目標は日産スタジアム 変わり続けるポジティブ人間・眉村ちあきの譲れない信念

弾き語りトラックメーカーアイドル 眉村ちあきの勢いが、すごい。
2018年6月にテレビ東京系の深夜番組「ゴッドタン」で即興ソングを披露し注目を集め、8月には新宿LOFTでワンマンライブを成功させた。翌19年にトイズファクトリーからメジャーデビュー。アルバムを発表し、6月には2500人を収容する新木場STUDIO COASTでのワンマンライブを大成功させた。20年1月5日からは初のレギュラーラジオ番組「眉村ちあきのオギャなじかん」(文化放送)も始まっている。バラエティー番組をきっかけに世に出るアーティストは多いが、活動の追い風にできる人は少ない。
「実は『ゴッドタン』以前に、新宿LOFTでワンマンライブをやることが決まってたんです。でもその時の私のライブの平均動員数は5人とか。でもLOFTをパンパンにしたかった。ちなみにLOFTのキャパは500人。100倍にしなきゃいけなかった。それでまずめちゃくちゃいっぱいライブをやることにしたんです。いろんなライブハウスのいろんなイベントに出まくってました。
そしたら『ゴッドタン』から出演依頼をいただいて。放送後からお客さんが増えて、最終的にはLOFTを満杯にすることができた。でも私としては予想通りというか。5人しかお客さんがいない段階でLOFTワンマンをやると決めた瞬間から、失敗するイメージは1ミリも持ってなかった」
屈託ない笑顔でそう語る。つまり当初から「ゴッドタン」は過程でしかなかった。大胆な目標設定と驚異的な行動力。眉村ちあきは現在23歳。一体どんな人物なのか。半生を振り返ってもらった。
BoAになりたいから受験はしない 高3の決意
「普通ですよ。元気でしたね。運動神経が良いです。中学からはバレーボールにめちゃくちゃ打ち込んでて、『春高(春の高校バレー 全日本バレーボール高等学校選手権大会)』に出るのが中学の頃の夢でした。高校のバレー部には入部しませんでしたが、高校時代もクラブチームに入ってバレーボールを続けてました」
「今の私のキャラクターができたのは、高校2年の時だと思います。型破りな子と同じクラスになったんです。ギャル、車好き、ガリ勉と私。そんな子たちとずっとふざけて遊んでました。休み時間はすり足で鬼ごっこしたり、授業中に教室を抜け出して、校庭の木に登ってみかん食べたり。クラスの中でも完全に浮いてましたね。宇宙人みたいな感じだったと思う。
みんな受験モードになったとき、私は歌手になりたいと思うようになってた。当時K-POPがはやってて、マッチョなダンサーを従えて踊るBoAさんがカッコよかった。私もああいうふうになりたいなって。でも友達には言いませんでしたね。『夢見てる』ってバカにされそうだから。そういうこともあって学校にはほとんど行かなくなりました」
まずやりたいことが先にある。そこに向けて努力するのは楽しい
自分が楽しめることだけをする。自分を理由なく縛る規則には従わない。どこまでも徹底している。そんなことを伝えると「頭の中はお花畑だから」と笑って返された。いつでも笑顔に見える彼女だが、地下アイドル時代には挫折を味わっている。
「3人組のアイドルグループのメンバーとして活動してたんだけど、その運営の人ととにかく価値観が合わなかった。ゴミをそこら辺に捨てちゃうような人。私は両親からそういうことは絶対するなとかなり厳しく教えられてきました。ご飯を残すな、とかね。私自身、『うんこ漏らした』とか変なエピソードはたくさん持ってるけど、人が最低限守るべき常識はある。
でもグループの頃はそういう感覚が一切通じなかった。他のメンバーが辞めたり、私が運営の人と大げんかしたりして、解散。そのあと、とある事務所の社長に声かけられたんです。事務所においでと言われたので行ってみたら、その人の家でお酒を飲まされて、まあまあ酔っ払ったんです。そしたら急に頭をなでてきて。あまりに嫌だったので、相手の家で思い切りゲロ吐いて帰ってきました(笑)。
でも実はその時の体験がトラウマになっていて。だから自分で自分の事務所(株式会社 会社じゃないもん)を作ったんです。株をファンに買ってもらって」
逆境時における眉村の行動力には驚かされる。5人しかファンがいないのに、500人キャパの会場を押さえたり、いきなり自分の会社を設立したり。
「“株式会社”というと大仰だけど、最初は必要最小限の規模だったし、そんなに大したことではないんですよ。株式会社という名のファンクラブみたいなもの。私はファンが本当に大事。グループを辞めたあと、私にはファンが1人もいなかった。ファンがいないとライブもつまらないんです。それで『どうしたらファンができるかな』と試行錯誤する中で、会場にいる人のために歌を作ってみようと思いつきました。そしたら、徐々にファンが増えてきたんです。
私は褒められると調子に乗るタイプだから、どんどん曲を作りました。もともとサービス精神旺盛な性格だから、つい『これはちょっとやり過ぎかな?』みたいな曲を作ってしまうんだけど、それでもファンはついてきてくれる。それが本当にうれしかった。私はファンと一緒に公園で遊んだり、映画を見に行ったりもするけど、それはいわゆるファンサービスみたいなことじゃなくて、友達として遊んでるんです。逆にファンサービスだと思ってたらできない。
株主総会と称して、私はファンと私の活動についてよく話し合うんですよ。そしたらファンは私が楽しんでる姿を見るのが楽しいと言ってくれたんです。だから私は自分が楽しめることだけをする。そのために努力してる。客が5人しかいない時にキャパ500人の会場でやろうと思ったのも、それが楽しそうだから。まずやりたいことが先にある。ライブに来てくれた人や、作品を聴いてくれる人を毎回驚かせたい。そのための努力は楽しい」
“楽しい”と感じる気持ちに理由なんかないんだ
ポジティブでパワフルな印象の眉村だが、落ち込むこともある。奔放な活動スタイルをSNSで批判された。
「Twitterでもたまに絡まれますよ。変なリプライが飛んでくるので、最近は告知だけにしか使っていません。嫌なことを言われれば私も普通に傷つくし、落ち込む。でもこの前タレントのMattさんが嫌なことを言ってきたアンチに対して『僕はしたいからしてる。嫌なら僕のことは見なくていいよ』ってツイートしてて。すごく勇気づけられました。
あとこの前、『うちの3姉妹』というアニメを見ていたら、コップに入った牛乳を箸で混ぜてた女の子がお母さんに注意されるシーンがあったんです。そこでその子はこう答えたんです。『え、なんでダメなの? だって私はしたいんだもん』。確かにお行儀は良くないんだけど(笑)。私はその一言に衝撃を受けたんですよ。『そうだ、したいことをすることに理由なんかないんだ』って。よく『なんでそんな変なことするの?』と聞かれることがあって、実はその度にうまく答えられなかったんです。でも今は『楽しそうだから』『やりたかったから』って胸を張って言えます」
それでは、SNSに限らず嫌なことがあった時、ネガティブな気持ちになった時、眉村はどのように解消しているのだろうか?
「私は結構根に持つタイプなんです。これまでの人生で私に嫌なことをしてきた人はすべて覚えてる。あと嫉妬心も強いし。同じようなスタイルのシンガー・ソングライターと対バンした時、お客さんを全部持って行かれたことがあって。単純に負けたと思った。悔しかった。だから次にその人と対バンする時、逆に私がその人のお客さんを全部ファンにしちゃおうと思った。
そういう時は半日〜1日くらい落ち込んだら、作曲するようにしています。ネガティブな気持ちを曲にしちゃうんです。『(音楽で)負けたあいつより良い音楽を作ろう!』ってモチベーションで超集中します。そうすると、朝が夜になってたり、夜が朝になってたり。でもその努力が形になると、不思議とストレスやモヤモヤはかなり解消されちゃうんですよね」
私の友達はファンだからファンが一番大事
眉村が“したいこと”、すなわち彼女の信念は、ファン(=友達)を驚かせて楽しませること。だが20年1月8日にリリースするアルバム『劇団オギャリズム』には、ファン以外の人に向けた曲も収録されるという。
「私はこれまでライブ会場に来てくれるコアファンのためだけに曲を作っていました。でも今回のアルバムを作る前、会社の人に『コアファンだけじゃなくて、もっと広い層にアピールできる曲を書いてみたら?』と提案されたんです。でも私にはいろいろやりたいことがあって、そのためには作品がもっと売れなくてはいけない。最初は全然ピンとこなかったけど挑戦することにしました。
でも、今回は作っても作ってもとにかく気に入った曲ができない。本当に大変でした。何回も大泣きして。最高に行き詰まった時は『曲が作れない→曲が作れない私に存在価値はない→私は1人』みたいな思考になってましたね。そういう時は、いつもファンに相談するんです。というか愚痴? 夜中にツイキャスで『曲作れない』『広い層って誰?』『無理』って、さんざん愚痴りました(笑)」
「ファンはいつも私を肯定してくれるけど、ちゃんと悪いところも指摘してくれる。言われた時は『うるさーい』とか言っちゃうけど、実はちゃんと反省しててその後の自分に生かすようにしてます。私にとってファンは友達。話すだけで気持ちも軽くなる。この前電車に乗ったら、険悪なムードになったことを悩んでいるAさんに対して、Bさんが『そいつ多分今ごろパフェとか食ってるよ。』って言ってあげてる広告を見かけたんです。私、世の中って意外とそんなもんだと思う。けど、1人だと意外とそれに気づけない。だから友達は本当に大事。私の友達はファンだからファンが一番大事。ファンのおかげで私自身の性格もかなり明るくなった。落ち込んでも、すぐ立ち直れるようになったし」
変わることに恐怖を抱く必要なんてない
難航した曲作りも「広い層に向けた曲とファンに向けた曲、2種類作ることで折り合いをつけた」という眉村。
「メジャーデビューする前、『変わっちゃったね』って言われるんじゃないか、と怖かった部分もありました。そしたら、サイン会に来てくれたファンの人がこんなことを言ってくれたんです。
『眉村さんはそもそも形がないですよ』って。
『だって眉村さんは昔からずっと変わり続けてるじゃないですか。最初から決まった形がないんです。だからメジャーデビューしても眉村さんは変わり続けるんだと思う。それが眉村さんなんじゃないかな?』。
その一言で私はつき物が落ちたような気持ちになりました。そうなんですよ、人間って変わり続ける生き物なんです。変わることに恐怖を抱く必要なんてない」
眉村はファンを驚かせるために陽気に変わり続ける。
彼女はどんな未来を見据えているのだろうか。
「今はアリーナクラスの会場でツアーがやれるようになりたい。アリーナだと火と水が特殊効果で使えるから。ファンにスプリンクラーをぶっ放したいし、二階席からターザンのように一階席に飛び込みたい。私は毎回ライブの演出にめちゃくちゃお金をかけます。実際この前のスタジオコーストのワンマンもとんとんくらいだった。
2000人規模の会場で凝った演出をすると、よっぽどチケット代を高くしない限り、ほとんど利益が出ないらしいんです。でも本当はもっと演出にお金をかけたい。だから会場の規模を大きくしたいんです。5000人、10,000人、15,000人って。まずはアリーナ。いずれは日産スタジム。70,000人も入るそうですよ。もう何をやってやろうか今から楽しみです。今回のアルバムはその野望を実現するための第一歩。これからもファンと一緒にがんばります!」
(文・宮崎敬太 写真・林紗記 動画・佐瀬醇)
プロフィール
眉村ちあき
1996年9月12日生まれ。東京都出身。
弾き語りトラックメイカーアイドル兼(株)会社じゃないもん代表取締役社長兼カリスマ。 趣味ゴミ拾い、マンガみたいな生活を送っている。目標はビルボード全米1位。2020年2月から全国9カ所でライブツアー「CHIAKI MAYUMURA 2nd Tour 劇団オギャリズム」を開催予定。
ワンマン情報
1/13(月) 東京・TSUTAYA O-EAST
「ちのてきこえん! 第704回 渋谷編 〜新春あけおめ☆アルバム『劇団オギャリズム』発売記念SP〜」
CHIAKI MAYUMURA 2nd Tour 劇団オギャリズム
2/7(fri)宮城・仙台 spaceZero
2/9(sun)北海道・札幌COLONY
2/11(tue)新潟・GOLDEN PIGS Yellow Stage
2/22(sat)静岡・磐田FMステージ
2/23(sun)愛知・名古屋SPADEBOX
2/24(mon)大阪・BananaHall
3/6(fri)福岡・DRUM Be-1
3/8(sun)広島・SECOND CRUTCH
3/22(sun)栃木・HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
…and more
リリース情報
『劇団オギャリズム』
CD
1.DEKI☆NAI
2.壁みてる
3.夏のラーメンワルツ
4.おばあちゃんがサイドスロー
5.タイムスリッパー
6.あたかもガガ
7.緑のハイヒール
8.チャーリー
9.スクワットブンブン
10.私についてこいよ
11.スーパードッグ・レオン
12.顔面ファラウェイ
13.ぬ
ボーナストラック
・アハハハハ
・チャーリー(レコーディング前日までこれになる予定だったVersion)
限定盤収録LIVE DVD
・2019.6.4 眉村ちあき3rdワンマンライブ~東京湾へダイビング!~