例えばキャラクターの濃い悪役などのほうが演じやすかったり……。セリフが多いと大変だと思われがちですが、僕の場合は、セリフが少ないほうが大変ですね。もちろん覚える量は多くなりますが、ぼそっと言う一言や、人の話を聞いているときの表情にも気を使うので。種田については台本を読んだ瞬間にそういう役だとわかったので、悩みながらやっていました。

――その結果として、市兵衛も種田も、すごく信頼のおけるキャラクターになっていると思いました。

向井 それはたまたまいただいた作品でそういう役が続いたんだと思います。NHKの『LIFE!~人生に捧げるコント~』では悪役も演じましたし、そこは意識してないですね。

――デビューしてから、キャリアを重ねるごとに「こういう役を演じたい」という意識の変化はありましたか?

向井 みなさんそれぞれいろんな仕事の選び方があると思いますけど、僕は選んだことがないです。もちろん、タイミングの問題でできないということはありますけど、僕が決定するのではなく、マネジメントが決めたり選択したりしたものをやっています。

僕はあまり俯瞰(ふかん)して自分を見ていないので、自分でこういう役をやりたいというのはないんです。まだそういうふうに決めなくてもいいのかなと。こだわってるのではなく、余裕がないだけで、どんな形でも、作品を作っていくという意味では同じだと思っています。

――デビューしてからは、人気があるかないかに左右される時期もあったのではないでしょうか。

向井 人気って明確に数字にならないものですし、今の時代はもっと複雑になってきて、作品を見るスタイルも日々変わってきているので、以前にも増して何をもって人気とするかがわからないのかなと思います。僕自身、SNSもやってなくてバロメーターがないので、意識したことはありません。忙しかった時期……『ゲゲゲの女房』(NHK)をやっていたときは休みがなくて外に出てなかったので、本人が一番そういうことがわかってないんじゃないかなと。もしかしたら、それを自覚したときには、もう過ぎているときなのかもしれないですしね。

――容姿の良さなど、わかりやすいかっこよさを求められる時代もあったかと思います。

向井 そこは自分でどうこうできるものではないので、ただの特徴なのかなと思っています。でも、見ている人も、単にかっこいいから好きになるわけじゃないし、逆だからって嫌いになるわけじゃない。キャラクターと作品と本人の努力が合致すれば、知名度が上がることもあるのかなと思います。最初から自分の見た目に自信があるわけでも、それを武器にしようとしてきたわけでもないですね。

――では、何で勝負しようと考えていましたか?

向井 いつからか、それまで以上に深くお芝居に向き合う必要性を感じるようになりました。仕事をするからには作品に対する取り組み方だけではなくて、そこに立つまでのプロセスに対して、どれだけ力を注ぎ込めるかということが重要ですし、そこに関しては人に負けない自信はあります。そこをおろそかにすると仕事ではなくなるので、当たり前ですが、お芝居に対してはちゃんと向き合おうと思っていますね。

――最近は、撮影が終わった後のプロセス……例えば宣伝などの重要性も大きくなっている気がします。

向井 それに関しては、宣伝のプロフェッショナルの方がいるのでそこに協力しますし、バラエティー番組に出るにしてもどういうコンセプトで宣伝するのかを相談しながらやっています。

――例えば、宣伝で、女性ファンがぐっとくる写真撮影を求められるようなこともあるかと思います。

向井 そうですね。宣伝で出る場合には、作品を基本に「なぜその媒体に出るのか」を考えるので、役からあまりにも飛躍した表情を求められたら考えますね。そこがぶれると本末転倒だと思うので。

――「かっこよさ」について、過去と現在で考えが変わったところはありますか?

向井 若い頃は、型破りな人とか、飲み方にしても豪快な人がかっこいいと思っているところもありました。でも、30歳を過ぎてからは、まったく思わなくなりましたね。価値観は変わってくるものだし。

今は、外見だったら、服や身に着けるものが素敵だったりストーリーがあったりするとかっこいいと思うようになりました。例えば寺尾聰さんは、現代劇のときは、ご自身の洋服を着て出られるんですね。以前にご一緒した作品(ドラマ『死の発送』)では編集者の役だったんですけど、その役にあった洋服で演じられていて。素敵だと思いますし、身に着けるものって人間が出ると思います。今、ご一緒している渡部篤郎さんも、やっぱりかっこいいです。

――型破りな人に憧れていた当時は、そういう人を実際にまねてみようと思ったりはしなかったんですか?

向井 まねはしなかったです。まねしても同じにはなれないし。「こういうしゃべり方があるんだ」とかそういう視点では見ますけど、それはそれ、これはこれという感じでした。でも、お芝居って何かのまねではあるんですよ。このしゃべり方だって誰かの影響で、言語も根本としてはまねでできていますし。口癖もまねだし、子供は親の言葉をまねします。だから、何をしてもまねにはなると思いますが、それをごちゃ混ぜにして自分なりに解釈したらオリジナリティーになるんでしょうね。

――そういうふうに「かっこいい」の価値観が変化したのは、どういうきっかけがあったのでしょう。

向井 ある程度年齢を重ねると、高いものがいいとかそういうことではなく、身に着けるものに生き方や信念が出ると思っていて。僕らの職業は、朝出かけて現場に着いたらすぐに衣装に着替えるので、(私服は)なんでもいいかもしれないけど、自分も人に見られていると考えると、変なものは着られないなと思います。

――見られるということを意識されるのですね。

向井 やっぱり見られる職業ですし、いろんなところで影響するのだろうなと。それは、やっぱり子供ができたことも大きいでしょうね。僕自身、小さいころの父の服を覚えてますし、大変だけどちゃんとしないとなと思います。

(聞き手=西森路代 撮影=森カズシゲ)

>>向井理さんのフォトギャラリーはこちら

プロフィール

向井理さん

向井理(むかい・おさむ)
1982年2月7日生まれ。神奈川県出身。2006年より俳優としての活動を始める。2010年に連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で大ブレーク。映画やドラマ、舞台などで活躍を続け、1月からはドラマ『10の秘密』(フジ系)で主演を務める。

作品情報

向井理「自分の見た目に自信があるわけでも、武器にしようとしてきたわけでもない」

正月時代劇『そろばん侍 風の市兵衛SP〜天空の鷹〜』
原作/辻堂魁 脚本/宮村優子 演出/清水一彦 出演/向井理、山本美月、斉藤由貴、寺尾聰ほか 放映/NHK総合・BS 4Kにて、2020年1月3日21:00〜22:30

2018年に連続ドラマとして放送された『そろばん侍 風の市兵衛』のスペシャルドラマ。剣の達人でありながら、そろばんの知識を生かして“渡り用人”として武家や商家の生計を立て直す唐木市兵衛(向井理)。新たに市兵衛が仕えるのは、息子の死の真相を探るため江戸に上った老侍(寺尾聰)だったが、徐々に2人は藩ぐるみの陰謀に巻き込まれていく――。

あわせて読みたい

ディーン・フジオカ「社会に対してコミットして行動している人に、かっこよさを感じます」

藤木直人、不惑を超えてからの自己評価「僕は“かっこいい”の対極にいる人間」

玉木宏「感じたことを素直に受け入れる人になりたい」 40歳目前で感じる理想の男性像

東出昌大「“イケメン”にくくられることは気にしない」

井浦新「若い頃は早く“シワ”の多い顔になりたかった」

[ &M公式SNSアカウント ]

TwitterInstagramFacebook

「&M(アンド・エム)」はオトナの好奇心を満たすwebマガジン。編集部がカッコいいと思う人のインタビューやモノにまつわるストーリーをお届けしています。

REACTION

LIKE
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら