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再び「12万円で世界を歩く」ロシア・サハリン編3

再び「12万円で世界を歩く」の番外編。12万円の総予算で海外に1週間暮らす、ロシア・サハリン編の3回目です。ユジノサハリンスクでアパートを借りた下川裕治さんは、前回、ホルムスクを散策、ボルシチづくりにもチャレンジしました。今回は、日本領時代、大泊(おおどまり)と呼ばれた港町コルサコフへ。Scene02の下川さんの顔写真に驚かれる方も。寒いとこうなることもあるようです。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。
現在、約30年前に発刊された『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社)と同じルートを再び辿(たど)る旅を紹介しています。ロシア・サハリン編はその番外編。「12万円の総予算で海外に1週間暮らす」をテーマにしています。

(写真:阿部稔哉)

ユジノサハリンスクからコルサコフへ

ユジノサハリンスクからコルサコフへ

総費用12万円で海外に暮らす──。その滞在地に選んだサハリンのユジノサハリンスク。滞在も4日目になった。借りたアパートのキッチンでつくったボルシチは思った以上の味だった。街の地理にもだいぶ明るくなってきた。ホルムスクを訪ねた翌日、寒さにもめげずにコルサコフに行ってみることにした。かつては大泊と呼ばれた港のある街だ。昨年は運航されなかったが、北海道の稚内を出港したフェリーが着く港でもある。以前はユジノサハリンスクとコルサコフを結ぶ列車も走っていたが、いまは運休。駅前のターミナルからマルシュルートカという中型乗り合いバスに乗った。

今回の旅のデータ

戦前、北海道の稚内と、当時大泊といわれたコルサコフの間は稚泊(ちはく)航路と呼ばれていた。北海道とサハリンの鉄道を結ぶ鉄道連絡船という扱いだった。戦後は長らくフェリーが運航することはなかったが、1995年に再開。はじめはロシアの船が運航したが、1999年からはいまはハートランドフェリーと呼ばれる東日本海フェリーの運営になった。しかし運航開始当初から、利用客は少なく、ハートランドフェリーも撤退。その後、2016年からは、第三セクターの北海道サハリン航路とサハリンのサハリン海洋汽船の共同運航という形で運航がはじまった。所要時間は4時間から4時間半。夏季に週3便というスケジュールだった。しかし昨年(2019年)は船の調達ができずに運休。今年の再開をめざして、北海道とサハリンの調整が続いている。

長編動画

ユジノサハリンスクからコルサコフまでの車窓風景を。この道はサハリンの幹線。ロシア風の建物が続く道だ。

短編動画

コルサコフの歩道に魚や毛糸の帽子、靴下などを売る店が並ぶ。魚は冷凍状態で売られている。もちろん解けない。

ユジノサハリンスクからコルサコフへ「旅のフォト物語」

Scene01

気合を入れてアパートを出る
背伸びをしたくなるような快晴だった。……寒い。その日、朝の気温はマイナス16度だった。気合を入れてアパートを出る。ユジノサハリンスクも4日目。寒さ対応も身に着いてくる。普通の手袋では指先がすぐ痛くなる。素手をポケットに突っ込んだ方が楽なのだ。街の人も半分以上がポケット派。滑って転ぶと危ないが。

Scene02

触ると……血
マルシュルートカのターミナルまでの近道も覚えた。寒いから、つい、早足になってしまう。コルサコフ行きのマルシュルートカの運転手が僕の鼻を指さした。触ると……血。寒さのなかを15分ほど歩いている間に、鼻の入り口が凍り、それがはがれた拍子に、細い血管が切れたらしい。マイナス16度の鼻対策にはマスクが必要かも。

Scene03

斜面にカラフルなロシア風住宅が
マルシュルートカはユジノサハリンスク郊外の工場地帯を走り、やがてサハリンらしい針葉樹の林が続く道を進む。コルサコフに近づくと、斜面にカラフルなロシア風住宅が。モスクワ郊外を思い出した。この道沿いの建物は完全にロシア風。日本時代の面影はきれいに消えていた。

Scene04

コルサコフに着いた
1時間ほどでコルサコフに着いた。マルシュルートカの運賃は135ルーブル、約231円だった。太陽の光は明るいのだが、コルサコフは風があり、ユジノサハリンスク以上に寒さがこたえる。歩道も凍りついていて、大股で歩くことができない。少し体を温めたかった。しかしカフェや食堂がみつからない。

Scene05

店探しに苦労
しばらく街を歩いて……見つけました。ペンギンじゃありません。英語の看板。サハリンの店はロシア語ばかり。寒いのでドアは2重。なかも見えないので、店探しに苦労する。この店に入りコーヒーで体を温めていると、ウォッカを2本手にした中年の男たち5人が店内に。常連らしく、奥の個室へ。寒い日は暖かいバーで昼から酒盛りということらしい。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」ロシア・サハリン編3
ユジノサハリンスクからのマルシュルートカが着いた周辺が街の中心? 歩道にはさまざまな露店が。凍った魚、毛糸の帽子や靴の中敷き……。街の人は凍った歩道をすたすた歩き、買い物にやってくる。僕らとは慣れと靴が違います。歩き方の違いは、短編動画を見てください。

Scene07

毛糸の帽子を買う
天気はいいのだが、寒い。海からの風がつらい。手先や足先、そして耳はすぐに痛くなる。これまで帽子なしで頑張っていたが、耐えきれずに、露天で手がのびた。毛糸の帽子は300ルーブル、約513円。寒いエリアに行くとき、いつも帽子を忘れてしまう。自宅には海外で買った毛糸の帽子が5個もある。

Scene08

望郷の丘にある碑
坂道をのぼり、望郷の丘にある碑へ。戦前、朝鮮半島の人々は徴用などで、サハリンに渡った。サハリンの北緯50度以南は日本領だった。そして1945年の終戦。その後、朝鮮戦争が勃発し、朝鮮は南北に分断される。韓国とソ連は国交を断ったため、韓国系朝鮮人の引き揚げが暗礁に。そのなかでこの碑が建てられた。

Scene09

コルサコフの港が一望できる
碑のある丘の上からの眺めはいい。コルサコフの港が一望できる。……などといっていられるのは最初の1分だった。寒い。海からの風が吹きあげ、体感温度はマイナス20度? 丘の上には風を遮る建物もない。せっかく買った毛糸の帽子もこの寒さでは……。早々に引きあげました。

Scene10

偽セブン-イレブン?
コルサコフの中心に戻る途中、セブン-イレブンを発見。しかしなにかが違う。偽セブン-イレブン? 帰国後、日本のセブン-イレブンの前でこの写真と見比べると、3色の帯の太さが違う。そして上に書いてある文字は、「ミニストップ」。店主はこうすれば大丈夫と考えたのでしょうか?

Scene11

ロシアに多いカフェテリア形式の店
寒い。午後2時。腹も減っている。なんとか店を探さないと……。看板が読めないので、グーグルマップの食堂マークを頼りに雪道をとぼとぼ歩く。ありました。店内に入ると、暖かい空気にとろけそうになる。縮こまった筋肉が弛緩(しかん)していくのがわかる。ロシアに多いカフェテリア形式の店でした。

Scene12

ビーフストロガノフ風の煮込み料理
ほっとしたのか、つい頼みすぎてしまいました。ビーフストロガノフ風の煮込み料理にサラダ、コーヒー。パンは無料でついてくる。これで325ルーブル、約556円。ご飯はバターライス。カロリーはかなり高い。周りの人たちも、高カロリー料理。この寒さを乗り切るには……ということ?

Scene13

コルサコフの港に近い魚屋
コルサコフの港に近い魚屋。入ってみると、箱のなかに無造作に入れられた浜ゆで花咲ガニをみつけた。値段を聞いてみると、ひとつをはかりに載せ、875ルーブル。日本円で約1496円。稚内で買うと6000円ほどのカニである。夕食は決まった。浜ゆでだから調理もいらない。ビニール袋に入れてもらい、ユジノサハリンスクのアパートに急ぐ。

Scene14

家族には見せられない写真
アパートに戻り、花咲ガニをど~んとテーブルに。とげのような突起がついた殻をはずしていく。出てきたカニ肉、でかいです。それをがぶり……。サハリンで花咲ガニ。日本で高い花咲ガニを食べている人には申し訳ない味が口のなかに広がる。家族には見せられない写真です。

Scene15

黙々と花咲ガニを食べる
黙々と花咲ガニを食べる時間がすぎていく。足をたいらげ、続いて甲羅に挑んでいく。大きなサイズなので、腹もいっぱいになっていく。この花咲ガニを食べにサハリンにやってきてもいいかも……などと考えてみる。総予算12万円のサハリン暮らしは、なかなか豊かな食生活。いや、ぜいたくか。

【次号予告】次回はユジノサハリンスクの暮らしを。
※取材期間:2019年11月29日
※価格等はすべて取材時のものです。

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら
■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら
■ 再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

BOOK

再び「12万円で世界を歩く」ロシア・サハリン編3
12万円で世界を歩くリターンズ
[タイ・北極圏・長江・サハリン編] (朝日文庫)
リターンズ第二弾では、タイと隣国の国境をめぐり、北極圏を北上し、長江をさかのぼる旅へ、予算12万円で約30年前に旅したルートをたどる。さらに「12万円でサハリンに暮らす」ことにも挑戦。旅は、世界はどう変わったか?朝日文庫
3月6日発売
価格未定

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