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食の宝島! きらめく小豆島でごちそうハンティング

香川県の小豆島は小さな島だが、グルメの密度は圧巻だ。世界的に高く評価されている小豆島ブランドのオリーブオイルを筆頭に、今では珍しくなった木桶(おけ)仕込みの天然醸造醤油(しょうゆ)、島の食材をたっぷり使う丘の上のイタリア料理店、かつての島料理をよみがえらせた古民家レストランまでを駆け巡ろう。
(文・写真 矢口あやは)

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高松港から小豆島までは高速艇で30分。港の対岸にある「かどや」からは、ごま油の香りがフワッ

オリーブ畑が「レモンのアレ」?

最初に目指す“ごちそう”の地は、オリーブ畑。目当ての農園に向かうバスを待っていると、「どこへお出かけ?」と地元のお母さん。「イズライフさんのオリーブ畑を見学に」と答えると「あ、知っとる。レモンのアレや!」。えっ、レモン? レモンのナニ?

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「レモンのアレ」の謎が解けぬまま来てしまったオリーブ農園「イズライフ」。見渡す限りの斜面にオリーブが植えられ、青い海が輝く様子はまさに「日本の地中海」


小豆島は、本格的なオリーブ栽培が始まってから約110年。なかでもこの「イズライフ」は、国内外のコンテストで数々の賞を受賞しているオリーブオイルショップ。自社栽培のオリーブ農園をもち、10〜11月の収穫期になると一緒にオリーブ摘みを体験しようとたくさんのオリーブ好きがやってくる。除草剤を使用せず、じゅうたんのようにやわらかく広がる緑が自慢の農園だ。

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2006年に大阪から移住してきたという「イズライフ」代表・堤祐也さん


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小豆島のオリーブは主に「ミッション」「ルッカ」「マンザニロ」「ネバディロ・ブランコ」の4種

「手摘みで収穫するので実へのダメージは少ないですが、やっぱり収穫した直後から酸化が始まりますからね。うちでは最長48時間以内、最短1〜2時間で絞るようにしています」と、イズライフ代表の堤祐也さん。

さすがは小豆島ブランド。このスピードが生む鮮度こそ、この島のオリーブオイルの大きな魅力だ。

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収穫期は1日に400キロ!ものオリーブを摘む。若く青い実は味のインパクトが強く、完熟した黒い実はマイルド。実のブレンド比率によって風味が変わる。メーカーの腕の見せどころだ

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搾油機。オリーブをゴロゴロと入れて、内部で実も種も細かく砕いてじっくりと練る。やがて、金色のオイルと絞りかすに分離して出てくる

オイルが全国へ旅立っていく一方で、オイルを含んだ絞りかすも旅をする。牛、豚、鶏の飼料になるのだ。最近では、車海老も食べている。

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とりたてのオリーブの実をかじると、完熟した実でさえ苦味が強い。でも、オイルを絞った後の残りカスはずいぶん甘くなるのだそうだ

ちなみに、ハマチだけはめちゃくちゃ苦いというオリーブの葉を食べさせられている。でもハマチ側はノープロブレム、もりもり食べて大きく育っているらしい。

こうして育った生き物たちは、オリーブ牛、オリーブ豚、オリーブ地鶏、オリーブ車海老、オリーブハマチとして全国へ。実の搾りかすを食べた生き物は、うまみ成分であるオレイン酸をたっぷりとって育ったがゆえに美味で有名なのだ。オリーブの葉は抗酸化作用のあるポリフェノールを豊富に含むため、ハマチの肉質がよくなるという。オリーブ牛のふんは栄養たっぷりの肥料としてオリーブ畑にまかれ、木を育てるという循環もある。

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工場に積まれた箱の中をのぞくと、緑がかった若いレモンを発見

「このレモンも小豆島産。無骨でゴツゴツした顔をしているのは完全無農薬だからです。私たちは普通のオリーブオイルのほかに、このグリーンレモンを組み合わせたオリーブオイルも作っていて、2014年にはロサンゼルスの国際品評会で最高賞をいただいたんですよ」(堤さん)

地元のお母さんが口にした「レモンのアレ」の謎が解けた。正体は、「グリーンレモンオリーブオイル」。まさか、オリーブオイル界の大御所・スペインやイタリアを制して世界一に輝いていたとは!

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国際エキストラバージンオリーブオイル品評会でフレーバーオイル部門の第1位に輝いた「グリーンレモンオリーブオイル」は、オイルのトロみを感じさせないほど爽やか。レモン、いい仕事をする

黄金のオリーブオイル、オリーブで育ったオリーブ牛にオリーブハマチ。気になるこれらの食材を実際に食べてみよう。

島のごちそうを食べ尽くすイタリアン

小豆島で食い倒れるなら必ず押さえたい店、それが「リストランテ・フリュウ」だ。草壁港からほど近い、内海湾を見はるかす高台にたたずむ。夜は星が美しい。

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島の言葉で「フリュウ(風流)」とは、祭礼の折に趣向を凝らし、神々や見る人々を喜ばせる”こころ”のこと。瀬戸内に残るおもてなしの精神を宿した料理が人気のイタリアンレストランだ

「小豆島は、オリーブはもちろん、レモンをはじめとするかんきつ類、魚や貝などの海の幸、新鮮な野菜にハーブなど、とにかくおいしい食材の豊かな島です。数は少ないけれど、お米も育てているんですよ」とオーナーシェフの渋谷信人さん。

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「フリュウ」で腕をふるうオーナーシェフの渋谷信人さん

島の豊かさに魅せられて、2011年に移住してきたという渋谷さん。島の新鮮なオリーブオイルでトマトソースのスパゲティを作ってみたら、「想像を超えてフレッシュな味に生まれ変わって感動しました。オリーブオイルは今でも、トマトソースに使うのが一番好き!」と笑う。 3種類が用意されたディナーコースのうち、5600円(税込み)のコースをいただくことにした。

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会いたかったよ、オリーブハマチ! ヨコワとともにカルパッチョ仕立てで登場。脂がしっかりのっているのに後味はサッパリとして、アーモンドスライスのコクとよく合う


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「サツマイモのポタージュ」。甘いスープに浮かんだカリカリ、ジュワジュワした生ハムの塩気がいい


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墨の量が多いハリイカを使った「ラグーソースのイカ墨のパスタ」。真っ黒いパスタを一口食べるごとに、海の香りと魚醤、オリーブオイル、ニンニクの濃厚なうまみが押し寄せる

「小豆島といえば、お醤油も見逃せない食材。ぜひ料理に取り入れたかったのですが、ヨーロッパには醤油がないので、うちでは自家製の魚醤を作って使っています。400年前から続く小豆島のお醤油屋さんの伝統を取り入れて、木桶で作っているんですよ」(渋谷さん)

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ここで真打ち登場! 「オリーブ牛のロースト」はしっかり締まった赤身のランプながら、低温でじっくり仕上げたという肉質がふんわり柔らか


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デザートは、オリーブの色と味わいを閉じ込めたオリーブケーキとミルクジェラート、柿のコンポート。この一皿の中でも、小豆島のオリーブオイルは誰とでも仲良くできる”イイ奴”だった

杉桶でかもす天然醸造の醤油

渋谷さんが「見逃せない」と話した小豆島の醤油を訪ねて、小豆島町の蔵でもっとも歴史がある「正金(しょうきん)醤油」を訪れた。地元はもちろん、全国に「お醤油は正金さんでしか買わない」というファンがいる人気の蔵だ。

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昔ながらの17の醤油蔵が軒を連ねる「醤(ひしお)の郷」。醤油の香ばしい香りがあたりに漂っている

小豆島の醤油醸造の起源は、約400年前までさかのぼる。大坂城を築城するための採石チームが小豆島へ来島した際、紀州湯浅の醤油を持ち込んだのが始まりとされている。もともと塩づくりが盛んだった小豆島は海運に恵まれたこともあって、みるみる日本有数の醤油の名産地へ。いま、香川県は都道府県別出荷量で全国5位(2018年)の醤油産地となっている。

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正金醤油の「西もろみ蔵」は、登録有形文化財と近代化産業遺産になっている


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西もろみ蔵には、大きな杉の木桶が並ぶ。正金醤油では現在、110の桶が稼働している

現代は技術革新が進み、大型のタンクの最新設備で温度を厳密にコントロールし、微生物を適切に働かせることによって、短時間で、大量に、安価な醤油が作れるようになった。「あれはあれでとてもおいしい。すごいものだと思います」と笑うのは、正金醤油の社長・藤井泰人さんだ。

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1920(大正9)年創業。藤井さんは約100年の歴史を持つ正金醤油の四代目にあたる

プラスチックの大型タンクと杉の木桶では作り方が違うことから、正確な比較はできないとしながらも、藤井さんは味の違いをこう分析する。

「天然醸造の醤油は、量産型はサラッとして淡いものが多いのに比べて、木桶仕込みは口に持ってきたときにブワーッとくるものがある。長期熟成の分、凝縮された多層的なうまみのボリュームを感じるんです」(藤井さん)

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蔵の2階では、たくさんの桶が口を開けていた! 桶の深さはなんと1.65m。原料は大豆と小麦、塩。全部で3000キロ、容積にして5400リットル

この日の桶の中では、酵母たちの仕事はほぼ完了していた。あとはできあがりを待つばかり。冬になると、新しい仕込みが始まる。国産の丸大豆を蒸し、国産小麦を炒って麹(こうじ)にして、四季の温度変化の中で醗酵熟成させてぎゅっと搾るという。

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「二段仕込 さしみしょうゆ 正金」。二段仕込みとは、できた醤油にさらに麹を仕込み、一年間醗酵熟成させたもの。濃厚でうまみが多く、塩辛さが少ないのが特徴だ

「ひと昔前は、華やかでポンと飛んでくるような香りが好まれましたが、今は穏やかな香りがトレンドに。その点、小豆島の醤油は昔から優しい味で鳴らしてきたんですよ。醤油だけが勝ちすぎない、バランスの良さで勝負したい。家庭でも使いやすい”縁の下の力持ち”な醤油をこれからも作り続けます」(藤井さん)

地元でも全国でも愛される“正金さん”の醤油を料理に使っている古民家レストランがあると聞いて向かった。

調味料まで島の食材 郷土の味よみがえらせた創作料理

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「道の駅 小豆島オリーブ公園」からほど近い「創作郷土料理 暦(こよみ)」

ここは、海辺にたたずむ「創作郷土料理 暦」。『二十四の瞳』で知られる小豆島の作家、壺井栄の文学に描かれた小豆島の食文化や郷土料理をもとに、現代風にアレンジした料理を出すレストランだ。

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店内は築70年の古民家らしく懐かしい風情。席からは青い海が見える

「暦」のお料理は、すべての素材が小豆島産。醤油、そうめん、オリーブ、佃煮(つくだに)から、魚や野菜、お米まで、豊かな島の味が楽しめる。この日はランチとして「ミニコース はしり」(2000円・税込)をいただいた。

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前菜は「太刀魚の背ごし」「揚げなんきんふし」「芋ねり」。ふし、とはそうめんの端っこのクルリンとした部分のこと

サツマイモに小麦を混ぜて炊いた黄色いお団子「芋ねり」は、甘くてむっちりとした玉をかむと、油のうまみがジュワッ。

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小豆島産のオリーブオイルと塩を使った、もっちり・ふわふわという相反する食感がみごとに同居する「枝豆胡麻(ごま)豆腐」


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その味はフグにも匹敵するといわれる高級魚・コチをカラッと揚げた「コチ香味揚げ」


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左は、あらかじめ炊いた具を白いご飯に混ぜる小豆島の郷土料理「かきまぜ」。右は、小豆島名物のそうめん。どちらもおいしいが、四角い小皿に思わぬ伏兵がいた


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四角い小皿の左は芋づるの佃煮。注目すべきは右。地味な姿の「ままかりのぬか漬け」は衝撃の味だった!

最後に思わぬ刺客が登場した。とんでもなく地味な風体のくせに、これまでの料理を全部かすませたのが「ままかりのぬか漬け」だ。茶碗一杯のご飯があっても半分も食べられないほどの塩気。でも、う、うまい。チビチビとやるのがたまらない。これがあれば日本酒も無限にいける。港でも空港でもこのぬか漬けを探し回ったが、どこにもなかった。

名産品はもちろん、思いがけない“ここだけ”の味にも出会えた小豆島。小さいけれどパンパンにはち切れそうな豊かな島で食い倒れたい。

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リストランテ・フリュウ

正金醤油

創作郷土料理 暦

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